AppleがSamsungに勝訴したのを受けて思うこと

SamsungがiPhone, iPadのデザインを真似たとしてAppleがSamsungを訴えていたアメリカの裁判は、2012年8月24日に、Appleの勝訴でひとまず幕を閉じました。

その内容をカバーした記事はネットにあふれています。特に良いと思ったのはAllThingsDの特集でしたので、詳細を知りたい方は英語ですがご覧ください。

今回の裁判は一般人による陪審員裁判でしたので、特に興味深いのは判決の理由です。
陪審員の一人とのインタビューが紹介されていますので、ご覧ください。

陪審員の人が判決の中で一番重視した証拠を聞かれて、こう答えています;

The e-mails that went back and forth from Samsung execs about the Apple features that they should incorporate into their devices was pretty damning to me. And also, on the last day, [Apple] showed the pictures of the phones that Samsung made before the iPhone came out and ones that they made after the iPhone came out. Some of the Samsung executives they presented on video [testimony] from Korea — I thought they were dodging the questions. They didn’t answer one of them. They didn’t help their cause.

彼が言及しているのは以下の証拠と思われます。

  1. 「iPhoneとGalaxyを比較するとGalaxyのここがいけていない。よってiPhoneに似せるべし」というサムスンの内部資料。
  2. グーグルとのミーティングでグーグル側が「アップルとソックリすぎだからちょっと変えた方がいいんじゃないか?」と言ったというメール。

この判決に対する印象は様々ですが、私の印象は「相当に常識的な判断が下された」というものです。

この判決でAppleの力が強大になり、競合を閉め出し、結果としてイノベーションが停滞するのではないかという議論があります。特にネット関連の評論をしている記者やブロガーの多くがこの主張をしています。私は決してそうは思いませんが、彼らの言っていることは一理があることは否定はしません。

ただ陪審員が下した結論はもっと単純明快で

他の会社が何年もかけて苦労して開発した画期的な技術を、悪意を持って意図的に真似てはいけませんよ!

ということだと感じました。

良い判決だったと思います。

さて今後どうなるか。以下ではこっちの方を大胆に予想してみたいと思います。

そもそもどうしてここまで白熱したか

そもそもスマートフォン関連の訴訟がここまで白熱したのはなぜか?ここから考える必要があります。

2007年にiPhoneが発売されましたが、当初はこれに類似した携帯電話は全くありませんでした。あったのはRIMのBlackberryおよびそれに良く似たスマートフォンでした。日本でも発売当初は「iPhoneは売れない」という意見が多くありました。iPhoneの対抗馬となっているGoogleのAndroidも一番最初の2008年の製品(HTC Dream)はBlackberry様の製品でした。

そこから急にスマートフォン市場が爆発しました。

金融危機の影響で世界経済が冷え込み、そして薄型テレビ市場も大変なことになってしまっている中にあって、スマートフォン市場だけが圧倒的な輝きを持っています。

単純な話、電子メーカーが社運をかけてスマートフォンに注力したのはごく当たり前のことです。

スマートフォン市場の未来は決して明るくない

その一方で、今回の訴訟の結論が出る前からスマートフォン市場には大変な暗雲が立ちこめています。AppleとSamsungしか儲からなくなってしまったのです。スマートフォン市場はとてもじゃないけど健全な状況にありません。

今回の訴訟でSamsungの利益に影響が出るようになったらどうなるでしょうか?Appleしか儲からない市場になります。

その時の各電子メーカーの経営戦略は?ちょっと予想がつきません。しかし間違いないのは、スマートフォン開発に盲目的に注力することはできなるなります。

ワラにすがる

2013年からはワラにすがる電子メーカーが多数出てくるでしょう。ワラはWindows Phoneのことです。これだけは予想できます。

Samsungは新しいデザインに切り替えられるか

Samsungは確かに強い会社です。しかし1980年代の日本のメーカーに比べて優位な位置にあるとは思いません。当時の日本メーカーと比べて開発力があるとは思いませんし、製品開発力があるとは思いません。それは今回の訴訟の対するアメリカ国民の反応でわかりません。1980年代のアメリカでは日本を脅威と考えていました。アメリカが日本に抜かれるのではないかという恐れがありました。そのような恐れがSamsungや韓国に対してはありません。

Samsungは基本的には多機能・高品質の製品を低価格で供給することで成長してきた会社です。日本メーカーのビジネスモデルと同じです。しかし日本からIntelは出てこなかったし、Microsoftも出てこなかったし、Appleはもちろんのこと、Adobe程度の会社すら出現しませんでした。したがってSamsungも日本メーカーと同様の軌跡をたどると考えるのが自然です。

今回の敗訴を受けて、SamsungはAppleの特許を侵害しない独自のデザインを試みるでしょう。また新しい市場の開発を試みるでしょう。しかしその結果はどうなるか。よほどのことながない限り、日本メーカーと同じ過剰品質の路線をたどることになるでしょう。

日本の時と違い、Samsungの後ろには中国メーカーが多数控えています。今後高品質の製品を低価格で供給するビジネスモデルで成功する中国メーカーは多数出てきます。韓国が日本を追い上げたのよりも遙かに速いスピードで中国は韓国を追い上げています。そこから逃げるためにSamsungはスマートフォン市場でハイエンド戦略がとりたかったのですが、それが今回の訴訟でブロックされた形になります。Samsungの日本メーカー化が加速されると考えて良いと思います。

新しいデザインには切り替えるでしょうが、それはガラパゴス的なものであったり、過剰品質的なものだったりするでしょう。出発のそもそものビジネスモデルが共通しているので、結果的にも似た状況になると私は判断しています。

まとめ

まだバラバラな考えですが、1980年代の日本メーカーが受けたような打撃をSamsungが今回受けたように思っています。結果も似たようにことになると思います。

おまけ

以下はSamsung SIIIのメーキングビデオです。デザインコンセプトのことばかりを話しています。自動車のCMみたいです。

スマートフォンの革新的なデザインのほとんどがソフトウェアなのに、ハードウェアのデザインを強調しなければならない悲哀を感じます。

私が上で述べたガラパゴス的な過剰品質の好例です。