エコノミストに許される議論の甘さ

経済学って本当に緩い学問だとつくづく感じます。

ものすごく甘い議論でも平気で許されてしまうし、少しも悪びれた様子がありません。

あくまでも一例ですが、第一生命経済研究所の主席エコノミスト、永濱利廣氏の『「異次元の金融緩和」で景気と生活はどうなる』という記事を見かけましたので、それを例に見ていきます。

「株価と企業の売上高が密接に連動しており、株価が上がってから概ね1四半期遅れて企業の売上高が伸びる傾向を見て取ることができる」

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永濱氏は「株価が上がってから概ね1四半期遅れて企業の売上高が伸びる傾向を見て取ることができる」としています。彼はいったいグラフのどこを見ているのでしょうか?

「景気が回復し企業の売上が増えてから所定内給与が増えるまでには3年かかった」

永濱氏は他にも謎の結論を出していますが、この最後のグラフと考察はもう希望的観測を越え、宗教の領域。心の目で何かを見ようとしている状態です。

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たぶん2005年のはじめにちょろっと給料が上がった時期を見て「企業の売上が増えてから所定内給与が増えるまでには3年かかった」といっているのでしょう。このグラフを見てもその因果関係は全く見えません。なおかつその1回の現象だけを根拠に、今回も3年かかるというのは乱暴な議論を通り越して、もはや根拠がない領域。

まぁ永濱氏が悪いというよりは、このレベルの子供だましが許されてしまうのが経済メディアの現状で、こいつらに経済を任せて良いのかと思うわけです。

もちろん経済学者がみんなこんな子供だましの議論をしているわけではなく、ちゃんと議論している人もいます。ちゃんとした相関を見て議論している人たちです。

永濱氏は株価が上がれば企業収益が改善し、企業収益改善から雇用改善・給料改善が起こるとしています。ただしいずれのステップも相関はかなり怪しいのですが。

それに対してSteve Keen氏はちゃんとした相関を元に考察しています

特に近年では株価と因果関係があるのはGDPではなく、企業業績でもなく、借金のレベルです。株価はレバレッジがどれだけ使われているかと一番相関があります。

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一つ重要なポイントがあります。Steve Keen氏のようにまっとうな分析をする人は半世紀さかのぼってデータを集め、分析をします。そうやってデータ点を増やします。それに対して永濱氏をはじめとした多くのエコノミストはたかだか数十年のデータで議論をします。永濱氏はこの点特にひどく、ここ10年のデータでごまかそうとしています。

エコノミストの多くは基本ができていないように感じます。