市場の力関係とイノベーション、そして顧客の利益

「Appleは単に最高の製品を作りたいだけだ」と昨日のブログに書きました。

今日、Elia Freedman氏が書いた“Fighting The Wrong Fight”という関連する記事を見つけました。

Eliaが言っているのはこうです。

スマートフォンではAppleとGoogleの戦いが重要ではないんだと。重要なのは携帯メーカーとキャリアの間の戦いだと。そして携帯業界のイノベーションを阻害し、より優れたユーザエクスペリアンスを妨害していたのはキャリアだったとしています。

キャリアが携帯電話を販売し、通信サービスを提供します。どのようなソフトウェアがインストールされるかを決める権限を持ち、何ができて何ができないかを決定してきました。日本においてもそして米国においても、キャリアに力があったのです。それがiPhoneの場合は、力関係がひっくり返っています。Appleが決定権を持っているのです。この力関係をひっくり返してこそ、Apple流のイノベーションを携帯電話に持ち込むことができたとも言えます。キャリアにはそれだけのイノベーションをする能力もインセンティブもありませんから。

ただ残念なことにGoogleのAndroidはオープンであることを逆手に取られて、キャリアに利用されてしまっているとこの記事では解説しています。

さてバイオの買物.comとの絡みで僕がいつも考えているのは、ライフサイエンス研究用製品の市場がイノベーションを生み、そして顧客に利益をもたらす構造になっているかどうかということです。もしや従来の携帯電話市場と同じように、イノベーションを生み出さないところに力関係が傾いていて、そして顧客の利益が損なわれてしまっているのではないかと。研究の発展を促すためには、既存の市場構造を変革させ、そして顧客に力がシフトするようなものにして行かなければならないのではないか。常にそう思ってきました。

バイオの買物.comはどのようなプラスの効果を生み出しうるか。僕の考えをちょっとだけ紹介します。

  1. ブランド力に関わらず、顧客のために努力している会社の製品が売れる : バイオの製品は猛烈な数がありますので、研究者はどうしてもブランドでフィルターをかけて、探すのを楽にしてしまいます。すべてのメーカーのカタログを探すよりは、馴染みのブランドに絞って探した方がずっと楽です。でも各メーカーの製品を簡単に比較できるのなら、ブランド力のフィルターはあまり必要なくなってきます。ブランド力に関わらず、適正な価格であり、十分サポートを提供し、品質の良いメーカーの製品が売れやすくなります。
  2. 営業担当者等がより充実した製品知識を入手しやすくなる : この業界の営業担当者は製品知識があまりありません。もともと製品が多いのもありますが、各メーカーが無節操に製品分野を拡大した結果、営業担当者としてはますます難しくなってきました。バイオの買物.comがそういう人の勉強のツールになれば、より顧客のニーズにあった提案ができるようになるのではと期待しています。
  3. イノベーティブな製品が売れやすくなる : メーカーが新しくて革新的な製品を開発しても、それをマーケティングして普及させるのは簡単ではありません。次世代シーケンサーほどに革新的であればNatureとかが取り上げてくれますが、例えばClontechのIn-Fusion PCRクロニングキットとか、タンパク質レベルで発現を調節できるProteoTuner Systemとかはなかなか知名度が上がりません。バイオの買物.comによってこういう製品が注目されやすくなるのではないかと期待しています。

メーカーのイノベーションが促進され、サポート力が注目され、企業努力による価格抑制が顧客の目に留まりやすい市場環境。そしてブランド力や代理店との力関係に頼った顧客の囲い込み等が行いにくく、顧客価値の創出の結果として売上げが伸びて行く市場環境。現状が果たしてそうなっているかを常に考えながら、より良い方向に持って行くために貢献できたら良いなと思っています。