とんでもない減税(大きな歳出削減は将来の日本を犠牲にする)

The Economistのウェブサイトに、米国の減税議論がいかにとんでもなくて、健全な国家に必須な予算がいかに削られてしまっているかをを述べた“Outrageous cuts”という記事がありました。ノーベル賞経済学者で、共和党政策に批判的で知られるPaul Krugman氏のブログに呼応したものです。

そこで同じ論法を日本に当てはめてみました。

まず税金がどれぐらい無駄になっているかの判断材料として、記事に習って税収のGDP比を計算してみました。データソースは1(財務省), 2(世界経済のネタ帳), 3(財務省)

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Economistの記事では、米国の税支出/GDPが1963年も2008年も3.6%であり、長期的にはほとんど変化していないことを紹介し、政府というのはそれぐらいお金がかかるものだとしています。つまり支出を大幅に減らすことによって財政を健全化できるという議論は気違いじみた考えだと断言しています。

上のグラフで日本の場合を見ると、税支出/GDPは16%代でやはり安定しています。社会福祉が入っていることなど、比率の絶対値そのものは米国と比較できませんが、ここ25年間、日本経済が非常に元気だったころと比較しても大きな変化がないことがわかります。

しかも内訳(データソース財務省)を見ますと、大きく伸びているのは社会保障関係費と国債費だけです。教育および科学技術関連予算、公共事業関係費は大幅に落ち込んでいます。(ちなみにこの財務省のグラフは物価で補正していないため、財政支出の増加をあまりにも誇張してしまって良くないと思います。)

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Economist誌と同じ視点からこの2つのデータを議論するとこういえると思います。

  1. 日本で大きく国家予算は減らす余地はなく、国家支出を減らすことによる財政健全化は気違いじみた発想です。
  2. 高齢化により社会保障関係費が、合わせて長年の財政赤字により国債費は大きく膨らんでいます。それを補うように教育費と公共事業関係費が削減され、かろうじて国家予算の拡大が押さえられてきました。しかしそれは将来の(今の?)日本の生産性を奪う危険な予算削減です。
  3. 社会保障関係費と国債費は増加の一途をたどることはすでに分かっています。ドラッカー風に言えば、これはすでに起こってしまった未来なのです。もし国家予算を減らそうと思うと、極端に教育費と公共事業費を減らすしかありません。

今後の日本が選択するべき道はますます難しいです。政府の無駄使いをなくして、減税し、民間に活力を与えれば良いという発想が人気を集めています。合理的な判断というよりは、日本をこんなにダメにした役人や政治家に対する怒りの声に思えます。しかしデータを見る限り、これが現実的な選択肢には到底見えません。仮にその道を突き進めば、教育費や公共事業費をよりいっそう削減するしかなく、結果として将来の日本の競争力の原資を食いつぶすことになります。

それでは日本は何をしなければならないのか。私の考えを簡単に紹介します。

  • 企業や国民(民間)が蓄えている資産(日本は対外的に200兆円程度の対外純資産を持つ債権国)が日本国内に投資されるよう、国内の成長特区を設けます。日本のお金が日本に戻ってくることが何よりも大切です。これには積極的な公共投資を行います。
  • 私の考えでは、首都機能の思い切った分散によって各地方で新しい都市を造っていくことが成長特区を作ることに当たると思っています。例えば国家公務員の大半を東京ではなく、人が少ない地方に転勤させて、都市を造っていきます。来た人は家、車、大型家電を買ってくれるでしょう。そしてその都市の成長に期待して、民間が大きな投資をするようにすれば良いと思います。
  • 税金を高くします。一般会計支出の内訳を見る限り、日本の最大の問題はずっと財政赤字を続けていたために国債費が財政を圧迫していること、現在の予算規模では高齢化問題に対応できなっていることですので、これをなんとかしないと悪循環が断てません。でもその前提として政治不信をなんとかする必要があります。政治不信が誰の責任なのかは別の問題ですが。

何で一時期の遷都論が下火になって、まだ盛り返して来ないのか、未だに不思議に思っているのですが。