アクションへの執着:サッカーのゴールキーパー

じっとしている方がましなことが多い。エリートサッカーゴールキーパーのアクションへの執着。
@timoreillyのTweetから
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Journal of Economic Psycologyに以下の記事が出版される予定です。

Action bias among elite soccer goalkeepers: The case of penalty kicks

Abstract

In soccer penalty kicks, goalkeepers choose their action before they can clearly observe the kick direction. An analysis of 286 penalty kicks in top leagues and championships worldwide shows that given the probability distribution of kick direction, the optimal strategy for goalkeepers is to stay in the goal’s center. Goalkeepers, however, almost always jump right or left. We propose the following explanation for this behavior: because the norm is to jump, norm theory (Kahneman and Miller, 1986) implies that a goal scored yields worse feelings for the goalkeeper following inaction (staying in the center) than following action (jumping), leading to a bias for action.

サッカーのペナルティーキックでは、キックの方向を明確に見極められる前にゴールキーパーはアクションを決定します。トップリーグやチャンピオンシップでの286のペナルティーキックの方向の確率分布を調べた結果、ゴールキーパーにとってのベストの戦略はゴールの真ん中にいることです。しかしほとんどの場合、ゴールキーパーは右か左にジャンプします。

我々はこの行動の根拠を以下のように分析しています。

どちらかの方向にジャンプすることが一般的ですので、norm theory (Kahneman and Miller, 1986)によると、真ん中にいてアクションを取らなかった場合の方が、どちらかにジャンプした場合よりも、ゴールを取られたときに強く後悔します。この結果、アクションに執着します。

norm theoryは、「より一般的と考えられている行動をとったときの方が後悔が少ない」というものです。アクションを取ることが一般的と考えられている場合は、それが真に有効ではなかったとしても、アクションを取った方が後悔が少なくなります。逆にじっとしていることが一般的であれば、じっとしていた方が後悔が少なくなります。

エリートのゴールキーパーのように、非常に経験と専門性が高く、成功に対する報酬が高い場合であっても、このnorm theoryの影響を受けてしまうというのがこの論文の主旨のようです。

The action/omission bias has received attention in psychology, but hardly any in economics (one exception is Patt and Zeckhauser, 2000). We think, however, that it has very important implications for economics and management. For example, the action/omission bias might affect the decision of investors whether to change their portfolio (action) or not (inaction). It can affect the choice of managers whether to leave their company’s strategy or investments unchanged (inaction), or to change them (action). The bias may also have implications for the decision of workers whether to stay in their job (inaction) or look for a better job (action), and one’s decision whether to re-locate to another city or not. In the macro-economic level, the action/omission bias may also affect decisions made by governments and central banks whether to change various policy variables (interest rates, tax rates, various types of expenditures, etc.), or leave them
unchanged.

アクション/オミッションのバイアスは心理学では注目されていますが、経済学ではほとんど注目されていません(例外としてPatt and Zeckhauser, 2000)。しかし、我々はこれが経済学および経営学に大きな示唆を与えると考えています。例えば、アクション/オミッションのバイアスは、ポートフォリオを変える(アクション)か変えないか(オミッション)と考えている投資家の判断に影響を与えます。会社の戦略や投資をそのままにするか(オミッション)、変えるか(アクション)を考えている経営者の選択に影響を与えます。従業員に取っては、会社にそのまま残るか(オミッション)、より良い仕事を探すか(アクション)にも影響するかもしれません。また別の都市に住み替えるかの判断にも影響するかもしれません。マクロ経済学のレベルでは、政府や中央銀行が金利、税金、公共支出を変えるか、それともそのままにするかにも、このアクション/オミッションのバイアスは影響を与えるかもしれません。