アップグレードする毎に速くなるOS

Mac OS X Public Betaが発売されたとき、そしてBetaから抜け出してMac OS X 10.0 (Cheetah)が発売されたとき、あまりにも処理速度が遅くてがっかりしてしまったことを先日紹介しました。

今ではOSのアップグレードにより、処理速度が向上するケースは珍しくなくなりました。例えばiPhone 3Gで特に顕著だったのですが、iOS 4からiOS 4.1にアップグレードすることによって、ほとんど実用に堪えないほどに遅かったのが、ほぼ問題の無いレベル(iOS 3レベル)に回復しました。

またWindowsの世界では、重すぎて古いパソコンやNetbookでは使いものにならないと言われていたVistaでしたが、新しいOSのWindows 7にするとパフォーマンスが大幅に改善するそうです。

しかしMac OS X Public Betaが発売された2000年当時はそうではありませんでした。OSのアップグレードをしたら処理速度が遅くなるのはほぼ「常識」でした。処理速度の低下がどれぐらい顕著か、そして新しい機能がどれぐらい魅力的かを天秤にかけながら、最新の高速なパソコンに買い替えるべきかどうかをアップグレードのたびに考えたものです。

NewImage.jpgMacの世界ではSystem 6の時代はOSがフロッピーディスク一枚に納まり、そして何秒かかったかは計ったことはありませんが間違いなく1分以内に再起動してくれました。MacはしょっちゅうOSが落ちたので、再起動は一日に何回もやるのが普通でした。ですから再起動が速いのはとても便利でした。

System 7になったらOSはハードディスクに載せる必要が出てきました。OSが巨大化したのです。再起動も遅くなりましたが、各種の処理も非常に遅くなりました。ただ疑似マルチタスク等、どうしても必要な機能がたくさん追加されていました。そしてMac OS 7.5, 8, 8.5, 8.6, 9と進化していきましたが、一貫してOSは重くなっていきました。

NewImage.jpgWindowsの世界ではまともなGUIベースのOSが出たのはWindows 95が最初でした。後を次いだWindows 98はまだそれほど問題がありませんでしたが、マルチメディア機能等を拡充したWindows Meは悲惨でした。OSそのものが重くて処理が遅いのはもちろんのこと、RAMと高速CPUを搭載したパソコンに買い替えても状況は改善できない決定的な欠点を持っていました。OSそのものが決定的な限界を抱えていて、ハードをどんなに良くしてもダメだったのです。そしてこれらの問題を解消したWindows 2000とWindows XPは真のマルチタスクができる等、大幅に改善されたOSではありましたが、Windows 95, 98に比べて処理速度は重く、よりパワーのあるパソコンが必要でした。

このように、OSをアップグレードしていくに従って処理速度が落ちるのは常識でした。だからこそMac OS X Public BetaやMac OS X 10.0があまりにもパフォーマンスが悪かったときに、絶望的なほどにがっかりしてしまったのです。

NewImage.jpgこの常識を覆して行ったのは、Mac OS X 10.0 Cheetahの後を次いだ Mac OS X 10.1 Puma、Mac OS X 10.2 Jaguarでした。特に10.2 Jaguarはグラッフィックスカードの処理能力を引き出すことによって、大幅なパフォーマンス改善を実現しました。この時点でMac OS Xは実用に堪える処理速度を手に入れました。そして10.3 Panther、10.4 Tiger、10.5 Leopard、10.6 Snow Leopardと、どのバージョンでもパフォーマンスは改善して行きました。Windows VistaからWindows 7に行くまでのパフォーマンス改善も、期間は短かったのですがおおよそ同じ状況だったのだろうと思います。

もちろんすべてのマシンでパフォーマンスが改善した訳ではありません。OSの機能を拡充しながらの速度改善はマジックではありません。これを実現するためには、CPUが担ってきた処理を他のハードウェアに任せる等の方法がとられましたので、対応しないハードウェアではうまくいきませんでした。しかしハードウェアが対応している限りはOSの機能拡充と速度改善は両立していました。

Mac OS X 10.0 Cheetahのパフォーマンスが遅かったときは非常にがっかりしたのですが、iPhone 3GでiOS 4の速度が遅くても安心していられました。Apple社ならOSアップグレードでパフォーマンスを改善してくれるだろうって、信じることができました。そう遠くはない過去にそれをやってのけた訳ですから。

今ではOSにしてもアプリにしても、そしてウェブサービスにしても、機能を拡充しながら処理速度を向上させることが常識になってきました。

LinuxのUbuntu 10.04は超高速で再起動できることに注力しています。Windows 7はNetbookでも軽快に動くようにすることに重点を置きました。MacはSnow Leopardで大幅な減量と最適化を実現しました。

ウェブではGoogleがGoogle Instantを発表し、スピードへの飽くなきこだわりをまたも見せてくれました。ウェブページの速さがオンラインでの売上げに直結するというデータも出ています。

良い時代になったと思うと同時に、これを支えている多くのテクノロジーを開発した人間には本当に頭が下がる思いです。