イノベーションを育む方法:PixarのBrad Birdとのインタビュー

PixarのBrad Birdがイノベーションを育む方法について、McKinseyの報告をまとめた記事がありましたので紹介します。

まず、Brad BirdがPixarに入社した経緯について;

Pixarが3回の成功(Toy Story, A Bug’s Life, Toy Story 2)を収めたために、かえってイノベーションが困難になってしまうことをSteve Jobsは心配していました。Steve JobsがBrad Birdを採用したのはそれが理由でした。JobsがBrad Birdに言ったのは「僕らが心配しているのは自己満足による安心感だ。すべてのやり方はもうわかったと思ってしまうこと。君にはPixarをかき回してほしいのだ。」

そしてMcKinseyの報告に書かれた10個のキーポイント

その1:厄介者を探せ

Brad Bird : 僕は言ったんだ。「厄介者を探しだせ。僕はイライラしたアーティストが欲しいんだ。他の人とは違いやり方をしていて、全体から相手にされていない人だ。会社を辞めようと思っているやつだ」。会社に不満を持っている多くの人は、いままでと違うやり方を知っていたけど、それを試す機会がないからイライラしていたんだ。試す機会がなかったのはそれまでの方法が非常にうまくいっていたからなんだけど。そこで厄介者が自説の正しさを証明する機会を与え、その結果、数多くのもののやり方を変えたんだ。

その2:完璧はイノベーションの敵だ

Brad Bird:彼らの中の完璧主義を払拭しなければならなかった。画面上に何かを表現するためには、安っぽくて汚いやり方だってやりかねないことを僕はやりかねないと知らしめて、彼らを脅したんだ。例えば「水をコンピュータシミュレーションしなくたっていいんだ。プールの水しぶきをフィルムに収めて、その中に水を合成するだけでいいんだ」って言ってね。実際にはプールの水しぶきを撮影はしなかってけど、このような考え方を浸透させて、すべての面から完璧な方法をやらなくてもいいんだということを理解させた。すべての場面は同じじゃないんだ。いくつかの場面は完璧でなければならない。かなり完成度の高い場面も必要だ。でも、全体の雰囲気を壊さなければOKという場面もあるんだ。

その3:熱い人を捜せ

Brad Bird: 物事に深く関わろうとする人がよりイノベーションを起こす。物事に深く関わる人は物静かであったり、うるさかったり、あるいはその中間だったりするけど、でもみんなが共通して持っているのは、飽くなき探究心だ。「問題の核心を知りたい。僕には何かやれることがある」。赤外線カメラで温度を視覚化できたら、彼らの頭のてっぺんから熱が上がっているのが見えるよ。

その4:イノベーションは真空状態では起きない

Brad Bird: 僕はすべての人を一つの部屋に集めたんだ。前任者とはこれが大きく違った。彼は仕事内容を自室でレビューし、メモを書いて、担当者に送っていた。僕は言ったんだ。「ほら、このチームはみんな若い。個々のアニメーターとしてはそれぞれ異なる強みと弱みを持っている。でも強みをお互いにつなげることができれば、全体として世界最強のアニメーターになれる。だからみんなには発言をして、考えていることを全部言ってほしいんだ。あなたの描いているシーンを全員で見るんだ。みんながお互いに恥をさらし合い、そして勇気づけられるようにするんだ。」

その5:士気が高ければ創造性は安く手に入る

Brad Bird: 僕の経験上、映画の制作費に最も影響を与えつつ、帳簿上全く現れないものが士気なんだ。士気が低ければ、経費$1に対して、$0.25程度の価値しか得られない。でも士気が高ければ、$1に対して$3の価値が得られる。会社は士気にもっともっと気を使わなければならない。

その6:成功を保証してはならない

Brad Bird: 不可能を達成するための最初のステップは、不可能だと思っていたことが本当は実現可能であると信じ込むことだ。

安全策をとっては駄目なんだ。自分でも怖いこと、自分の能力の限界のこと、失敗するかもしれないことをやらないといけないんだ。

その7:Steve Jobsが言うには「相互交流 = イノベーション」

Brad Bird: Pixarのビルのアニメーション階に行くと、ドアヒンジが無いんだ。自分たちのオフィスのエントランスはどのように飾ってもいいんだ。ウェスタン映画のようなエントランスにしてもいいし、ハワイのようなものにしてもいい。John Lasseter は、自由な雰囲気があれば創造性が高められると考えているんだ。

ビル全体もそうだ。ビルはSteve Jobsが事実上デザインした。真ん中に大きなアトリウムを作って、一見するとこれは場所の無駄のように見える。それでJobsがどうしてこれを作ったかなんだけど、みんな個別のとこで仕事をするよね。ソフトウェアを開発している人はある場所。アニメーターは別のところ。そしてデザインをしている人はまた別のところ。そこでJobsはメールボックス、会議室、カフェテリア、そして狡猾にもトイレまでもすべて真ん中に置いたんだ。そうすると、自然といろいろな人に会ってしまう。Jobsの考えでは、人が人とすれ違いアイコンタクトをするとき、何かが起こる。だから会社の全員と必ずすれ違う仕組みにしたんだ。

その8:異なる分野の学習の奨励

Brad Bird: PixarにはPixar University (PU)がある。証明の仕事をしているけれどもアニメーションの作り方を勉強したいのなら、アニメーションのクラスがある。ストーリーの構成、Photoshopの使い方などはもちろん、イスラエルの格闘技 Krav Magaのクラスもある。Pixarでは自分の専門分野以外の学習を奨励していて、社員がより’完全’でもより創造的になるようにしているんだ。

その9:創造性を阻害する要因を排除しろ

Brad Bird: イノベーションを邪魔するのは、受け身でありながら攻撃的な人。グループになると自分の意見を言わないけど、裏で問題点を突っついて邪魔をする人。こういう人は毒みたいなものだ。このような人は割と簡単に見分けられるので、すぐに除いていく。

その10:お金儲けにフォーカスしてはいけない

Brad Bird: 僕がDisneyに入社したとき、まるで雨ざらしにされたキャデラックのよだった。Disneyの思考プロセスは「こんなにすごい機械があるんだ。すばらしいものを作るのに使えないか?この宇宙船があれば火星にだっていけるぞ。」というのではなく、「僕らにはWalt Disneyのことは理解できない。彼が何をやったかは理解できない。だから今あるものを壊さないようにしよう。この宇宙船をとにかく維持しよう。何か新しいことをすると、傷つけてしまうかもしれないから」になってしまっていた。

Walt Disneyが繰り返し言っていたのは「僕はお金を作るために映画を作っているのではない。映画を作るためにお金を作っているのだ」。Disneyの絶頂期とDisneyが駄目になっていたときの違いは、この言葉に凝縮されている。これはPixarにも当てはまるし、多くの他の会社にも当てはまる。直感とは違うかもしれないが、想像性がベースの会社が長い目で成功していくためには、お金儲けにフォーカスしてはいけないんだ。