マックが売れている理由

10月14日(火曜日)に、Apple社は新しいMacBookおよびMacBook Proを公開するイベントを開催しました。(ビデオはこちらから)

そのとき、恐らく投資家の視線を意識してだと思われますが、Macが非常に売れていることを細かく紹介していました。

  1. Macの売り上げ成長率が市場の3倍であること、および
  2. USの小売において、販売台数ベースでシェアが17.6%、金額ベースのシェアは31.3%であること

景気が下降している局面では、安い製品が売れると一般に考えられます。Macのように高価なパソコンは売れずに、安売りのウィンドウズパソコンが売れるだろうと予想されます。しかしそれとは逆のトレンドです。Macの売上が下がるどころか、ますます絶好調なのです。

この原因は何でしょうか。Apple社のTim Cookは次の順番で要因を挙げています(ビデオの1分30秒あたりから)。

  1. Better Computers: 最高のパソコンラインアップを用意していること
  2. Better Software: 最高のソフトウェアを提供していること
  3. Compatibility: Intel Macによって、WindowsがMac上で走らせられるようになったこと
  4. Vista: Microsoftの新しいOSのVistaが失敗し、これを契機にMacに人が移っていること
  5. Marketing: Mac vs. PCの広告が成功していること
  6. Retail Store: Apple Storeで新規顧客開拓ができていること

このリストの順番を見ると
自社が良いものを作っていること > 競合が駄作を作っている > 広告 > 小売り
の順番になっていることに気付きます。

バイオの業界では、ゲノムバブルがはじけたら2003年あたりから、モノ作り重視・日本語サポート重視からシフトして、マーケティング・セールスをことさらに強調する経営者が多くなってきたように思います。バイオに何の思い入れも無い、全く異なる分野出身の人が、MBAを持っているという理由だけで事業部長や社長になり始めたのもこの時期だと思います。

残念ながら、この方針がうまくいっているという話は全く聞いたことがありません。

マーケティングやセールスは確かに重要ですが、それはあくまでも優れた製品があって始めて意味を持つのであって、どんなにマーケティングやセールスが強くても、駄目な製品は駄目だと。Apple社の成功は、本当のモノ作りが最後には勝つことを我々に教えてくれているように思います。

ちなみに完全に蛇足ですが、日本でよく言っているモノ作りがApple社のモノ作りと同じかどうかははなはだ疑問のところがあります。日本のモノ作りの基本は、品質の良く、機能が多いもの(スペックが高いもの)を安く販売することがキモです。これは新興国には可能な方法ですが、人件費が安くないと破綻してしまうため、成熟した国家ではなかなか難しい戦略です(日本の製造業が派遣社員に頼ってしまっているのは、このモデルにしがみついているためとも言えます)。これに対してApple社のモノ作りは、顧客の将来のニーズを先読みし、機能を絞り込んで、使いやすいものを、比較的高い価格で売ることです。同じモノ作りでも、アプローチは全く違います。

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