ライフサイエンスでの代理店(ディーラー)の役割 その1

ライフサイエンス分野の代理店について、2chではかなり頻繁に話題になっています(例えばディーラーについてスレッド)。存在意義がどうであるとか、今後も存続していくのだろうかとか。Googleで検索しても2ch以外になかなか生の声がブログなどには掲載されていない用ですが、2chのスレッドもかなり正確で、ライフサイエンス業界の置かれている現状を理解するには良いと思います。一応業界関係者だった人間の意見として。

先のディーラーについてのスレッドの主題だったみたいですが、「(ディーラーの)存在意義を真面目に考えましょう 」というのを僕なりの立場から考えたいと思います。

かなり長い話になりそうですので、結論から先に言います。

僕は何らかの形でメーカーと研究者の間に小売業者が入るべきだと思います。その小売業者の形は現在の代理店の形とは異なりますが、かといって直販を主体とした欧米のライフサイエンス業界の形もあまり良いと思いません。時代の流れていずれはオンラインでの販売が多くなると思いますが、そのときもメーカーサイトからの直販という形ではなく、アマゾンのような小売りが間に入る形が理想的だと思っています。

欧米での事情を含め、話すべきは背景はたくさんありますので何回かのブログに分けて書こうと思います。今回は日本の現状のアウトラインの整理だけをしておきます。

日本のライフサイエンスでの代理店とメーカーの現状

  1. 日本ではライフサイエンス分野の製品の販売の100%近くが代理店を介して行われます。代理店がとってきたのではなく、顧客が自分から勝手に注文した場合およびメーカーの営業が自分自身でとってきた商談であったとしても、後づけで代理店が間に入ってくることがほとんどです。
  2. 代理店を必ず間に入れる理由として、一番はっきりしているのは大学からの代金の回収が非常に大変なケースがあることが上げられます。メーカーは外資系も多いので、比較的厳しい支払い条件を購入者に要求しますが、大学研究者はこの条件に対応できないケースも多いので、代理店がその間を仲介しているという形です。
  3. 大部分の代理店は、製品の知識が非常に不足しています。というか全然ないというのがより現実に近いです。最終顧客である研究者に対して、しっかりと製品を薦めることはほとんどの代理店営業担当者にはできません。
  4. ただし、代理店の営業担当者に製品をすべて把握せよというのもかなり酷な話です。ライフサイエンスの研究試薬はおそらく100万製品ぐらい発売されていて、専門性も高いものが大部分です。最初から勉強をあきらめてしまう気持ちもわかります。各メーカーの営業担当者だって自社の製品だけだって勉強していないのが現状ですし。
  5. 日本のライフサイエンス分野の代理店はほとんど在庫を持ちません。研究者から注文が入った時点でメーカーに注文し、翌日届いた製品をすぐに研究者に持っていくだけです。非常によく売れる一部の製品については在庫をとっていますが、95%の製品については研究者から受注が来てからメーカーに発注しています。
  6. もっとも外資系メーカーの日本支店もかなり限られた在庫しか持ちません。全製品の半分以下しか在庫を持っていないでしょう。販売数量が少ない製品はほとんどは注文が来てから海外に発注しています。しかも海外からの発送は週に1回しかないので、国内に入って顧客の手元に到着するまでは通常2週間程度かかってしまいます。
  7. 販促キャンペーンはほぼメーカー主導です。メーカーが大々的にキャンペーン中の割引率などを末端顧客に案内します。代理店が戦略を練って、販促資料などを用意して、顧客を呼び込むという活動を行うことはほとんどありません。
  8. 欧米では大部分はメーカーが末端顧客にダイレクトに販売しています。一部代理店はありますが、日本のようにほとんどの注文が代理店を通るということはありません。その一方でアメリカなどは国土面積が非常に大きいので、メーカーの営業がくまなくエリアをカバーすることなどは不可能であり、ダイレクトメールなどが大切になります。またメーカーの営業は、一般に大きい顧客しか訪問しないようにしています。
  9. 欧米ではフリーザープログラムというのが流行しています。これはそれぞれのメーカーが研究所のスペースを借りて、そこに自社専用の冷蔵・冷凍庫を置き、その中に自社の試薬だけを置きます。そして研究者は、試薬が欲しいときにその都度、この冷蔵・冷凍庫から取り出すのです。富山の薬売りと同じ形態です。また別の言い方をすれば、これは各メーカーの自動販売機を置いているのと同じです。実際、このフリーザーというのはバーコード読み取りやオンライン接続、タッチパネルディスプレーなどかなりのハイテクが導入されており、大型機器並みの価格です。このフリーザープログラムの場合、どこにフリーザーを置かせてもらえるか、近くに他社のフリーザーがどれだけ置いてあるかなど、かなり小売店舗での販売スペース競争みたいなことがメーカー間で起こるのは容易に想像できます。
  10. 日本は、新製品の売れ行きが世界の中でかなり早い方です。他国と比較すると、新製品の売れ行きは2-3倍早いそうです。欧米では直販制度をとっているので、新製品の情報を末端顧客に浸透させるのに非常に時間がかかってしまうのかもしれません。それに対して日本の代理店制度を利用すると、新製品案内が速やかに全国の研究者に届きます。これだけが理由ではないかもしれませんが、情報伝達に置いては日本の代理店網の有用性は高いと言えるでしょう。
今回はとりあえず以上にします。次回以降、より深く話していきたいと思います。