ライフサイエンス業界を元気にするヒント(前アップルCEO 原田泳幸インタビューから)

Macで知られるアップルコンピュータは1990年代の大スランプから見事に復活し、今ではアメリカでMacの売上が全パソコンの21%にまでシェアが回復したそうです。

その成功は決して平坦な道のりではなく、特に最初の頃は非常識とも自殺行為とも思えることをかなりやっていました。例えば販売店を大幅に減らして、大部分の販売店はMacを売ることができなくなりました。またApple Storeを作ったときも、当時はDELLの電話・インターネット販売が主流と考えられていたので、多くのアナリストに非難されました。

しかし、その一見非常識と思える行動が正しかったのです。間違っていたのはマーケティングの常識の方でした。前アップルのCEO 原田泳幸のインタービュー記事が会ったので、そこからいくつかピックアップします。

次の年にiMacを発表する。それまでに相当、販売店のインフラの改革をおこなったり、サプライチェーンのインフラを整えていたから、大成功した。

Steve JobsがAppleに復帰した直後にやったことの中に流通とサプライチェーンの大幅な見直しがありました。これは全世界規模で行われたことで、日本はその流れを踏襲したまでですが、日本の商慣行という大きな壁がありましたので、それを実施するのは大変なことだったと想像されます。でもそれを日本でもしっかり行い、原田氏がおっしゃる通り後の成功の基盤が築かれました。

教訓: 地味ですけど、サプライチェーンのインフラの整備は成功の土台となります

40社以上あった1次卸店を4社に減らして、3000店舗以上あった販売店を100店舗に減らしました。これはとんでもない改革ですよ。

 雑誌を増やしたこともそうですし、ソフトの数を増やしたこともそうですし、販売店インフラのリストラをやったのもそうですが、限りなく経営資源をお客さんのために使うということですね。販売店にお金をあげても、店が多過ぎれば、ディスカウント競争をやってそこで消えるわけです。従って、販売店のマージンを少なくして、その分、お客さんのためにフリーセールス、ポストセールスにお金を使う、そのようにシフトをしていった。

当時のパソコン業界はコンパック・ショックの影響がまだ強く残っており、量販店でどんどんディスカウントをさせていかないとパソコンは売れないと考えられていました。アップルに対しても自社でパソコンを製造することをやめて、クローンメーカーにライセンスさせるべきだという考えが主流で、そうやって安いパソコンを売らないと生き残れないと考えられました。その中で販売店のマージンを少なくして、ディスカウントを抑制して、高い価格でパソコンを販売させるという戦略は自殺行為にも見えました。

でもアップルがやったのは、ディスカウントするのではなく、良質のサービスを提供する環境を整備することでした。マックの販売権のある販売店にはマックの専門家集団を配置させ、きれいにマックを陳列することを義務づけ、マックを見にきたお客様が良いサービスを受けられるようにしたのです。その環境が用意できない販売店はマックが売れなくなったのです。そしてその環境を用意できた販売店はディスカウント競争に巻き込まれないですむために、投資した分の利益をきっちり回収できたのです。

この活動は後のApple Store(直営店)に引き継がれて、アップルのブランドイメージが世界一になることに最終的につながりました。

教訓: ディスカウントでお金を失うのではなく、お客様の役に立つことにお金を使いなさい

これをライフサイエンスに当てはめると、以下のようになるのではないかと思います(メーカーの立場で書いています);

  1. サプライチェーンを見直しましょう。土台が怪しいメーカーが多すぎます。代理店との関係も考え直すタイミングです。
  2. 製品が話題になる環境を作りましょう。パソコン雑誌みたいなものはライフサイエンスには無いけれども、お客さんとか第3者が製品を語り合える環境を作りましょう。Web 2.0をうまく使いこなしましょう。
  3. ディスカウントキャンペーンとか営業強化、代理店政策にばかりお金をかけるのではなく、ポストセールスサービスなどを充実させて末端顧客が喜ぶサービスを提供しなさい。そのためには少数の代理店に徹底して教育をしてあげるとか、自社の営業がちゃんと製品をサポートできるようにしてあげるとかです。
  4. お客様のトラブルシューティングができるぐらいの営業を増やしましょう。研究者は「営業」とは話したがらなくても「学術」とは話したがるという話はよく聞きます。でもそうじゃなくて、どの「営業」でも「学術」並にお客様をサポートできるようにしないと行けません。Apple Store(直営店)のGenius Barのように。
その中で「バイオの買物.com」は2.と将来的には4.あたりに貢献できればと思っています。