不況でベンチャーキャピタルが犠牲になるか?

プログラマー、ベンチャー投資家として有名なPaul Grahamブログ記事

今まではベンチャー企業の成功にはベンチャーキャピタルが必要でしたが、今回の不況でこの依存関係が解消されるかもしれないという話です。そして景気が回復しても、この関係は復活せず、ベンチャーキャピタルそのものが不必要になるかも知れないという結論です。

以下ポイントの翻訳です。

VC funding will probably dry up somewhat during the present recession, like it usually does in bad times. But this time the result may be different. This time the number of new startups may not decrease. And that could be dangerous for VCs.

今回の不況で、ベンチャーキャピタルによる投資はある程度枯渇するでしょう。不況のときにこうなるのは普通です。しかし今回は結果がいつもと異なるかもしれません。今回は新規ベンチャー企業の数は減らないかもしれません。そしてこれはベンチャーキャピタルにとっては危惧されることです。

When VC funding dried up after the Internet Bubble, startups dried up too. There were not a lot of new startups being founded in 2003. But startups aren’t tied to VC the way they were 10 years ago. It’s now possible for VCs and startups to diverge. And if they do, they may not reconverge once the economy gets better.

インターネットバブル後にベンチャーキャピタルによる投資が枯渇したときは、ベンチャー企業の数も減りました。2003年に設立されたベンチャー企業は多くありませんでした。しかしベンチャー企業とベンチャーキャピタルは、もはや10年前のときのような依存関係にありません。今ではベンチャー企業とベンチャーキャピタルの関係が解消される可能性があります。そしてもし解消されれば、景気が回復しても関係が復活しないかもしれません。

The reason startups no longer depend so much on VCs is one that everyone in the startup business knows by now: it has gotten much cheaper to start a startup. There are four main reasons: Moore’s law has made hardware cheap; open source has made software free; the web has made marketing and distribution free; and more powerful programming languages mean development teams can be smaller. These changes have pushed the cost of starting a startup down into the noise. In a lot of startups—probaby most startups funded by Y Combinator—the biggest expense is simply the founders’ living expenses. We’ve had startups that were profitable on revenues of $3000 a month.

ベンチャー企業がベンチャーキャピタルに依存しなくなった理由は、ベンチャー業界にいる人であれば既に知っています。つまり、ベンチャー企業を設立するのが非常に安くなったのです。これには4つの大きな理由があります。ムーアの法則によりハードウェアが安くなりました。オープンソースソフトによって、ソフトウェアが無料になりました。ウェブによってマーケティングおよび流通が無料になりました。より強力なプログラミング言語の登場で、プログラム開発チームのサイズが小さくてもよくなりました。これらの変化により、ベンチャー企業の設立に必要な資金はほとんど無視できるレベルになりました。多くのベンチャー企業(Y Combinator (Paul Grahamのベンチャー投資会社)によって設立された企業のほとんど)において、一番大きな出費は単に創設者の生活費です。毎月$3,000 (30万円)の売り上げで利益が出たベンチャー企業もあります。

I’ve detected this “investors aren’t worth the trouble” vibe from several YC founders I’ve talked to recently. At least one startup from the most recent (summer) cycle may not even raise angel money, let alone VC.
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If founders decide VCs aren’t worth the trouble, that could be bad for VCs. When the economy bounces back in a few years and they’re ready to write checks again, they may find that founders have moved on.

Y Combinatorが関わり、最近話をする機会があった創業者の中にも、この「投資家と関わるのは面倒な割には利益がない」という空気を感じています。最近の投資サイクル(夏)のベンチャー企業の一つは、ベンチャーキャピタルどころかエンジェル投資も必要としないかもしれません。
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ベンチャー企業の創業者がベンチャーキャピタルの関わるのが面倒だと感じるようになれば、ベンチャーキャピタルにとっては問題です。景気が数年後に回復して、ベンチャーキャピタルが再び投資できる環境になっても、創業者はもう彼らを必要としてないかもしれません。

Castle104合同会社の場合

バイオの買物.comを運営しているCastle104合同会社でも同じように考えています。非常に少ない資金で会社を運営しながら、様々なビジネスモデルをじっくりと試して、短期の収益を追求するよりも真に顧客が必要とするサービスを見つけ出そうというのが戦略です。

以下にCastle104合同会社の費用の内訳を簡単に紹介します。いかに少ない資金で運営できているかがわかると思います。

  • インターネットサーバ:毎月1万円。2 GigabyteのRAMと40 Gigabyteのディスクスペースが使え、なおかつカーネルアップグレード以外はほとんど何でもできます。
  • ソフトウェア:サーバのソフトはLinux, Apache, Ruby on Rails, Mongrelと完全にオープンソースで無料です。開発とかプロジェクト管理用に、毎月数千円のソフトウェア使用量は支払っています。
  • メールサーバなど、基本ITインフラ:こういうのは最近グーグルで全部できます。@castle104.comのアドレスのメールも、グーグルのGMailで動いています。無料です。
  • オフィス:自宅です。一時期外部の人に作業を委託したことがありますが、そのときもチャットでこまめに連絡をしていたので、オフィスの必要性は感じませんでした。(逆にチャットを通してその人の働きが悪いことがわかったので、打ち切りました)
  • マーケティング:グーグルのAdWordsが非常に効果的です。無名のウェブサイトでも、簡単にアクセス数を稼ぐことができています。費用は毎月数万円です。
  • プログラム開発:バイオの買物.comを動かしているプログラムはすべて一人で書いています。Ruby On Railsというオープンソースのフレームワークを使用しているため、非常に効率よく開発ができています。PHPとかで同じものを開発していたら、とてもじゃないですけど間に合いません。

その他、eMobileの通信費などをすべて合わせても毎月10万円以下です。また職場は自宅なので、実質的には経費はかかっていません。

バイオの業界はもともとそれほど大きなものではありませんし、インターネットマーケティングの活用もまだ十分に進んでいません。消費者である研究者と、広告主となるメーカーがお互いに満足できるビジネスモデルを探すには時間がかかります。このように経費が少ないからこそ、これが見つかるまでいろいろ試せるだろう考えています。