何ができるかではなく、何をやりたいかを突き詰める

僕は何ができるかという議論の仕方が嫌いです。

そうではなく、何がやりたいか、何をやるべきかに遡って考えることが好きです。

何をやりたいかを突き詰めて、成功している例を挙げます

山中教授のiPS細胞

再生医療の究極的な研究です。この成果を受けて、クローン羊・ドリーの生みの親のイギリスのイアン・ウィルムット博士(Ian Wilmut)が「自分の研究の方向を断念した」とまで言ったと報道されています。
ES細胞の倫理的な問題をどうやってクレアするか、骨髄幹細胞をどうやって増殖させるかといった、解決策が一見近そうな問題に取り組むのではなく、もっとも究極的なものは何かを突き詰めて行った研究だと僕は解釈しています。この技術を持ってすれば、倫理的な問題、ドナーの問題はすべて一気に吹き飛んでしまいます。

iPhone

まだ日本では発売されていないので製品そのものはよく知りませんが、iPhoneおよびiPhone用のソフトを作るデベロッパーキットは、共に「何ができるか」を超えて「何をやりたいか」をとことん突き詰めた結果でしょう。だって、MacOS XがiPhoneに載っているんですよ!しかもLeopardが!それは滑らかな3Dアニメーションがユーザインタフェースのあちらこちらに使われているのを見れば納得です。そしてユーザインタフェースはマルチタッチ。そしてSafariというフルブラウザが大部分使える。

既存の携帯電話やスマートフォンを見て、「これに何を追加できるか」という発想をしたのではなく、「ポケットに携帯するデバイスは何ができると面白いか」のイメージを膨らまして、そしてかなりの技術的困難を乗り越えて実現してしまったものだと思います。

蛋白質のフォールディング

蛋白質がフォールディングするというのは、確率論的にいうとすごくむちゃくちゃなことなんですよね。蛋白質がとりうる立体構造の膨大さを考えると、うまくフォールディングするというのは神業に近いんです。

しかも蛋白質がフォールディングするときは本来の構造とは大きく異なる局所的な低エネルギー状態にはまることがあって、抜け出せなくなるんです。つまり、連続的にだんだんフォールディングしているだけでは、すぐにどこかにはまって、うまく行かなくなってしまう。

そこで活躍するのがシャペロン蛋白質たちなんですけど、フォールディングできずに苦労している蛋白質があきらめてしまわないように、一旦フォールディングを戻して、構造を緩めてあげて、全く新しい構造にチャレンジできるようにしてあげるんですよね。シャペロン蛋白質たちは、決してフォールディングを誘導しているのではありません。そうではなくて、正しい立体構造をあきらめかけている蛋白質たちに勇気を与えて、気持ちを楽にさせてあげて、展望を広げてあげて、そして再チャレンジさせてあげているんです。

人間も同じように、「この先何ができるか」を考えすぎると、本来の姿と異なる局所的な低エネルギー状態にはまってしまいます。

ときどきねじを緩めて、リラックスして、山の向こうにある究極の姿を求めて再出発するのが大切なのです。