収益モデルがウェブサイトの使い勝手を決める例:バイオ百科

理想の抗体検索システムを追求した新「まとめて抗体検索」サービスを始めましたので、ぜひご利用ください。

またこの記事を含め、ライフサイエンス研究用製品メーカーのウェブサイトのあるべき姿について書いた記事を特集ページにまとめました。あわせてご覧ください。

アップデート
バイオ百科で僕が実際に抗体を検索して、使いにくくて困っているビデオをアップロードしました。

バイオの買物.comを含め、ウェブサイトの運営資金は広告収入を当てにしていることはとても多いです。

優れてウェブサイトを作り、多くにユーザが訪問してくれれば、広告収入が増えるという形です。

しかし広告料金のプラン(つまり収益モデル)を上手に設計しないと、ユーザにとって優れたウェブサイトが作りにくくなることがあります。ユーザの要望に応えるウェブサイトにすることと、収益を得るということが、互いに矛盾するケースが生まれてしまうのです。

その例として、「バイオ百科」というウェブサイトを見ていきたいと思います。

バイオ百科は抗体メーカー(商社)数社の製品をデータベースに登録し、限定的ではありますが、横断的な検索を可能にするウェブサイトです。特に抗体を探すときに有用です。登録しているメーカーが少ないので、BioCompareの抗体検索に比べれば抗体の網羅性は低いのですが、コスモバイオとフナコシの抗体が入っているので、小さいメーカーはかなりカバーされています。

しかしこのサイトで非常に残念なのは、検索インタフェースの使い勝手です。

「CD133」で検索を行った例で解説します。

biohyakka1.png

まず気付くことは、製品が全くランダムに並んでいることです。製品名で見ても、メーカー名で見ても、包装サイズで見ても、価格で見ても、全く何で見てもランダムに並んでいます。
並べ替えるには再度検索を行う必要があるのですが、検索条件のメニューは以下の通りです。

biohyakka2.png

ユーザが一番望むであろう「価格順」というのが無いのです。

どうしてランダムに製品を並べるのか。どうして価格順に表示させないのか。

さてここからは想像になりますが、ユーザにとって不便なインタフェースのままになっている理由を考えたいと思います。どうしてバイオ百科は不便を承知で、ランダムな表示順にしたり、価格順の並べ替えを用意しなかったりしたのか。

製品を掲載するにあたり、バイオ百科ではまず比較的高額なセットアップ費用を支払う必要があります。そして小額ではありますが、毎月の固定料金を支払います。

僕はこの料金システムがバイオ百科の自由を束縛し、ユーザ本意のウェブサイトを作りにくくしていると考えています。

まずは高額なセットアップ費用です。高額な費用を支払った以上、広告主であるメーカーはバイオ百科に対して強い発言権を持つようになります。自社に都合の悪いサイトの改良をしようとすれば、拒否できるだけのパワーを広告主は持つことになります。すべての広告主が納得するような改良は簡単にはできないでしょうから、サイトの改善スピードが遅くなってしまいます。

一方、もしバイオ百科がセットアップ費用を取っていなかったとします。そのとき、広告主に都合は悪いけれども、ユーザにとっては便利な機能(例えば価格順の表示)を追加しようと考えたとします。その結果として一部の広告主の反感を買ったとしても、その広告主に外れてもらうようにするだけでいいのです。文句を言う広告主の製品は載せてあげませんよと。広告主もセットアップ費用を支払っているわけではないので、損はありません。それに対して広告主がすでに高額なセットアップ費用を支払ってしまっていると、広告主はもとをとろうと考えますので、簡単には外れてくれません。広告主は引き下がらずにしつこく文句を言う可能性がありますし、仮にそうではなくても今後のビジネスにしこりを残すことになります。

月額の固定料金も問題です。広告主は一定の費用を毎月支払うわけですから、各広告主の製品をなるべく均等に表示する義務が発生します。メーカーのアルファベット順に並べてしまうと、いつも同じ会社が上位に表示されてしまうので、広告主間で不公平が生まれます。製品名のアルファベット順に並べても、同様の問題が発生する可能性があります。価格順に並べた場合は、安売りメーカーが優先して表示されるので、高い品質とブランド力を持っていて価格を高めに設定しているメーカーは広告を出してくれなくなります。

バイオ百科で製品をランダムに表示しているのは恐らくこのためでしょう。

一方GoogleのAdwordsのように、訪問者がリンクをクリックする回数に応じて課金するシステムであればこの問題はかなり軽減されます。並べ替えの関係でたくさん表示されるメーカーは多くの広告費を支払いますし、少ししか表示されないメーカーは広告費をあまり支払いません。したがって広告主間の不公平感は生まれません。価格順に並べても問題ありません。真に高い品質とブランド力を持っているメーカーであれば、検索条件で指定してもらえるはずですから、表示してもらえるはずです。検索条件で指定してもらえないメーカーは、実はブランド力が思ったほど無かったという、それだけのことです(もちろん、ウェブサイト側は検索条件でメーカーを指定しやすいように工夫していることが前提ですが)。

また月額の固定料金の場合は、バイオ百科自身のインセンティブが低くなることが言えると思います。ユーザにとって便利なサイトを作ることよりも、広告主にとって都合のいいサイトへと重点が移ってしまう可能性があります。事実、今回紹介したもの以外にも、バイオ百科にはびっくりするような不便なところがありますが、なかなか改善されません(CD4を検索してみてください)。

以上、自分のバイオの買物.comを棚に上げて、他のウェブサイトの悪口を言ってしまいました。でも言いたかったのは悪口ではありません。

言いたかったのは、収益モデルをよくよく考えておかないと、広告主に自社の自由を束縛されてしまうということです。そして本当の顧客であるウェブサイト訪問者からフォーカスが外れてしまって、使いやすいウェブサイトが作れなくなってしまう可能性がありますよということです。

そういうことに注意しながらデザインしているバイオの買物.comの収益モデルについては、また別の機会に紹介したいと思います。