技術革新がなくてもイノベーションが起こることについて

ソマリアの電子マネーの話がThe Globe and Mailのウェブサイトに紹介されていました。

“How mobile phones are making cash obsolete in Africa”

ソマリアで使われている仕組みは以下の通りです。

  1. 通信会社のTelesomに一定の金額を預けます。この金額の中から電子的な支払いが行われます。
  2. 利用者が製品を購入する際、a) 3桁の電話番号でサービスに接続、b) 4桁の暗証番号を入力、c) 店固有の番号(Zaad number)を入力、d) 支払金額を入力 という操作をします。道端の露店もZaad numberを店頭に表示しているそうです。
  3. すぐに利用者(製品を買う人)と店の人の携帯電話にテキストメッセージが送られ、支払金額が表示されます。これをもって取引終了。

音声通話(番号入力はトーン入力と思われる)とSMSなどのテキストメッセージサービスさえあればできる仕組みです。SMSなどのテキストメッセージは日本だとDoCoMoのショートメール(1997年)以来利用可能ですので、ソマリアの仕組みを実施するための技術基盤は10年以上前から整備されていたと言えます。

これを見て痛感させられるのは、NFCのような新しい技術がなくても電子マネーは十分に実現可能で、むしろローテクから入った方が素早く、末端まで普及する可能性が高いということです。

実はインターネットが普及し始めたころもやはり最初は普通の電話回線でした。1990年代後半のインターネットというのは、ADSLとか光ファイバーではなく、音声の電話線を使ってやるものでした。1998年に発売された初代のiMacを見ても電話回線用のモデムが標準装備(33.6 kbits/s)でしたし、iMacのコマーシャルで使われていたのはそのモデムでした。インターネットが特に米国で各家庭に普及するようになったのは、電話回線を通してでした(アメリカは近距離電話なら固定料金だった)。

そう考えると、新しいサービスを提供するのに新しいインフラに依存するよりも、既存のサービスで何とか動くようにするのが正しいのではないかと感じます。Suica、パスネットのようにサービスがある程度集中管理できるときはそうではなくても、各家庭、各店舗までインフラが必要になる場合は絶対にそうです。

NFCに依存した日本の電子マネーシステムでは各店舗がNFC読み取り機器を用意する必要があります。大きな店舗やフランチャイズでは電子マネーの導入は進んでいますが、そこから先はなかなか進みません。ですからNFCのようなものじゃなくて、もっとシンプルなものが必要なのだろうと思います。そうすればもっと普及するのに、もったいないなぁと思います。