研究者向けの受託ビジネスの難しさ

研究者向けの受託ビジネスは難しいです。始めるのは簡単ですが、儲けるのは難しいです。

合成オリゴ業界の話題はしょっちゅう2chをにぎわしています。僕自身も以前にDNAアレイとかcDNAライブラリーの受託ビジネスを担当していましたので、その厳しさはよくわかります。

なんでそうなのか、ちょっと古典ですが、著名なMicheal E. Porterの5 Forces分析をするとすごくわかりやすいので紹介します。

5 Forcesでは以下の各項目がどうなっているかを市場ごとに見ていきます。

  • 新規参入業者の脅威
    • スケールメリット
    • 製品の差別化
    • 必要な投資資本
    • 製品切り替えのコスト
    • 販売チャンネルへのアクセス
    • ノウハウ、早いもの勝ち的要素など
    • 国家政策
  • 企業間の競争のし烈さ
    • 競合はドングリの背比べか
    • 市場成長は鈍っているか
    • 固定費が高いか
    • 差別化が無く、切り替えコストが低いか
    • 戦略的に重要な市場か
    • 撤退障壁が大きいか
  • 代替品の脅威
  • 買い手の交渉力
  • 供給企業の交渉力

その他、細かく書いていくと大変なのでここのあたりでとどめます。

でもこれだけ書けば、どうして研究受託ビジネスが大変かがわかりますよね。合成オリゴ業界について書きますが、多くの部分は他の受託でも同じです。

  • 超少量多品種なので、スケールメリットが出にくい。仮にスケールメリットを出すとしても、それはすべて購入している機械や試薬の性能に依存するので、結局は供給企業の交渉力を強めているだけ。供給企業はかなり寡占なので、1受託メーカーに大量に安く卸すよりも、複数メーカーに少量ずつ高く卸した方がいいので、ボリュームディスカウントはそんなに効かない。ここら辺はClayton Christensenの「イノベーションのジレンマ」の方が細かく分析しています。
  • 製品の差別化はできていない。また市場成長は鈍ってきている。
  • 国のベンチャー支援もあり、資本を調達することが簡単。
  • 日本の代理店制度のおかげで、販売チャンネルは比較的簡単に確保できる。代理店が在庫をする必要がないこともあり、代理店としてはリスクがない。
  • 撤退障壁は大きい。研究受託しかやっていないベンチャーが多いので、撤退するということは会社が無くなることを意味する。最後までついつい戦ってしまう。

ということで、5 Forces分析をすれば、参入するべき市場ではないと言えると思います。割と当たり前に。

もっとも5 Forcesは絶対的ではありませんので、これを超えたイノベーションができればうまくやれるのですが、ただ単に普通にビジネスをやっていたのでは泥沼にはまる運命にあるのはわかってもらえるかと思います。

非常に教科書的なことなので、MBAでこの泥沼にはまっている人がいたら、その人はなんちゃってMBAかもしれませんね。