Ruby on Railsだと保守委託もしやすそう。失敗は少ないでしょう。

ソフトウェア開発・保守の委託で失敗した例を昨日ブログに書きました。

問題はPHP4からPHP5にアップグレードする際、委託した先が勝手にオブジェクトキャッシュを外していたというものです。その結果、MySQLサーバへの負荷が増えて、ちょっと重たいページをアクセスするとすぐにパンクするようになってしまったのです。

委託先の担当者の技術力が無かった(アホだった)ということではありますが、よく考えてみるとRuby on RailsだとデフォルトでSQLをキャッシュするので(Rails 2.0以降)、何も考えていないアホ担当者をつかまされたとしてもMySQLサーバへの負荷は増えないんですよね。
(アホ,アホって繰り返しますが、どんなに優れたソフトハウスでも必ず担当者ごとの能力のばらつきがあります。悲劇はアホ担当者をつかまされたクライアントです。実績が立派な会社でも必ずアホはいますし、むしろ規模が大きい会社ほどアホはいますので、実績だけで外注先を選ぶと、こういうアホにあたります。)

Ruby on Railsだと非常に優れたフレームワークが既にあるので、独自に書くソースコードが圧倒的に少なくてすみます。自分が書いたPHPを一年ぶりに見ましたが、たいしたことをやっていない割には本当にソースコードが多いと感じました。それもRuby on Railsだとフレームワークがやってくれることがほとんど。今回問題になっているキャッシュもRuby on Railsなら全部フレームワークがやってくれます。

他人や他の会社に保守してもらう可能性があるのであれば、PHPはやめた方が良さそうですね。Ruby on Railsで行きましょう。

しかもRuby on Railsをやっている人は、一通りフレームワークの勉強をしているでしょうし、新しい開発手法に興味のある勉強家でしょうから、キャッシュの有効性を知らないなんてアホなことはないでしょう。

まだ怒りが静まらなくて、他の仕事に影響が出てしまっています。

ソフトウェア開発外注の難しさ:また失敗例を見てしまった!

昨日、以前に勤めていた会社のIT部門から電話がかかってきました。ウェブサイトを載せているレンタルサーバをアップグレードした際に問題が発生したというのです。

ウェブサイトのオンラインカタログは私が開発し、PHP4上で動いていました。そして私が退社したのを機会に、ソフトハウスに管理を委託したのです。

レンタルサーバをアップグレードするとPHP5しか使えないので、オンラインカタログプログラムに若干の変更が必要でした。具体的にはこちらでも紹介されているように、”Fatal error: Cannot re-assign $this”のエラーが出るという問題があったのです。スピードを上げるためにオブジェクトをキャッシュするようにしていましたが、キャッシュにヒットした場合は、コンストラクタで$thisにキャッシュ中のオブジェクトを代入していたのです。

しかしこの単純なPHP4からPHP5への移行作業も、委託先のソフトハウスは見事に失敗してくれたようです。まだ100%の確証はありませんが、たぶん”Fatal error: Cannot re-assign $this”が出ないようにするために、キャッシュの部分を削ったのだと思います。おかげで、負荷がかかるとサーバがダウンするようになってしまいました(負荷が少ないときはおおむね動くので見過ごしたのでしょう)。コードを見ればキャッシュしていることは明白なので、おそらく「キャッシュしなくてもバレないだろう」という気持ちで、安易に削除したのでしょう。許せない手抜きです。

しかもPHP4からPHP5への移行作業で、1人月相当の金額を要求していたようです。むむ。許せない。

もちろんすべてのソフトハウスがこんなにいい加減だとは思いませんし、内部の人の問題も大いにあるのですが、僕が見聞きした開発外注はほぼこのような情けない結果で終わってしまっています。

ソフトウェア開発外注は難しい。そのことを経験的に知っていて、素人ながら自分でオンラインカタログのプログラムを開発したのは、実は大正解だった。改めてそう思いました。

私はいまはむしろ逆の立場になりました。主に自分のためにプログラムを開発していますが、部分的に外注も受けようと思っています。こう言う情けない話にならないように、くれぐれも気をつけなければならない。自分が怒りを買う側になっては絶対にだめだ。そう強く思いました。

それにしても、ソフトハウスの人って、他人のソースコードを読むのが苦手なのですか?

データベースにこまめに問い合わせると遅いから、まとめてバッチでオブジェクトを作っているのがわからないのか?(Railsでいうと:includeを使うように)
お前のところはそうやっていないのか?
いくらコードにコメントが少ないからって、’cache’っていうような名前の変数が使われている箇所を削除するのなら、負荷試験ぐらいしろ!!

爆発

Microsoftの300億円広告キャンペーンを小馬鹿にしたApple広告

マイクロソフトは新OSのVistaの売上が芳しくないのを受けて、$300 million (300億円)をかけた広告キャンペーンを展開しました。

しかし、そのキャンペーンはひどく失敗しました。

なんでこんなアホなことばかりするのかなと思われる失態です。

Apple社はこれにつけ込む形で、“Bean Counter”という新しいテレビ広告別リンク)を出しました。

PC君:“Advertising, advertising, advertising, …. Fix Vista” x 2
PC君:“I’m just doing a little budgeting, you know, with all the Vista problems that have been frustrating PC users, I have to take drastic action”
Mac君:“By investing in advertising?”
PC君:“Yes advertising.” (右手側の大きな札束の山を指しながら…)
PC君:“I’m also putting in something to resolve Vista’s problems”(左手側のわずか数個の札束を指しながら…)
Mac君:“Do you think that that amount of money is going to help fix Vista?”
PC君:“I guess you are right. I’ll just put it all in advertising.”

Mac PC.png

Vistaの問題点を解決するための研究開発に投資しないで、広告宣伝にばかり巨額のお金をかけ、なんとかしのごうとしているマイクロソフトの姿勢を揶揄しています。

裏を返すと、マイクロソフトと違って自分たちAppleは、良い製品を作るための研究開発を優先させていますよというメッセージです。

昨日のブログにも書きましたが、Apple社は自分たちの成功の原動力は良い製品を作るというモノ作りにあると自負しています。

さてバイオ業界の話をしますと、残念ながらマイクロソフト的な傾向が強いように感じます。外資系企業が多いので日本国内での製品開発はもともとあまり行われませんが、少なくとも2003年頃までは各社は日本語でのサポートの充実に力を注いでいました。研究用の製品は使い方が単純ではないものも多いので、サポートの充実は製品の価値を高める「モノ作り」につながります。

それが近年ではサポート人員を減らして営業職を増やす行動が顕著です。
研究者にとっては、製品を手に取ってからが勝負です。製品が優れているか、サポートが充実しているかによって、研究が順調に進んだり失敗したりすることもあります。一部の優れた営業職はサポートまでフォローできますが、しかしそれも会社のサポートが充実していて初めてできることです。サポート人員を減らして営業職を増やす傾向が続くと、製品を売った後は知りませんということになってしまいます。研究者がこれから実験をして成果を出そうというときには、もうメーカーはあっちに向いてしまっているのです。

とても心配な状況です。

マックが売れている理由

10月14日(火曜日)に、Apple社は新しいMacBookおよびMacBook Proを公開するイベントを開催しました。(ビデオはこちらから)

そのとき、恐らく投資家の視線を意識してだと思われますが、Macが非常に売れていることを細かく紹介していました。

  1. Macの売り上げ成長率が市場の3倍であること、および
  2. USの小売において、販売台数ベースでシェアが17.6%、金額ベースのシェアは31.3%であること

景気が下降している局面では、安い製品が売れると一般に考えられます。Macのように高価なパソコンは売れずに、安売りのウィンドウズパソコンが売れるだろうと予想されます。しかしそれとは逆のトレンドです。Macの売上が下がるどころか、ますます絶好調なのです。

この原因は何でしょうか。Apple社のTim Cookは次の順番で要因を挙げています(ビデオの1分30秒あたりから)。

  1. Better Computers: 最高のパソコンラインアップを用意していること
  2. Better Software: 最高のソフトウェアを提供していること
  3. Compatibility: Intel Macによって、WindowsがMac上で走らせられるようになったこと
  4. Vista: Microsoftの新しいOSのVistaが失敗し、これを契機にMacに人が移っていること
  5. Marketing: Mac vs. PCの広告が成功していること
  6. Retail Store: Apple Storeで新規顧客開拓ができていること

このリストの順番を見ると
自社が良いものを作っていること > 競合が駄作を作っている > 広告 > 小売り
の順番になっていることに気付きます。

バイオの業界では、ゲノムバブルがはじけたら2003年あたりから、モノ作り重視・日本語サポート重視からシフトして、マーケティング・セールスをことさらに強調する経営者が多くなってきたように思います。バイオに何の思い入れも無い、全く異なる分野出身の人が、MBAを持っているという理由だけで事業部長や社長になり始めたのもこの時期だと思います。

残念ながら、この方針がうまくいっているという話は全く聞いたことがありません。

マーケティングやセールスは確かに重要ですが、それはあくまでも優れた製品があって始めて意味を持つのであって、どんなにマーケティングやセールスが強くても、駄目な製品は駄目だと。Apple社の成功は、本当のモノ作りが最後には勝つことを我々に教えてくれているように思います。

ちなみに完全に蛇足ですが、日本でよく言っているモノ作りがApple社のモノ作りと同じかどうかははなはだ疑問のところがあります。日本のモノ作りの基本は、品質の良く、機能が多いもの(スペックが高いもの)を安く販売することがキモです。これは新興国には可能な方法ですが、人件費が安くないと破綻してしまうため、成熟した国家ではなかなか難しい戦略です(日本の製造業が派遣社員に頼ってしまっているのは、このモデルにしがみついているためとも言えます)。これに対してApple社のモノ作りは、顧客の将来のニーズを先読みし、機能を絞り込んで、使いやすいものを、比較的高い価格で売ることです。同じモノ作りでも、アプローチは全く違います。

Mac vs PC growth.png
US retail.png
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オバマ大統領候補の演説

アメリカの大統領選挙が面白くて、ぼくはアメリカのメディアを通してインターネットで追いかけています。

オバマ氏が2008年10月17日に、Roanokeというバージニア州の中でも保守党が強い地域で行った演説がとても素晴らしかったので紹介したいと思います。

1961年生まれ、今年47歳になったばかり。若くて経験が浅いと一貫して指摘されてきたオバマ氏です。しかし、ジョン マケイン、ヒラリー クリントン氏などの強力なライバルと長く激しい選挙戦を戦っていくなかで、彼は明らかに成長してきました。最初は雄弁さと夢ばかりが強調された演説でしたが、今回の演説で夢を控えめにし、国民のニーズを捉え、具体的な政策を、説得力のある形で紹介するようになってきています。

日本国民には雄弁な演説というスタイルは一般的になじまないのかもしれません。しかし日本のいまの政治家は、それ以前の問題として国民のニーズすら理解できなくなっているように思います。その結果、重要法案とされているものは国民にとってどうでも良いものばかり。オバマ氏のように国民のニーズを汲み取り、国の方向性を示し、具体的な政策を雄弁に提案できる政治家がいれば、小泉人気など全く吹き飛んでいくほどの支持を国民から得られるのではないでしょうか。

ということで、そのオバマ氏の演説の中から僕が気に入った部分を取り上げていきたいと思います。

The credit crisis has left businesses large and small unable to get loans, which means they can’t buy new equipment, or hire new workers, or even make payroll for the workers they have. In households across the country, it’s getting harder and harder to get a loan for that new car or that startup-business or that college you’ve dreamed of attending. Wages are lower than they’ve been in nearly a decade. You’re paying more for everything from gas to groceries, but your paychecks have flat-lined.

金融危機によって大企業も小さい企業も融資が受けられなくなっています。その結果、新しい機器の購入ができず、新規に社員を採用することが出来ず、既存の社員の給料すら支払えない状況になっています。家庭においてはローンを組むことが困難になり、新車を買ったり、新しいビジネスを始めたり、夢に見た大学に進学したりすることができなくなっています。給料は10年間で最低の水準です。ガソリンから日用品まで価格は高騰しています。しかし給料はそのままです。

世界を揺るがしている金融危機は、かなり難解です。特にウォール街の危機が実体経済に与える影響がわかりにくく、どうして国民の税金で金融機関を援助しなければいけないのかが納得されづらいです。オバマ氏は、これをわかりやすい言葉で解説することをずっと心がけています。

一方で日本の政治家はこの金融危機を国民にしっかり説明することなく、行政の専門家が議会の事前承認を得ること無く公的資金を利用できる体制作りを先行させています。

The rescue plan that passed the Congress was a necessary first step to easing this credit crisis. It’s also important that we continue to work with governments around the globe to confront what is truly a global crisis. But now we need a rescue plan for the middle class. If we’re going to rebuild this economy from the bottom up, it has to start on Main Street – not just the big banks on Wall Street. That’s why I’ve outlined several steps that we have to take right now to help folks who are struggling.

First, we’ve got to act now to create good paying jobs. We’ve already lost three-quarters of a million jobs this year, and some experts say unemployment may rise to 8% by the end of next year. That’s why I’ve proposed a new American jobs tax credit for each new employee that companies hire here in the United States over the next two years. That’s how we’ll create good, new jobs here in Virginia and all across America.

先日議会を通過した金融の救済計画は、金融危機を解消するために必要な第一段階でした。この世界的な危機と対決するために、世界中の政府と協調して活動することも重要です。しかし今必要なのは、中流の人のための救済計画です。この国の経済をボトムアップで作り直すのなら、ウォール街の大銀行ではなく、皆さんが住んでいる街から始めないといけません。そこで、いま苦しんでいる国民のためにいくつかのステップを用意しています。

まず最初に、いまこそ給料の良い仕事の創出に取りかからないといけません。既に今年だけで75万の職が失われています。来年には失業率が8%になると言っている専門家もいます。これに対抗するために、アメリカで採用される新しい社員に対して、二年間、税品を軽減する措置を提案しました。こうやってバージニア州を初め、アメリカ中で良質の新しい仕事を作り出すのです。

金融危機に際して公的資金を投入し、国民に多大な負担を要求するわけですが、その国民はというと安い給料と高騰する生活費で貧窮しています。その国民を救済するメッセージを持っていない政治家なんて、本当はあり得ないはずです。

日本も過去に多額の公的資金を金融機関に注入しました。でもその間に国民の生活を豊かにする施策があったかというと、逆に国民生活を貧窮させ、金融機関を潤す超低金利政策、そして正社員採用を減らし企業を優遇する政策があっただけです。

If I am President, I will invest $15 billion a year in renewable sources of energy to create five million new, green jobs over the next decade – jobs that pay well and can’t be outsourced; jobs building solar panels and wind turbines and fuel-efficient cars; jobs that will help us end our dependence on oil from Middle East dictators.

私が大統領になったら、再利用可能なエネルギーの開発に$150億ドル(1.5兆円)を投資します。これによって環境関連の500万の仕事が創出されます。これらの仕事は給料が高く、アウトソーシングもされない仕事です。ソーラーパネルを作ったり、風力発電施設、低燃費自動車を作ったりする仕事です。この仕事によって、我々は中東の独裁者に頼らなくてすむようになるのです。

オバマ氏は、最高の経済対策は新しい仕事を生みだすことだと主張してきました。特に企業が仕事を海外にアウトソーシングしている現状を放置できないと繰り返しています。そこで海外にアウトソーシングできないような高い技術力を要する仕事をいかにして生み出すかについて、その戦略を明確にしています。

オバマ氏は新しい時代のアメリカを支えるべき新しい産業を予見し、そこで必要となる技術力の高い仕事の創出をしていく戦略を思い描いています。

一方の麻生政権はというと、彼らの景気対策は何十年前と同じ、減税と道路などの公共建設事業しか考えません。お金をばらまくことによって、市場がなんとか解答を見いだしてくれるだろうという考え方です。どちらかというと高度経済成長の日本を支えた輸出産業とゼネコンを支える政策です。その一方で将来の日本で最も重要になってくる産業、例えば高齢者福祉産業の惨状は放置したままです。省エネルギー技術など、日本が国連から最も期待されている役割にだって積極投資するわけではありません。

And we’ll give every child, everywhere the skills and the knowledge they need to compete with any worker, anywhere in the world. I will not allow countries to out-teach us today so they can out-compete us tomorrow. It is time to provide every American with a world-class education. That means investing in early childhood education. That means recruiting an army of new teachers, and paying them better, and giving them more support in exchange for higher standards and more accountability.

そして我々はアメリカの子供に、世界のどの労働者にも負けない技術と知識を与えます。アメリカの今日の教育が他国に劣っているがために、将来の我々の労働者が他国に競り負ける状況は許しません。すべてのアメリカ人が世界トップレベルの教育を受けなければ手遅れです。このためには幼少からの教育に投資しなければいけません。新しい先生たちを採用して、より高い給料を支払い、より多くのサポートを与えなければいけません。その代わりに先生たちにはより高い水準を要求し、成果に対してより責任を持ってもらわなければなりません。

グローバリゼーションおよび途上国の経済発展によって、アメリカを初めとする先進国が享受してきた豊かさが失われていくことが危惧されています。企業は途上国の安い労働力を求めて、次から次へと仕事をアウトソーシングします。あるいは海外での生産にシフトします。その結果、先進国の労働者は途上国の労働者と直接競争することになり、給料がどんどん安くなったり、仕事を失ったりしてしまいます。これに対抗する手段は、自国の労働者の能力水準を高め、途上国の労働者には簡単に置き換えられないようにすることしかありません。

日本のワーキングプア問題はまさにここにあります。日本の労働者の賃金水準が上がらない理由、日本企業が派遣という形で安い使い捨ての労働者を集めている理由は、途上国の安い労働との競争です。日本の労働者は途上国の安い労働者との価格競争にさらされ、そして一生懸命働いているにもかかわらず、貧しくなってしまっているのです。

一方で日本の教育水準は下降の一途をたどっています。ゆとり教育が悪者にされていますが、日本の教育に対する投資が先進国で最低だということの方がよっぽど問題でしょう。教員採用試験の異常な倍率を見ても、金銭的な投資をすればすぐに優秀な人材が採用できることは明らかです。ワーキングプア問題の根本的な解決策として、そして日本が将来にわたっても豊かな生活ができるための土台として、いまこそ教育への投資を積極的に行うときでしょう。

まとめ

世界競争力ランキングで日本がまたランキングを下げたことが先日報じられました。アジアでも日本は一番ではなく、シンガポールに遅れをとっています。

日本の技術の革新性、科学者・技術者の能力の高さはまだ高く評価されています。その一方で政治が大きく足を引っ張っています。プロ野球の楽天ゴールデンイーグルズの野村監督が繰り返し述べている言葉に「組織はリーダーの力量以上には伸びない」がありますが、日本もそろそろ付けが回ってくる頃です。

「日本にもオバマ氏のような立派な政治家が現れないかなぁ〜」

そんな思いで今日もアメリカの大統領選挙を、アメリカ人以上にじっくりとフォローしてしまいました。

抗体検索, バイオの買物.comの広告のコンセプト その1

グーグルのネット広告が堅調で、不景気にも関わらず7-9月期決算で売上31%増、利益が26%増の増収増益であったことが報じられました(asahi.com)。

どうしてでしょうか。

サブプライム問題に端を発した金融不安は消費者の購買意欲にも大きな影響を与えており、自動車メーカーなどでは対米販売が数十%低下するという異常事態になっています。これほど極端ではないにせよ、他の製品も落ち込んでいます。この極めてネガティブな状況にも関わらず、グーグルのネット広告が好調なのはなぜでしょう。

僕がマーケティング部門に入って始めての頃、当時の外国人の上司は、modern advertisingの父と呼ばれている John Wanamaker の有名な言葉を紹介してくれました。

“Half the money I spend on advertising is wasted; the trouble is I don’t know which half.” (私が使っている広告費の半分は無駄だっているのはわかっている。問題は、どの半分が無駄かがわからないことだ)

グーグルのネット広告システムはこのJohn Wanamakerの悩みに対して、非常に優れたソリューションを提供しているように思います。

グーグルはAdwordsという広告システムを提供していますが、これを利用する広告主は、1) この広告が何回表示されたか、2) この広告をクリックした人が何人いたか、3) この広告をクリックして広告主のウェブサイトを訪問した顧客はどれぐらい興味を持っていたか、4) この広告をクリックした顧客は実際に購入してくれたか、を知ることができます。

このためには広告を表示するだけでなく、その広告をクリックした顧客の行動を追跡するための様々な解析ツールも提供しています。

広告主は広告の文言をリアルタイムで変更できるのはもちろんのこと、広告がどういうときに表示されるかもコントロールできます。解析ツールから得られる分析結果を見ながら、広告の出し方を少しずつ帰ることができます。こうやって、どのような広告をどのようなときに表示すればどれぐらい効果があるかを知ることができます。John Wanamakerの悩みは有効な広告と無駄な広告が見分けられないということでした。グーグルのシステムを利用すれば、この見分けが簡単につくのです。

有効な広告と無駄な広告の見分けがつくということは、不況のときこそ重要になります。

以前にこのブログでイギリスのインターネット広告について書いたときも、インターネット広告ではお金がどこに使われているかが正確に把握できるため、予算削減の対象になりにくいと紹介しました。

さてバイオの買物.comの広告はどうでしょうか?

バイオの買物.comでは、抗体検索に連動して、スポンサーの抗体を優先的に表示する仕組みを作っています。例えば“CD4″で検索をすると、まず最初にスポンサーのBioLegend社とMillipore社の抗体が表示されます。そしてここに表示されている抗体だけで不十分であれば、ワンクリックでBioCompareにアクセスして、同じ条件でBioCompareのデータベースから抗体を探すことができます。

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この広告システムは様々な点でグーグルを真似ています。

完全な成果報酬型

まず、この広告システムは完全な成功報酬型です。セットアップ費用も月額の固定料金もありません。表示される抗体をクリック(下図の製品名のリンクをクリック)して、広告主のウェブサイトに飛ぶときに始めて費用が発生します。いわゆるCost-Per-Clickのモデルで、グーグルの仕組みと同じです。実際の広告の効果に応じて費用が発生しますので、無駄な広告費が発生しにくい仕組みです。

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クリック数のレポート

クリック数のレポートは下図のようになっています。

一番左の列は年月日、その右が課金対象のクリック数です。そして左から3列目はセッション数です。セッションというのは訪問者数とほぼ同じで、一人の訪問者が複数回クリックすることがありますので、クリック数>セッション数になります。また自動的にCost-Per-Clickで料金を計算したのが右から2列目になります。Cost-Per-Clickは従量的に単価が安くなります。ここで表示している例ではクリック数が少ないので単価が高いのですが、クリック数が多くなると最初と比べて約1/3のCost-Per-Clickにまで下がります。一番右の列は、最後のクリックがあった時間です。多くの研究者は実験が終わって、夜に試薬のリサーチをしているようで、かなり遅い時間でも大学からクリックが発生したりします。

なお、無駄なクリックに対してはなるべく課金しないようにするために、休日,祝日のクリックは課金しないようにしています。

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ユーザについてのレポート

クリックしてくれた顧客がどのような顧客だったのか、何に興味を持っていたのかを知ってもらうためのレポートも用意しています。顧客がどこから来たか、具体的に何を探していたのかを知ることができますので、無駄な広告費用を支払っていないという安心感があります。

なお、例えば自社からのアクセスでクリックが発生したり、競合他社からのアクセスでクリックが発生した場合はこれを報酬から除外するようにしています。こんなクリックにお金を支払うのは頭に来ますよね。

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今後の方向性

バイオの買物.comでは引き続き完全報酬型の広告システムを採用します。Cost-Per-Clickの他に、画面に表示された回数に応じて課金するCost-Per-Impressionというシステムも採用するかもしれません。

それ以上に大切に考えているのは、ユーザについてのレポートです。多くの広告は「やりっ放し」になりやすいのですが、本来、広告というのはもっとインタラクティブになる可能性を秘めていると考えています。

広告に対する感受性を見ることによって、広告主は顧客のニーズを理解することができます。抗体であればどのような抗原にニーズがシフトしているか、どのような標識が人気があるか。また複数のスポンサーが表示されたときにどのメーカーがクリックされるかを見ることによって、どのメーカーが高いブランド力を持っているかを分析できます。

そういったことがしやすいようにレポートをだんだんと充実させ、John Wanamakerの悩みを解決するだけでなく、それ以上のレベルのマーケティングツールとして活用できるような仕組みを提供していきたいと考えています。

そろそろ復活

気がついたら最後にブログを書いてから1月以上も経ってしまいました。

この間は「バイオの買物.com」の抗体検索でスポンサーを募るための準備、それと妻の体調が優れないので1歳半の娘の世話に明け暮れていました。

紹介したいことは山ほどあります。特に私が用意している抗体検索スポンサーのコンセプトは、広告に対する考え方はもちろん、経営に対する考え方、マーケティングに対する考え方、インセンティブに対する考え方など、僕のものの考え方をかなり集約させたものになっています。

もうしばらくお待ちください。