チームワークについて(本当に大切だと思うのなら経営者は実践しろ!)

「ワールドカップサッカーで日本が決勝トーナメントに進出できたのはチームワークのおかげ」としているtweetを多く見かけます。

直接は関係ないのですが、僕がいままでいた会社で見てきた??なチームワークを紹介し、「チームワークって言うのは簡単、行うは難し」「チームワークって言いながら、もう片方で個人プレイを推奨していないか?」についての僕の考えを述べたいと思います。

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マーケットリサーチについて思うこと

アップル社のスティーブジョブズはアップルではマーケットリサーチはやらないと断言しています(“Steve Jobs speaks out” Fortune 2008)。

自動車のフォード社を設立したヘンリーフォードは「顧客に何が欲しいかって聞いたら、きっと『もっと速い馬』って答えただろう」と語ったと言われています。

顧客が欲しがっているものを調査してもイノベーションは生まれません。普通にマーケットリサーチをしても生まれません。こんなことをしても、顧客の表面的なニーズが分かるだけというのがほとんどです。イノベーションのために大切なのは、顧客が抱えている問題点、ニーズ(顕在化しているものも、顕在化していないものも)を深いレベルで理解することです。

先日ライフサイエンス研究試薬メーカーの方とお話をして、このことを思い出しました。

そのメーカーの方が言うには、自社で研究者のウェブ利用調査をしたそうです。そしてその結論の一つとして、バイオの買物.comを含めた製品ポータルサイトは利用しないし利用する気もないということだったらしいです。Googleを使って製品を検索する場合でも、検索結果のURLを見て、メーカーの純正サイトを選ぶとのことでした。私がバイオの買物.comを運営していることはもちろんご存知でしたので、とても申し訳なさそうな言い方をしていました。

しかし申し訳ないことは何もないのです。そのメーカーが行ったウェブ利用調査の結果は全く予想通りですし、私も同じように感じています。私の目指していることはこの状況を変えることであって、すでに多くの研究者が製品ポータルを利用しているのであれば、私がいまさら新たにやることはないとも言えます。

少なくとも私が4月に公開した「まとめてカタログ」以外の既存の製品ポータルサイトはハッキリ言って全く不十分です。このことについて私はこのブログで何回か言及しています。a) 網羅的ではない(重要なメーカーが抜けている) b) カテゴリー分けがされていない c) ほとんど価格が掲載されていない など、どれも重大な欠点を抱えていて、研究者が信頼して使うには至っていないのです。そんな状況ですので、マーケットリサーチをやったときに「ポータルサイトは使わない」という結果になるのは当然なのです。願わくば「まとめてカタログ」が研究者にとっては有用で、いままでの考え方を変えさせるものであればうれしく思います。

イノベーション、少なくとも破壊的なイノベーションというのは技術力云々の問題ではなく、顕在化していなかったニーズを如何に満たすかということです。顧客が夢の中でこそ想像はしていても、現実になることを期待していなかった製品を世に出すことです。マーケットリサーチというのは顕在化しているニーズを知るには有効な方法ですが、顕在化していないニーズを拾うことはなかなかできません。だからイノベーションはマーケットリサーチからは生まれないのです。

「まとめてカタログ」が目指しているものは理想の形としてほとんどの研究者の頭にあると思います。研究にマッチした製品を、メーカーを問わず簡単に探せるウェブサイトがあれば、それは便利に決まっています。しかしライフサイエンスという製品数がめちゃくちゃに多く、市場規模も決して大きくない市場で、そこまでの労力を投じる会社なんてあるはずがない。そう思ってしまうとそのニーズは諦められ、顕在化しなくなります。だから「ポータルサイトは使わない」という調査結果になるのです。

iPadが市場に投入される前にも「タブレットPC」は発売されていて、マイクロソフト社などは10年前から売り続けています。でもビルゲイツの期待に反して、大して売れていません。もしiPad発表以前に「タブレット型PCは欲しいですか?」というマーケットリサーチをしたとしたら、ほとんどの人は「いらない」と答えたでしょう。でも実際にiPadが発売されると、バカ売れしました。iPadは既存の「タブレットPC」の概念を書き換えたからです。

同様に「まとめてカタログ」では、ライフサイエンス研究製品ポータルサイトの概念を書き換えたいと思っています。だからマーケットリサーチの結果はあまり気になりません。研究者を長く経験した自分の感覚を信じ、自分の問題解決能力をフル回転させ、多くの人が諦めてしまったようなサイトを現実化するのが私の目標です。

そんな気持ちを強く持ち、がんばり続けたいと思っています。

ライフサイエンスの受託サイービスについて思うこと(ビジネス視点)


アップデート
私は5年前に、ビジネスについてまだまだ知識不足だったときに下記の考えに至った訳ですが、調べてみると経営者なら誰でも読んでいる(と思っていた)ポーターはファイブフォース分析でこの問題を口酸っぱく言っているんですよね。その後もビジネスにいろいろ関わりましたが、ファイブフォース分析をしている人ってまず見たことがありません。「経営を学んだと言っている人は、実際、いったい何を学んできたのだろうか」と真剣に不思議に思いました。いまでもそう思っています。

どこからが新しい受託サービスを始めたということで、今朝チラチラとそのホームページを見ていました。そうしたら5年ぐらい前のことがdéjà vuのようによみがえってきたので、ここに書き留めます。

過当競争

誰しもが分かっていることだと思いますが、研究者向け受託サービスの業界は過当競争です。過当競争が起こる原因は単純です。

  1. 会社設立に十分な資金が集めやすい: 国家の研究開発ベンチャー支援とか、あるいはバイオと言えばお金が集まるというブームのおかげ等で、小規模のバイオ関連企業を立ち上げることが簡単でした。
  2. 技術が立ち上げやすい: 例えば受託のDNAシークエンスサービスの大半は、ABIなどの製品を使い、それにちょっとしたノウハウを加えることによって実現が可能です。また抗体作成にしても、そういう仕事をたくさんやっている研究室は多いし、そこの技術をもってくれば基本的に問題なしです。一部少数の人だけが持っている技術というのは特に必要なく、社内で研究開発を重ねる必要もなく、技術的にはかなり立ち上げやすいものです。
  3. 労働力が安い: 大学や公立の研究機関の給料はバカ安いので、一流研究室で腕を磨いてきたテクニシャンが年間300万円程度でも雇えてしまいます。

こういうことの結果として、研究者向け受託サービスは参入障壁がすごく低くなっています。その気になれば、かなり多くの人が立ち上げられる程度の難易度です。

参入障壁が低ければ、大小を問わずたくさんの企業が参入してきます。大企業はある程度の利益が出ないと撤退する傾向がありますが、小さい企業の場合は赤字ぎりぎり(あるいは赤字のまま)でもその市場から逃げません。競争はかなり激しくなります。

競争があっても、差別化戦略があれば価格競争に飲み込まれずに利益を確保し続ける企業が出てきます。しかし先ほどの2項目目に書きましたように、受託サービスの技術の肝はほとんどがABIなどのメーカーが握っているのです。DNAアレイ受託であればAffymetrixという感じです。受託サービスを実施している企業が提供している付加価値は、全体のバリューの中ではあまり大きな位置を占めないのです。ですから差別化戦略はかなり困難で、結果として価格競争しか方法がなくなります。

研究者が受託サービスに頼む理由

そもそも研究者が受託サービスに頼む理由を考えてみるのも大切です。

  1. 実験のための設備が高価。しかも共同研究先等で貸してくれそうなところもない。
  2. その実験を行うためのノウハウが自分にはない。共同研究先も機械は貸してくれるけど、実験まではやってくれない。
  3. 受託サービスの方が安い

比較的裕福な研究室であれば、通常は実績もたくさん出しているし、共同研究先を探すのに大きな苦労はないと考えられます。したがって1)という問題には当たりませんし、2)というのも大丈夫そうです。つまりお金持ちの研究室が受託サービスをお願いする理由は主に3)になります。ただし例外は医学部等です。医学部では研究実績とは別に、お金で研究成果を買うという側面があります。

結論として、お金がある有名研究室というのは一般に高価な受託サービスを頼むことが少ないと考えられます。ですから受託サービスは限られた予算しかない研究者を相手に商売をすることになります。悪い言い方ですが貧乏人相手の商売ですので、必然的に価格競争になる訳です。

ただしDNAシーケンスやオリゴDNAのように、スケールメリット等の影響で受託に出した方が、ランニングコストだけ見ても安いというケースもあります。こういったサービスならお金持ち研究室でもどんどん使うでしょう。

医薬開発受託サービス (CRO)の場合

研究用の受託サービスの場合は、このように産業構造上、価格競争になる宿命にあると私は当時は思いましたし、いまも根本的な差はないと感じています。その一方で同じ研究用受託サービスとはいえ、医薬開発向けの受託サービスの場合は大きく事情が異なります。

まず、差別化が可能だという点です。基礎研究向けの受託サービスの場合、どのメーカーのどの機器を使うかが肝で、実験の腕や企業ノウハウそのものは大きな差別化ポイントにはならないと私は先程述べました。しかし医薬開発用受託サービスの場合は、企業ノウハウとその企業の信頼性が大きな差別化ポイントになります。

医薬開発受託サービスで得られたデータはそのまま新薬申請のデータになったりしますし、何十億円、何百億円の臨床開発を継続するかどうかの判断に使用されます。また新薬は年間何百何千億円という売上げを残すことが期待されていますので、研究開発の遅れ、つまり市場投入の遅れによる損失は、一日あたり億円単位に上ります。また使用しているサンプルもかなりのコストをかけて集めてきた臨床サンプルだったりします。たとえ無料で受託サービスをやってくれるという会社があっても、信用できなければ製薬企業はそこには頼まないでしょう。

ですから医薬開発受託サービスは利益が出ます。新規参入しようと思っても、そう簡単にはできません。産業構造上そうなっているのです。

教訓

私は基礎研究向けの受託サービスをしばらくやって、結果としてうまくいかなかった経験をしています。そして上に書いたことを思った訳です。結果として得た教訓は次の通りです。

簡単なことに手を出すな。難しいことをしろ。
他人がやらないこと、やれないことをやれ。

簡単なことは他人にとっても簡単です。ですから先行者利益がある間は良いけれども、すぐに儲からなくなります。価格競争の飲まれて、つらい思いをするだけです。

そうではなく、他人がやらないこと、やれないことをやらないといけません。自分だけができて他人ができないこと。ただ人間は生まれながら基本的に平等なので、自分しかできないことを実現するためには他人がやらない努力を積み重ねるしかありません。

そういうのを意識しながらバイオの買物.comをやっています。

iPhone4 vs. Android の話

AppleInsiderにiPhone 4 and iOS vs. Android: hardware featuresという記事が投稿されました。

ちまたにあるような薄っぺらな評論や比較の記事ではなく、ハイテク業界の本質に踏み込んだ議論をしていますのでとてもお勧めです。

以下、僕が面白いと感じた視点を紹介します。

Overall however, this idea that “platform openness” automatically results in better hardware features has only been proven to give Android a temporary advantage that is now lost with the introduction of iPhone 4, which significantly outpaces top Android phones not only in interface polish and usability, but also in hardware specifications, the very thing the Android ecosystem is supposed to excel at.

「オープン」にした方がハードウェアのイノベーションが起こりやすい、というのは幻想だと結論しています。iPhone4のハードウェアを見ていると、それは確かに間違い無さそうです。

The idea that an open platform should drive hardware innovation was not borne out in the PC arena. Specific PC models have often offered better graphics options and sometimes introduced faster processors quicker than Apple’s Macs, for example, but Macs have long offered higher quality components, better industrial design, and often introduced or popularized new features first (such as USB, FireWire, Gigabit Ethernet, optical digital audio, sudden motion sensors, backlit keyboards, DisplayPort, and so on).

Recently, the intense competition among PC makers has resulted in efforts directed primarily at achieving lower prices (achieved by cutting hardware corners or using old technology), resulting in the short term boom among netbooks. Apple has kept the bar high among Macs, resulting in better quality at a higher price. Rather than pricing itself out of the market, this has resulted in Apple’s Mac sales outpacing the grown of the global PC market by a factor of around 4x. In smartphones however, Apple is maintaining a quality edge at an equal or lower price, thanks to the economies of scale the company enjoys due to its sales of tens of millions of iPods.

ハードウェアの競争の結果、何が起こったか。ネットブックの例を出して紹介しています。イノベーションが起こったのではなく、価格競争が起き、ハードウェアの品質が下がったというのです。一方でiPhoneやiPodにおいて、Appleはスケールメリットを生かし、同等かより安い値段で高品質の製品を売ることができている。

何を学び取るか

まず僕らは「オープン」だとか「自由競争」がイノベーションを育み、市場原理の結果としてより良い製品をより安い価格で提供されるようになると考えがちです。考えがちというか、ずっとそういう教育を子供の頃から受けているし、社会的な強者は多くの場合受験戦争を勝ち抜いてきた人でもありますし、どちらかというと競争を盲目的に受け入れがちです。

だから市場の活性化には規制の撤廃こそが重要だという考え方を自然に受け入れてしまったりします。でも世の中をしっかり見てみると、必ずしもそうではないのです。AppleのiPhoneはその一例でしかありません。

GoogleのAndroidが最後には勝つ。クローズドなiPhoneがいつまでも勝ち続けるはずはない。そう思っている人も多いはずです。確かにPCの世界ではそんな感じになりました。でもスマートフォンでも同じ結果になるという根拠は見つかりません。「オープン」を盲目的に信じていなければ。

垂直統合がやりやすくなって来た世の中

Apple、特にiPhoneとiPadは垂直統合がすごいです。「オープン」論者は、垂直統合はいつまでも継続できるはずはなく、いずれは水平統合型ビジネスに軍配が上がると信じています。そしてその傾向というのは確かにあります。

しかしよく考えてみると、低コストで垂直統合を実現しやすい世の中にもなってきている気がします。

例えばAppleは半導体から末端商品の販売も手がけていますが、製造そのものはしていないのです。半導体の製造もiPhoneのアセンブリも、Appleがやるのではなくて中国や台湾などの工場に委託しています。そのため自分たちの工場に大きな投資をする必要がありません。低リスクで「自社製品の製造」ができるのです。

A4のCPUにしても、ゼロからAppleが設計しているのではなく、ARMのオープンなデザインを改変しています。ソフトウェアにしても、OSのベースとなるBSD Unixはオープンソースのものです。Safariを動かしているWebKitエンジンも、オープンソースのプログラムを導入して改変を加えた結果です。

いまの時代は、大きな先行投資をしなくても製造だとかハードの設計、ソフト開発がスタートできます。昔はこういうのが大変でしたので、投資した分を回収するためには自社のものだけでなく、他社の注文も受けないと行けませんでした。つまり水平統合型ビジネスをしないといけませんでした。しかしいまでは多くのビジネスにおいて、必要な投資が大幅に減っています。ですから垂直統合がしやすいのです。

こういう世の中なので、「オープン」や「自由競争」を礼賛しがちな古い頭をリセットして、「クローズド」や「垂直統合」、「限定的な競争」の良さを再考する必要があるのでしょう。そう強く感じます。