Netscape創設者Marc Andreessen イノベーションについて

Netscape創設者の一人でインターネットブラウザの普及に決定的に大きく貢献したMarc Andreessen氏は、現在ベンチャーキャピタルの運営をしていますが、全く新しいスタイルのブラウザ、RockMelt Browserの開発会社に何億円相当ものを投資をしているそうです。

僕はTwitterは使うけどFacebookはほとんど使っていませんので、これが成功するかどうかについて語る立場には全くありませんが、Seattle Timesの記事に書かれていたAndreessen氏の言葉が非常に気に入りました。

Andreessen is convinced Internet Explorer’s lead remains vulnerable, even after more than a decade of domination and repeated upgrades.

“I don’t believe in mature markets,” he said. “I think markets are only mature when there is a lack of innovative products.”

「成熟したマーケットというのが存在しないと思っています。イノベーティブな製品がなくなるとマーケットが成熟するだけだと思います。」

product life cycle.pngマーケットが成熟したかどうかは単純にはその成長率で計ります。そして一般的な考え方ではどんな市場も次第に成熟していき、イノベーションが起こらなくなり、成長がとまり、そして価格競争等で利益が出なくなり、最後には衰退していくとしています。そしてこれを必然的なことと考えています。

ライフサイクルは必然的に進行し、その結果としていつかイノベーションが起こらなくなり、そして市場が成熟化するというのは、マーケティング等のテキストブックによく出てくるプロダクトライフサイクルの考えです。しかしAndreessen氏は因果関係が逆だと言っています。単に何らかの理由(独占・寡占による怠慢?)でイノベーションが停滞し、その結果としてマーケットが成熟するだけだとしています。マーケットの成熟ステージに関わらず、探しさえすれば常にイノベーションのチャンスは常にどこかにあり、その努力をしなくなってしまった結果がマーケットの成熟化だという考え方です。

DigitalHub.jpg2000年頃のパソコン市場は成熟化し、衰退に向かっていくマーケットだと考えられていました。インターネットの普及によって一気に盛り上がったパソコン市場ですが、2000年頃にはもうパソコンはおしまいだという論調が大勢を占めました。その代わりユビキタスコンピューティング等がもてはやされ、いずれパソコンがなくてもPalmなどのデバイスで十分だと考える評論家がほとんどでした。その結果としてパソコンメーカーは価格以外に攻め手がなくなり、価格競争が激化しているとされました。そのときにAppleのSteve Jobs氏はキーノートスピーチの中でDigital Hub戦略を発表し、パソコン市場は成熟してしまったのではなく、むしろこれからが第三の黄金時代(Digital Lifestyleの時代)を迎えると主張しました。そしてiTunes、iMovie、iPhotoなどを発表し、そしてiPodも発売しました。この戦略が見事にはまったのは、もう皆さんもご存知の通りです。

NewImage.jpgバイオの世界について言えば、2005年頃のDNAシークエンサーが成熟市場と言われていました。ゲノム解読の熱がいったん冷め、そしてキャピラリー電気泳動によるSanger法も完全に成熟した技術になりつつありました。僕も当時、アプライドバイオシステムズ社に転職するかどうかを考えてたりしていましたので面接を何回か受けましたが、話題は「あなたならうちのシークエンスビジネスをどうやって停滞から抜け出させるか」と言ったたぐいのことばかりでした。

しかし2005年秋に454 Life Sciences社が売り出したGenome Sequencer 20によって展開はがらりと変わりました。次世代シークエンサーの開発競争が白熱化し、半導体におけるMoores Lawを遥かにしのぐ勢いで一気にイノベーションが活発化しています。成熟してしまったと思われていた市場が、一気にバイオサイエンス全体のイノベーションドライバーになりつつあるのです。

僕がメーカーで主にマーケティングを担当していたのは、主に成熟期から衰退期と言われた製品でした(454 Life SciencesのGenome Sequencer 20も短期間担当しましたが)。でも上記の事例を見ていたので、絶対に成熟し切った訳ではないはずだと信じていました。今でも強くそう思っていますし、Marc Andreessen氏の言う通り「成熟したマーケットは存在しない」と思っています。ただ何かのイノベーションが必要です。イノベーション無しではマーケットは成熟してしまいます。

バイオの買物.comはライフサイエンス製品のイノベーションの活発化を強く望んでいます。それも次世代シークエンサーのような話題を集めるけれどもユーザが少ない大型機器だけではなく、PCR酵素、クローニング酵素、細胞培養用試薬など、どっちかというと成熟したと考えられるけれども、一方で非常に多くの利用者がいる製品分野でのイノベーションです。まず製品購入の意思決定にイノベーションをもたらし、研究者とメーカーの距離を縮め、製品のイノベーションが起こりやすい環境を作れないか。そんな形で貢献できたらいいなと思っています。

バイオのウェブサイトのビジターあたり売上げはどんなもんだろうか

以前に「ウェブサイトへのアクセスと売上げの関係」のブログ記事を書きましたが、そこで僕が出した結論は、試薬メーカーのウェブ訪問者数と売上げが驚くほどに相関しているということでした。

もちろん相関があるという言っているだけで、因果関係があるかどうかは全く別です。ウェブ訪問者数と売上げがよく相関していると言っても、ウェブサイトに訪問したから売上げが増えている側面はあるでしょうが、同時に製品が良く売れているからウェブサイトの人気があるという側面もあります。恐らくはこの2つの側面が両方ともに絡み合っていて、その結果としてこのような良い相関が見られるのだと思います。

webvisitors vs revenue.png

さてこのグラフを見ると、ビジターあたりの売上げを計算することができます。このグラフを見ると、大雑把に年間100億円のあるメーカーは60,000ユニークビジター/月があると言えそうです(これはビジターの効果を一番低く見積もった線ですが)。この数値を使うと {100億円 / 12 (月間売上げ)} / 60,000 (ユニークビジター) = 1.38 万円/ユニークビジター になります。つまり、月間ユニークビジターあたり1.38万円の売上があることになります。

ビジターあたり1.38万円の売上ってすごいですよね?

なんだかとても高い数字です。ライフサイエンス研究支援の試薬の単価が高く、低く見積もっても一品が平均2万円ぐらいだというのは確かにあります。またウェブを見ないで製品を購入しているケースもそれなりにあるはずです(繰り返し同じものを買うとき等)。

ビジター数についてもちょっと考えてみたいと思います。例えば年間で20億円の売上を出している中堅メーカーであり、平均単価が2万円だとすると、年間で10万製品を出荷していることになります。毎月8,300製品を出荷していることになります。先ほどの相関ですと年間20億の売上げのメーカーのウェブサイトは毎月12,000のユニークビジターがいることになりますので、ウェブサイトのユニークビジター数と出荷製品数はだいたい同じ程度と言うことになります。この数字だけでは因果関係が出てきませんのではっきりしたことは言い難いのですが、製品の購入とウェブサイトへのアクセスはやはりかなり関係がありそうな雰囲気です。

なお毎月8,300製品の出荷というのはかなり少なく、平均的なコンビニに大きく負けています。コンビニの顧客単価は¥600弱らしいので、平均日販を60万円とすると毎日1,000人、月間で30,000人に物を売っていることになります。同じ土俵で語ることではないのですが、いまだにメーカーと代理店が注文伝票をFAXでやり取りしていられるのも(そう、電子化されていないのがまだほとんどです)、そもそも取り扱っている数が少ないからです。

いまのところバイオの買物.comを経由して、毎月数千のビジターがメーカーのウェブサイトを訪問しています。仮に5,000のビジターを誘導していると計算し、先ほどの1.38万円をかけ算すると、バイオの買物.comで月間6,900万円の売上貢献をしていることになります。ものすごい我田引水的な計算で恐縮ですが。

まぁ実際のところ、まだその1/100も稼いでいないのですが、将来的にちゃんとしたビジネスが構築できるのではないかという勇気がわいてくる計算です。

ちなみに最近のインターネットで話題になっているSNSのMixiやGREEやモバゲー。これらは様々な形で収入を得ていますが、会員あたりの月間売上げは¥63-¥256のようです。なんだか1会員あたり1,000PVしているという計算になっているのですが、これもすごいですね。同じインターネットでの商売だし、何かのインスピレーションにならないかなと思ったりもするのですが、やっぱりバイオの買物.comがやろうとしていることとはとても比較できないと痛感します。アクセス数はもちろん何桁も違いますが、アクセスあたりの価値もライフサイエンスの場合は桁違いに大きい気がします。