2011年12月の分子生物学会で発表してきました

2011年12月の分子生物学会で発表してきました。

講演を聴きに来てくださった方、ポスターを見に来てくださった方、要旨だけを見た方、皆さんありがとうございました。

スライドはバイオの買物.comの公式ブログに掲載しています。

朝日新聞「アサヒコム」終了、「有料版」に一本化のニュースを受けて

J-Castニュースに『朝日新聞「アサヒコム」終了、来年初めに「有料版」に一本化有力』という記事が掲載されました。(興味深いことにJ-Cast自身は「1.5時情報」というコンセプトのニュースサイトで、基本的には自社で取材はせず、新聞などをベースにコメントを追加するサイトのようです。)

さて、無料の「アサヒコム」を終了することによって購読者数がどうなるか、今後存続していけるのかどうかという様々な憶測がウェブで流れていますが、僕は僕なりの考えを紹介します。

  1. 新聞が提供する情報は民主主義に不可欠だった: 民主主義が成功するための前提条件として、民衆が世間の情勢を知らなくてはなりません。正しい情報を持たない人が、リーダーを選ぶ際に正しい判断ができるはずもないからです。したがって新聞が存続できるかどうか、あるいは同等の役割を果たすメディアが出てくるかどうかは民主主義のためにはとても重要な問題です。Steve Jobs氏もAll Things DigitalのD8のインタービューでまさにこのことに言及しています。
  2. 取材などのニュース収集は広告収入だけで可能か: 広告収入だけに頼ってニュースを配信する試みは別に新しいことではなく、テレビの民放がずっとやってきたビジネスモデルです。残念ながらそのクオリティーは下がる一方で、近年ではまさに目を覆いたくなるような報道番組ばかりになってしまっています。もちろん新聞の取材力も高いとは言えません。しかしテレビの報道はそれよりも格段にひどい状況です。少なくとも民放テレビという過去の例で見る限り、広告収入に頼った報道に民主主義の未来を託す気にはなれません。
  3. ネットの情報は無料が多いのは、情報に価値が無いからではない。: スマートフォンを使っている人は、毎月6-7千円を支払っています。光ファイバーでインターネットに接続している人は毎月おおよそ5千円を支払っています。テレビ(衛生を含む)を持っている世帯は、毎月NHKに3千円支払っています。こう見ると、我々は情報を得たり、コミュニケーションするためのハードウェアやネットワークに毎月かなり多くのお金を支払っています。ハードにこれだけのお金を払いつつ、コンテンツが無料であることを期待するのはあべこべな話です。インターネットに接続したときに我々が欲しいのは情報であって、情報がなければインターネットに接続する価値はありません。我々はハードが欲しいのではなく、ソフトが欲しいのです。だから情報にも毎月数千円のお金を支払う状態こそがバランスのとれたものであるともいえます。
  4. ネットは課金システムが未熟: Steve Jobs氏の巨大な業績の一つはiTunes Music Storeです。当時Napsterなどの違法音楽ダウンロードサイトが隆盛を極め、音楽レーベルは戦々恐々としていました。そのときSteve Jobs氏は違法音楽ダウンロードサイトが使われるのは、利用者がみんな無料で音楽を手に入れたいからではないことを見抜きました。問題なのは利用者が音楽にお金を払いたくないからではなく、売る仕組みがないからだと考えました。だからiTunes Music Storeを作って、音楽のデジタル版が適正な金額で簡単に入手できる仕組みを築き、爆発的な成功を収めたのです。Steve Jobs氏は新聞でもiTunes Music Storeと同じことをやるべく、iPadでNewsstandを提供しています。まだ成功と言える状態ではありませんが、Steve Jobs氏の着眼は一貫しています。僕もインターネットは課金システムが未熟だと考えています。

以上の理由から、僕は朝日新聞の判断を応援します(朝日デジタルも購読しています)。非常に難しい局面であり、試行錯誤しながら何とか乗り越えてもらいたいと思っています。

ただし本当に必要なのは、報道のイノベーションです。印刷や配達が不必要になり、参入障壁がなくなった分、本来ならば新しい一次報道のメディアが参入してきてもおかしくありません。ただ既存企業が無料だと、low-endからの破壊的イノベーションは困難です。既存の新聞がネット版を有料化することによって、ようやくそのチャンスが巡ってきたかもしれません。

ソーシャルな要旨集システム:素案

先日書いた学会要旨集システム(学会の要旨集システムをゼロから考え直そう)について、少しずつ考えをまとめています。

今のところこんな感じ。

後でまた詰めていきますが、現時点で何か意見があれば、とてもありがたいです。

要旨集システム原案

Firefoxの功績を考える:FirefoxはなぜGoogleから10億ドルがもらえるのか

Images先週GoogleとFirefoxはパートナーシップを更新し、Googleから3年間で10億ドル(800億円弱)が支払われることになったと報じられました。

Chrome Engineer: Firefox Is A Partner, Not A Competitor

Firefoxは今までもGoogleとのパートナーシップが主な収入源で、実に84%に相当していました。この資金の見返りとしてFirefoxのデフォルトの検索エンジンはGoogleとなり、Googleに広告収入が入るのをFirefoxが手助けするという形になります。

今回更新された契約額は以前のものよりも数倍高くなっているようです。Firefoxのマーケットシェアは20%以上で、競合のMicrosoftに持っていかれてしまうのをGoogleが恐れた可能性もあります。

いずれにしてもGoogleはChromeというやはりシェアが20%の製品を抱えながらも、競合のFirefoxとパートナーシップを継続しているわけです。そこで自分なりにブラウザ開発の歴史を振り返り、このパートナーシップの意義について考えたいと思います。 Continue reading Firefoxの功績を考える:FirefoxはなぜGoogleから10億ドルがもらえるのか

学会の要旨集システムをゼロから考え直そう

Title312月13日から16日まで横浜パシフィコで開催された分子生物学会に参加してきました。おおよそ十年ぶりに一般参加をし、講演とポスターをしてきました(ずっとメーカーとして展示には参加していましたが、一般参加はしていませんでした)。

久しぶりに参加して思ったのですが、要旨集とかそれをオンラインで提供するシステムが非常に残念な状態でした。

そこでこのブログでは何が残念だったかをリストアップし、その解決策をゼロベースで考えたいと思います。

残念だった点

  1. ポスター会場のWiFiが全く使い物になりませんでした。学会が用意しているmbsj2011のWiFiが全く機能せず、そのため非常に多くの人がモバイルWiFiを使っていて、それも大混線していました。結果として、人が多いときは何をやってもインターネットにつながらないという状況でした。今年から要旨集やスケジュールがCDで配布されなくなったこともあったので、インターネットにつながらない状況は非常に問題でした。
  2. 「プログラム検索・オンライン要旨閲覧システム」は大部分の「要旨」がなぜか掲載されておらず、抜けていました。僕自身が書いた要旨もなぜかこのシステムには登録されておらず、見ることができませんでした。要旨が掲載されていない「オンライン要旨閲覧システム」というのはあり得ない話です。
  3. それ以外にも要旨集システムは不満が多く、10年前から何も進歩していないという印象を強く持ちました。それぞれの不満点については後述します。

要するに、相当にボロボロな状態でした。

いかにその原因についての考察を交えながら、いろいろな提案をしていきたいと思います。なるべくゼロベースで考え、理想の要旨集はどのようにあるべきかを考えたいと思います。 Continue reading 学会の要旨集システムをゼロから考え直そう

ソーシャルネットにおける破壊的イノベーションをmixi vs Facebook vs Google+で考察する

Facebookがどうして2011年だけで一気にmixiを抜去ったか?
どうしてGoogle+は早くも失速気味か?

これをイノベーションの視点で議論してみたいと思います。


2011年11月度のニールセン・インターネット視聴率(日本)が発表され、いろいろな面白いことがそこから読み取れます。

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  1. Facebookがとても伸びていること。
  2. mixiがここの2011年はずっと緩やかな下降をしていること。
  3. Google+は最初こそ人気が出たけど、2ヶ月目からは下降していること。
  4. mixiは女性比率が高く、かつ若い人に人気。

イノベーションや市場のダイナミックスの視点で見ると面白いのは、どうしてFacebookがmixiに支配されているように見えた日本市場に入り込んで、あっという間にトップの座になったか(Twitterは毛色がかなり違うので、ここでは比較対象にはしません)。それに対してGoogleの大プッシュにも関わらず、Google+がなかなかFacebookに勝てないか、ということです。

既存の巨大なSNS (Mixi)が既に日本市場を支配している(ように見えた)にも関わらず、Facebookは日本市場を席巻することができました。一方でGoogle+は最初こそ話題を集めましたが、今の様子ですとこのまま終わってしまいそうです。この2つの明暗を分けたのはいったいどこなのでしょうか。

Clayton Christensen氏による破壊的イノベーションの理論に則して考えたいと思います。

一言で言うと、FacebookとMixiは一見同じ市場で競争しているように見えますが、実はMixiがカバーできていない市場(カバーしたくてもできない市場)にFacebookが入ってきたのです。Christensen氏の言葉で言えば、Facebookはnon-consumptionのユーザ層を取り込みました(new-market disruption)。

それに対してGoogle+はFacebookと全く同じ市場にほとんど同じような製品で乗り込み、Googleというバックの強さだけで勝てるんじゃないかということで正面攻撃を仕掛けました。Christensen氏によれば、このような戦略は大きな力の差がない限りは成功しません。

以下に解説します。 Continue reading ソーシャルネットにおける破壊的イノベーションをmixi vs Facebook vs Google+で考察する

HTCが侵害しているという特許は何の特許なのか

Appleが特許訴訟でHTCに限定的な勝利を収めたという話題にネットで流れています。でもその特許が何なのかをちゃんと紹介しているものはほとんどありません。

やっとしっかりしたものを見つけましたので、紹介します。

栗原潔 (テックバイザージェイピー)「Appleが特許戦争でHTCに限定的勝利」

要約した上で私の見解を補足します。

特許の対象と回避策

  1. 侵害はHTCに限らず、Androidを使っているすべての機器が対象。(問題となっているのはAndroidのLinkifyという機能。
  2. HTCの言う回避策というのは、Linkify機能を使わなくすること、削除することです。代替策を講じる訳ではなさそうです。
  3. 問題となっている特許は、メールテキストなどの内容のうち、電話番号、住所、ウェブサイトの内容を自動的にリンクに変換する技術をカバーしています。今日のメールソフトでは当たり前となっている機能です。(詳解はこちら

この特許の影響

この特許だけでも以下のようになると私は予測します。

  1. 代替案が見つからない限り(そして特許を見る限り代替は難しそうです)、Googleは少なくとも新OSではLinkifyを外すでしょう。侵害を知りながら配布し続けると、訴訟時の賠償額が3倍になるそうですし、携帯端末メーカーもこれを避けたがるでしょう。
  2. 結果として新しいAndroid端末からはLinkifyの機能は削除されます。
  3. Linkifyの機能はスペック表に現れるものではありませんので、短期のAndroid端末の売り上げには影響はありません。
  4. しかしLinkifyの機能は今日のメールソフトでは当たり前の機能です。ましてはパソコンよりもコピーペーストがやりづらいスマートフォンの場合は、より重要性が高い機能です。したがってほとんどのユーザは不便さを強く感じるでしょう。

なおAppleとMicrosoftは1997年に特許紛争の和解をしていて、そのときに広く特許のクロスライセンスをしました。今回の特許についてもMicrosoftにはライセンスがあるはずです。したがってWindows Phoneは訴訟の対象にはならないはずです。

学会の要旨集システムをゼロから考え直そう

Title312月13日から16日まで横浜パシフィコで開催された分子生物学会に参加してきました。おおよそ十年ぶりに一般参加をし、講演とポスターをしてきました(ずっとメーカーとして展示には参加していましたが、一般参加はしていませんでした)。

久しぶりに参加して思ったのですが、要旨集とかそれをオンラインで提供するシステムが非常に残念な状態でした。

そこでこのブログでは何が残念だったかをリストアップし、その解決策をゼロベースで考えたいと思います。

残念だった点

  1. ポスター会場のWiFiが全く使い物になりませんでした。学会が用意しているmbsj2011のWiFiが全く機能せず、そのため非常に多くの人がモバイルWiFiを使っていて、それも大混線していました。結果として、人が多いときは何をやってもインターネットにつながらないという状況でした。今年から要旨集やスケジュールがCDで配布されなくなったこともあったので、インターネットにつながらない状況は非常に問題でした。
  2. 「プログラム検索・オンライン要旨閲覧システム」は大部分の「要旨」がなぜか掲載されておらず、抜けていました。僕自身が書いた要旨もなぜかこのシステムには登録されておらず、見ることができませんでした。要旨が掲載されていない「オンライン要旨閲覧システム」というのはあり得ない話です。
  3. それ以外にも要旨集システムは不満が多く、10年前から何も進歩していないという印象を強く持ちました。それぞれの不満点については後述します。

要するに、相当にボロボロな状態でした。

いかにその原因についての考察を交えながら、いろいろな提案をしていきたいと思います。なるべくゼロベースで考え、理想の要旨集はどのようにあるべきかを考えたいと思います。 Continue reading 学会の要旨集システムをゼロから考え直そう

ドコモのiPhone発売は必然だから、その先を考えてみる

ドコモからiPhoneが2012年の夏に発売されるという情報が報道されました。
ドコモ、来年夏にiPhone参入(日経ビジネス)

後にドコモがこれを公式に否定したようですが、大方の見方はやはりドコモがiPhoneを投入するだろうという考えのようです。

まぁ、それはそうでしょうという気もします。

10月半ばにKDDIが投入したiPhoneは好調です(ウレぴあ総研)。実際にSoftbankからKDDIに移るには多くの障害があるのですが、それでも良く売れています。SoftbankでiPhone 4を購入した利用者はまだ短くても一年弱の月賦を残しているはずですが、それでも販売数が競っているのは大変なことです。

MNPの転入についてはiPhone 4S販売が2週間分しかない10月の統計で、既にKDDIは転入超過首位になりました。11月がどうなるか、興味深いところです。

こうしてドコモがどこかの時点でAppleの条件を飲んでiPhoneを販売しないといけないのは、まぁ必然でした。

そういう当たり前のことを話してもしょうがないので、今後どうなるかを予想してみようと思います。

  1. Android販売数への悪影響:ドコモのユーザは当然Androidを買い控えするでしょう。
  2. iPhone販売数への悪影響:特にSoftbankユーザで電波に不満のある人の一部はauに移るのをパスして、ドコモを待つでしょう。月賦も残っているでしょうし。
  3. Android全体への悪影響:一年経ったら、もうAndroidを買う明確な理由がなくなる訳ですから、Androidそのものの将来性が不安視されるでしょう。
  4. Androidに悪影響があるということは、Android端末を販売しているメーカーにとって大きな打撃だということです。

ようするにドコモにしてもauにしてもSoftbankにしても、また日本の携帯メーカーにとっても、この報道は本当に困ったものです。もちろん消費者に取っては、事実ならプラスの報道ではありますが。

Steve Jobsがリークを非常に厳しく取り締まったワケもよくわかります。