AISAS理論の近未来

ネットレイティングス株式会社社長の萩原雅之氏のCGMに関する記事を先日読んで、AIDMAに変わるAISASモデルについて始めて知りました。僕自身は欧米のマーケティング情報を勉強していることが多いので、日本発のAISASという言葉は始めて知りました。AIDMAやAISASがどういうことかはその記事に任せて、僕はAISASの真ん中のS (Search)について話したいと思います。

AISASモデルそのものついて詳しく紹介しているページとしてはNBonlineのネットマーケティング用語集のAISASのページが参考になるかと思います。その記事を引用すると、

新しく加わった「Search」は、Yahoo!やGoogleなどの検索サービスの利用が一般化し、商品やサービスに関心を持った消費者が、「まずはネットで調べてみる」行動パターンを指す。最後の「Share」は、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、クチコミ・サイトなどを介して、消費者同士による商品の使用感や感想などの情報交換・共有が日常化してきた状況を表す。どちらも2002年ころから顕在化してきた消費者の行動パターンである。

さて、この紹介については全くその通りだと思いますし、消費者がネットで調べてみるという行為は非常に一般化していると思います。しかし、消費者がネットで調べる行為を「Search」とうい言葉で表していることには多いに疑問を持ちます。

確かにYahoo!とGoogleが「Search」を中心とした広告ビジネスモデルを構築し、これが非常に注目されていることが「Search」という言葉を使った大きな理由だと思います。「Search」で自社の立場を有利にすることを目的とした、SEOという大きな産業も現れました。その意味でネットでの検索を「Search」というひとことでまとめてみたくなる気持ちはわかります。

しかし消費者の目的は「Search」ではなく、「情報を調べる」ということを忘れてはいけません。そして情報を調べる方法がYahoo!やGoogleに代表される「Search」に限らないことを理解しないといけません。

例えば、僕が’SEO’という言葉について調べたいとします。そのときにGoogleで’SEO’と検索してもいいのですが、そうすると’SEO’サービスを提供している会社のウェブサイトへのリンクばかり出てきて、肝心の’SEOとは何か’を中立的に教えてくれそうなサイトが見つかりません。そこで最近ではGoogleで’SEO’と入力せずに’SEO Wikipedia’と入力するようにしています。なぜならWikipediaであれば’SEO’について基礎から詳しく解説している比較的中立的な記事があると期待できるからです。

Page Rank技術などによって飛躍的に性能が向上したとはいえ、GoogleやYahoo!の「Search」はまだまだ利用者が目的としている情報を短時間で的確に提供するサービスにはなっていません。それに対してWikipediaは、適切な記事さえあれば、目的とする情報を非常に短時間で提供してくれます。ですから、「情報を調べたい」と思ったときはまず最初にGoogleをするのではなく、まずWikipediaで調べるということが今後増えてくると思います。

Wikipediaは一般的な情報の記事が多いのですが、各メーカーの製品についてはあまり書いてありません。各メーカーの製品について同じように情報を集めたい場合に活躍するのがAmazonや価格.comのレビュー記事でしょう。

こう考えるとAISASの真ん中はSearchのSではなく、例えばInvestigateのI + CompareのCと考え、AIICASなどとした方がいいように思います。

また僕の考えてでは、SEOなどのSearch中心の技術はあくまでも過渡的な技術であって、最終的にはWikipedia, Amazonや価格.comのように情報が最初からある程度整理されたものが消費者に大きな影響を与えていくのではないかと思います。

実は同じようなことはバイオインフォマティックスの世界で10年ほど前に既に起こっています。コンピュータが全自動で情報をまとめたり優先順位をつけていくことには限界があること、人間が意味を理解しながら一つ一つ整理していかなければならないということが90年代後半にははっきりしてきました。そこで人間によるキュレーションやアノテーションのプロジェクトが進められ、成功しています。同じようにGoogleやYahoo!の全自動サーチ技術の重要性が相対的に減少し、人間が編集したWikipedia, Amazon, 価格.comのようなサイトが主流になっていくのではないでしょうか。