Androidタブレットの現状についての考察

かなり前からiPadのマーケットシェアに関するデータが気になっています。

iPadのマーケットシェアは68%?

2012年9月のAppleのプレゼンでiPadのタブレッド市場のマーケットシェアが68%だったというデータが紹介されていました。タブレット市場のマーケットシェアに関する情報は複数の調査会社が公開していて、おそらくそのどれかを使ったのだと思います。ただしタブレットの売り上げ台数を公開しているメーカーはAppleだけで、例えばSamsungはスマートフォンもタブレットも売り上げ台数は公開していないので、この市場調査委資料はかなり推測が含まれています。

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iPadの使用台数シェアは91%?

それに対して実際にインターネットにアクセスしたタブレットの数、つまり実際に使用されているタブレットのシェアを見ると全く様子が違います。91%がiPadであるというデータが出ています。これはおそらくはChitikaというネット広告会社が出しているデータを元にしているのだろうと思います。これも方法論的に難しいことがあるので、100%正しい数字ではなく、ある程度のバイアスがある数字だと考えることができます。

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いずれにしてもこの2つのデータの違いは相当に大きくて、いずれもそこそこ正しいと仮定するならば以下の結論しか合理的にあり得ません。

「Androidのタブレットを購入した人は、その後ほとんど使っていない」

以下、一部データを補足しながら、どうしてAndroidのタブレットは余り使われず、それに対してiPadは多く使われるのだろうかについて考察したいと思います。

Androidタブレットのリーダー、Kindle Fireはすぐに使われなくなった?

Chitikaがかなりデータを公開しているので、これを見ながら話したいと思います。Androidタブレットで一番よく売れたのはKindle Fireだと言われているので、このデータを見てみます。なおKindle Fireは当初USでしか発売されませんでしたが、ChitikaのデータもUSとカナダ限定ですので、比較できます。

Chitikaは2012年1月17日の記事、“iPad Still Leads Tablet Market for Web Traffic; How Does the Competition Stack Up?”で、Kindle FireのウェブトラフィックがiPad 100に対して2.4あったというデータを紹介しています(つまりウェブアクセスシェアとしては2%強)。

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Kindle Fireは2011年の11月にアメリカで発売され爆発的に売れたとされています。ただしAmazonはKindle Fireの販売台数を一切公表していませんので、実際の数字は憶測の域を出ません。とはいえ、販売から2月でウェブアクセスシェアで2%を超えたのは大変な勢いと言えます。

しかし6月になるとKindle Fireのウェブアクセスシェアは大きく落ち込みます。0.7%と、1月時点の実に1/3にまで落ち込みます。Report: Tablet Shipment Numbers Grossly Overrepresent Usage

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最新の10月のデータになると落ち込み幅は安定してきて、0.59%となります。Tablet Market Share Report: Nexus 7 Usage Increases 135% since July

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興味深いことは、Androidタブレットとしても最もマーケットシェアが高いと言われているKindle FireがSamsung Galaxy 10.1よりも遙かにアクセスが少なく、その他のAndroid タブレットと比較してもかなりアクセスが少ないということです。

Samsung GalaxyについてはSamsungとAppleの法廷闘争の中でUSでの販売台数が明らかになっていて、Galaxy Tab 10シリーズはiPadの5%しか売れていないことがわかります。それにも関わらず、その売れていないGalaxy Tab 10よりもKindle Fireのウェブアクセス数は遙かに少ないので、Kindle Fireって本当に使われてなくなったんだねと言うことになります。 More secrets revealed: Galaxy Tab’s uninspiring U.S. sales numbers, Samsung’s U.S. Tablet Revenue Less Than 5 Percent of Apple’s, Court Documents Show

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Google Nexus 7についてですが、このデータを見る限り、販売開始直後のNexus 7の出足はむしろKindle Fireより遅く、大きく期待するのは難しいのではないでしょうか。

どうしてAndroidのタブレットは使われないのか

Androidタブレットで売れていると言われている割に全くウェブアクセスが少ないのは7インチタブレットなので、それについて考えてみます(Android 10インチはウェブアクセスも少ないのですが、それ以前に販売台数も少ないのでまた別の問題です)。

これについては2012年10月のAppleの新製品発表会でPhil Schillerが説明しています。実際にGoogle Nexus 7のスクリーンショットをiPad miniのスクリーンショットと比較して、以下にGoogle Nexus 7が見劣りするかを解説しています。その一方でiPad miniがフルサイズのiPad2と比較して、同じレベルを実現していることを紹介しています。

Phil Schillerの論点に従えば、Google Nexus 7が使われないのは、スマートフォンと変わらないからです。早い段階でNexus 7を購入するのはほとんどが機会好きのearly adopterであり、スマートフォンもラップトップPCも既にいます。Nexus 7でウェブを見るにはスマートフォンと同様に画面を拡大しないと内容をちゃんと読めないし、表示している内容そのものもスマートフォンと何ら変わりません。それならば何もわざわざNexus 7を取り出す必要は無くて、スマートフォンを使えば良いのです。あるいは本格的にメールをやるのであれば、ラップトップを使えば良いのです。タブレットを使ってもらうためには、あるシチュエーションにおいてスマートフォンと比べても、そしてラップトップと比べても便利じゃないといけないのですが、7インチタブレットにはそれがないというのがPhil Schillerの主張です。

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タブレット(iPad)は何に使われているか

Infographic Labsが作ったinfographicを見ると、iPadの用途はウェブを見ることが圧倒的で、eBookやビデオというのはマイナーな用途であることがわかります。

これを見る限り、タブレットのカテゴリーで成功する製品はウェブを見るのが便利でないと勝ち目がなさそうです。eBookとかビデオは余り重要ではないようです。

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まとめ

ここまでの情報をまとめると、憶測ではありますが、現状のデータとマッチする一つの7インチAndroidタブレットの姿の仮説が浮かび上がってきます。以下、紹介します。

  1. Kindle Fireなど、爆発的に売れたとされる格安の7インチAndroidタブレットは、当初の売れ行きは好調でした。
  2. しかし半年もしないうちに、Kindle Fireなどはほとんど使われなくなりました。
  3. もともとタブレットを使う人はウェブを見たりメールをしたりするのが主用途。その用途において、7インチタブレットを使うよりはラップトップなどを使う方が便利だったのでタブレットが使われなくなりました。Phil Schillerが示したように、7インチタブレットがウェブに不向きなのは、画面の横幅が狭すぎて、近年の横幅1000ピクセル程度のウェブページを収めようとすると小さくなりすぎるためです。
  4. Kindle Fireなどの格安7インチタブレットは、映画を見たりすることにフォーカスがおかれています。画面の縦横比は16:9で、HD映画を見るのに適しています。一方でiPadの縦横比は4:3で、ウェブページを見るのに適しています。しかしビデオを見るのはタブレットの用途としてはマイナーです。

どうやらタブレットはラップトップPCとほとんど市場がかぶっているようです。ですからラップトップの機能をかなりの部分で代替できなければ、タブレットとしては成功できないのです。それを物語るデータになっていると思います。

この仮説が正しいとするならば、以下のことが予想されます。

  1. Google Nexus 7もKindle Fire同様に最初は出足が好調でも、程なくして使われなくなります。ウェブアクセスデータはたかだか数パーセント止まりでしょう。
  2. iPad miniが成功するか否かはウェブを見たり、メールをしたりするのがどれだけ便利にできるかにかかっています。Appleはこのことを強く意識しているようなので、7インチタブレットより成功することは間違いありませんが、既存の10インチiPadと比べてどうかは今後を占う上で一番重要な指標になります。
  3. Windows 8を搭載したタブレット(Windows RTではなく、PCと同じWindows 8がATOM CPUなどで動くタブレット。例えばDell Latitude 10)は当然ながらウェブとメールがラップトップ並みかそれ以上に便利に使えます。企業メールのスタンダードであるMicrosoft Outlookも使えます。Windows用の既存のアプリも使えます。ですから売れるでしょう。しかも良く使われるでしょう。