Androidのリーダー、Andy Rubin氏が降ろされた件

アップデート: 3/19日、Satoshi Nakajimaさんのブログに関連した書き込みがありました。単純に人事を根拠に議論しています。そしてどうしてChrome OSとAndroidの統合を急ぐかについては『「すべてをウェブ・アプリケーションとして提供する」というGoogleのビジョンには Chrome OS の方が相性が良い』と書くにとどめています。しかし結論は同じです。AndroidとChrome OSは統合される予定であり、それもChrome OSを優先した形になるということです。私も同意見です。人事を見ただけで十分にこの結論に至ります。

Androidの開発を指揮していたAndy Rubin氏が役割を降ろされ、別の部署に移されることが発表されました。

5月にAndy RubinがD11会議で話す予定だったそうなので、今回の話は比較的唐突だったようです。

いまのところどうしてこうなったのかは全く情報がありません。わかっていることはAndy Rubin氏の代わりにAndroidを指揮するのがSundar Pichai氏だということだけです。Sundar Pichai氏はChromeおよびChrome OS、Google Appsを担当しています。したがって今回の人事発表を素直に解釈すると、GoogleはAndroidとChrome OSの統合を急いでいると推察ができます。それもAndroidを優先させた統合ではなく、Chrome OSを優先させた統合となりそうです。

果たしそんなことは合理性があるのでしょうか。

Googleの最近の動きをまとめてみる

どうしてそんなことをするのか、どんな意味があるのかは全くの推察ですが、今月のGoogleの動きをいくつか列挙して、その傾向を見てみます。

  1. Andy Rubin氏の代わりにSundar Pichai氏がAndroidの指揮することになった。
  2. Chrome for Androidにdata compression proxyという機能が追加されました。まだ試用段階ですが、実現すれば、Androidのすべてのウェブトラフィックは一端Googleのサーバを経由することになります。
  3. Google RSS Readerの廃止
  4. Google、Play Storeから広告ブロックアプリを一斉削除

3と4から読み取れるのは、Googleの収益の9割をしめる広告収入へのこだわりです。広告収入に十分に貢献しないサービスは終了させ、広告収入を脅かすアプリは排除するという動きです。Googleが広告収入に完全に依存しているのは今に始まった話ではありませんが、広告ブロックアプリを一斉削除するなどの強硬姿勢を見せたのは初めてです。

さて、この強硬姿勢と上記の1, 2には関係はあるでしょうか?

Data compression proxyがあれば、Googleはユーザが閲覧するウェブサイトをすべて把握できる

2のdata compression proxyという仕組みはChromeのネットワーク接続をすべてGoogleサーバ経由にする仕組みです。ユーザにとってはスピードの向上というメリットをうたっていますが、それ以上にGoogleにメリットがあります。Googleのサーバを経由する情報を解析すれば、Googleは各Androidユーザがどのようなウェブサイトを見てるかを完全に把握することが可能で、その情報を元にターゲティングされた広告を流すことができるようになります。これは既にGMailでGoogleが行っていることではありますが、メールだけでなく、今度はウェブも対象に含めようという話です。したがって2の動きについても、Googleの広告強硬姿勢とマッチしています。

Chrome OSとdata compression proxyの組み合わせで、Googleはスマホの全活動を把握できる

1のAndy Rubin氏降ろしはどうでしょうか。このためにはChrome OSのGoogleにとってのポテンシャルを考える必要があります。

まずは以下の思考実験をしてみます。

もしGoogleがFirefox OSのようなChrome OSをスマートフォンで普及させ、すべてのネットトラフィックがdata compression proxyを通るようになったらどうなるでしょうか?

Firefox OSではネイティブアプリもHTML, Javascriptで書きますので、ウェブアクセスは原則としてブラウザ経由となります。そのブラウザがdata compression proxyにつながっていれば、ネイティブアプリのネットワーク接続もすべてdata compression proxyを通るようにできます。

スマートフォンではウェブよりもアプリの方が話題になっていますが、モバイルアプリ上に表示される広告はGoogleの弱点です。競合にたくさん入られてしまっています。しかしモバイルアプリを含めてすべての広告がGoogleのサーバを経由し、情報がすべてGoogleに筒抜けになれば対応が可能です。

つまりこのFirefox OS的なOS、Googleの場合はChrome OSの方がGoogleの広告モデルにとって有益です。

こう考えると、1のAndy Rubin氏外しも広告強硬姿勢と一貫します。

ということはAndroidからChrome OSへの切り替えが起こる

もしもGoogleの経営陣がAndroidからChrome OSへの切り替えを考えているのならば、タイミングは今です。急がないといけません。理由はFirefox OSです。すでに多くのキャリアがFirefox OSのサポートを表明していますので、Firefox OSが成功する可能性があります。先に成功されるのはまずいのです。同じアプローチを採るChrome OSとしてはローンチで大幅に遅れるのは致命傷です。

ちなみにAsymcoのHorace Dediuも最近Androidの開発が止まることを想定し始めています

  • すばらしい洞察の記事をありがとうございます。
    今回のAndy騒動を違った視点から見ることが出来ました。

    すこしわからない点があったので質問させてください。

    >スマートフォンではウェブよりもアプリの方が話題になっていますが、モバイルアプリ上に表示される広告はGoogleの弱点です。競合にたくさん入られてしまっています。しかしモバイルアプリを含めてすべての広告がGoogleのサーバを経由し、情報がすべてGoogleに筒抜けになれば対応が可能です。

    ここで言う最後の「対応」というのはどういうことでしょうか?
    よろしければ教えてください。

    ボクの理解では
    1.Androidでは他広告業者が入る余地が十分にある
    → 2.Chromeにすると(なんらかの対応があって)他広告業者が入る余地が少なくなる(ということ?)
    → 3.広告収入が増える
    で、どうも2の部分がもやもやしています。

    よろしくおねがいします。

  • Keisuke SUZUKIさん、コメントありがとうございます。

    わたしもまだもやもやが残っている部分です。深くは考えていないのですが、今の考えは以下の感じです。

    A. Chromeのdata compression proxyを使えば、Chrome browser上で動くウェブアプリおよびChrome OSで動くHTML/Javascriptベースのアプリはすべて一端Googleのサーバを経由するようにできる。これは現実にGoogleがそうするかどうかではなく、可能性としてできます。
    B. 一方、AndroidのようにローレベルAPIに開発者が自由にアクセスできると、data compression proxyを経由させることを徹底させにくい。

    すべてのネットワークデータ(競合の広告を含めて)がGoogleのサーバを経由すれば、Googleとしてはいろいろな可能性が広がります。これが一番思っていることです。

    直接答えになっていませんが、そもそも考えがもやもやした状態で書いた部分をつかれましたので、そうなってしまいました。

  • ご回答ありがとうございます。
    data compression proxyで追跡データをとりつづけることで、
    例えばトイレの脇の床屋が儲かるといったような
    一見両者が繋がらない儲けのカラクリがいろいろと見つかるかもしれないですね。

    他サイトではAndroidとChrome統合という話にいまいちピンときていなかったのですが、
    こちらではdata compression proxyというキーワードでその裏側を紐解いていく話がとてもおもしろかったです。
    ありがとうございました。

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