AppleがiTunes storeで新聞を配信する意義

AppleがiTunes storeでまもなく新聞の配信を始めるのではないかと噂されています。しかし売上げ低下に喘ぐ新聞社にとっても、全面的に都合が良いわけでは無さそうです。

このブログでその問題点を詳しく解説しています。

大きく問題になるのは、購読者の情報がAppleに握られてしまうということだそうです。購読者が了解しない限り(オプトイン)、顧客情報はAppleにとどまり、新聞社までは送られないそうです。

昨今の個人情報保護を背景に、Appleが小売業をやっていると考えれば、これは当たり前のことではあります。個人情報関連の法律では、了解無しに第三者に個人情報を譲ってはならないとなっていますので、Appleはこれをやっているまでだとも言えそうです。実際、スーパーで何を買ったかの情報が食品メーカーにまで行っていると言うことはないと思います。バイオの業界はちょっと微妙だったりしますが。ただし旧来の新聞社のビジネスモデルでは小売りまでも担当していましたので、問題となったのでしょう。

NewImage.jpg恐らくAppleが新聞社に言っているのは、「うちが小売りをやるから、あなたたちは良い記事を書いて、うちに卸してください」ということに近いのでしょう。Appleが小売りであれば当然小売価格の決定権はAppleに帰属します(そうしない法律的に問題になります)。新聞への広告の掲載にしても、Appleとしては「お金を集める活動はすべてうちが担当します」というスタンスかも知れません。

要するに、新聞社は今までは記事を書くところから初めて、印刷をし、配達をし、集金をし、販促をし、広告集めの活動までも行う、完全な垂直統合のビジネスをしていました。Appleの提案は、iTunes Storeを使えば、印刷、配達、集金、販促活動はうちがやります、ということでしょう。Appleにしてみれば、新聞社はとにかく記事を書くことにだけ集中すれば良いと考えているのだと思います。

もし新聞社がいつまでも垂直統合を続けていたらどうでしょう。果たして効率が良いでしょうか。果たしてインターネット配信の価格を印刷物よりも大胆に安くできるでしょうか。残念ながらそうではなく、いつまでたっても、そして印刷物の必要がなくなっても値段は下がらないでしょう。日経新聞の有料オンライン版が毎月4,000円、紙の毎月4,400円とほとんど変わらなかったのは記憶に新しいところです。垂直統合を解かない限り、旧来の組織と社内政治が大胆な施策を阻み、インターネット版の値段を押し上げてしまうでしょう。

別に配信はAppleだけに限る必要はありません。Appleも囲い込みを狙っているようには見えません。もし新聞社がAmazonと組みたければ、それを制限するようなことはしていなさそうです。Appleは独占を狙っているのではありません。

Appleは新聞社に大胆な構造変化を促し、インターネットの時代を生き延びられるような筋肉質なコスト構造にさせたいのでしょう。そうしない限り、今のままだと遅かれ早かれ新聞社は破産してしまいます。Steve JobsはAll Things Dのインタビューで言いました。「この国がブロガーの国になってしまうのは見たくない。健全な民主主義のためには編集を経た良質な記事が必要だ。新聞社が生き残れるように最大限のことをやって行く。」

一見違うように見えるかもしれませんが、少なくともいまAppleがやっていることは、Steve Jobsのこの言葉そのとおりだと思います。