永井一正さんのコメントを考える:東京オリンピック2020 ロゴ問題

東京オリンピック2020の公式エンブレムの盗作疑惑について、審査委員の代表、永井一正さんがコメントをした。

まず第一印象としては、非常に丁寧な印象がある。というか、まともである。ネットで「佐野チルドレン」と呼ばれている、佐野研二郎氏を擁護するデザイナーたちのあまりの下品さと比べると、「あぁ、こういう話し方をする人の意見ならちゃんと真面目に聞いてみよう」って思わせる。

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ただ、だからと言って永井さんのコメントを鵜呑みにはできるわけではない。この問題は依然として不思議な点が残っているからである。

そして永井さんのコメントの一つ一つを取り上げて、それを疑うことは私はあえてしない。なぜなら今回の問題の大きさを考えれば、永井さんを信じる切る十分な理由がないからである。ここまで大事になったからにはすべてに懐疑的にならざるを得ない。

それよりも以下のことに注目するべきだと感じる;

  1. 問題が表面化してから20日以上経ったタイミングで初めてデザインの変遷に言及したこと。本来であればこれは8月5日の記者会見で言及があってもおかしくないし、私も、大阪芸術大学の純丘曜彰教授も、そしてベルギーの劇場のデザインを手がけたOlivier Debie氏自身もここを突いている。これだけの間、審査員に口止めをしていたという事実だけははっきりしている。その裏には、何か疑わしい事情があったのではないかと想像してしまう。
  2. 「個人的には、応募されたほかの案や審査の過程も公表した方がいいと思う」と永井氏はコメントしているが、この含みのある表現が気になる。大会組織委員会が記者会見を開くのではなく、永井氏が朝日新聞の単独インタビューに応じる形でこの情報が出てきているのも疑わしい。大会組織員会が本気で審査過程を公開するつもりなのか、それとも時間稼ぎをしようとしているのか。どちらかという後者のように見える。

何しろごく少数の審査員が密室で議論を行ったというだけの審査過程である。しかも、もし佐野氏のオリンピックエンブレムを取り下げるとなると、審査員自身にも損害賠償責任が及ぶ可能性だってあるし、デザイナーとしてのキャリアはもちろん大きく傷つく。審査員としては嘘をついてでもなんとかやり過ごそうと思うはずだ。そしてそのために時間稼ぎをした可能性は否定できない。

永井さんのインタビューはその疑念を払拭するものではなく、考えようによってはより疑念を深くするものであったと私は感じる。

STAP細胞をめぐる研究不正でも第三者による不正調査委員会が立ち上げられ、調査が進められた。今回のオリンピックエンブレムの件でも是非そのような調査をしてほしいものである。

デザイナーの法律知識は大丈夫か?

デザイナーの法律知識が非常に心配になってきた。

佐野研二郎氏がFNNに取材にこのように答えたようである。

それが、誰か特定の人のアイデアとして認められ、ほかの人が使えないということであれば、デザインの世界では、できないことがほとんどになってしまうと思いますし、わたしはそうではなく、ほかの誰が使っても、問題のないものだと思います
(強調は筆者)

著作権裁判を控えている佐野氏がこのようなことを語って良いのか。これは著作権を侵害したと自ら認めたように受け止められてしまわないか。これが非常に心配である。

佐野氏の言葉は事実上「他人のアイデアは無条件に使って良いと思う」とまで語っているようにさえ聞こえる。ということはベルギーの劇場ロゴだって「使って良い」と彼は判断したのだろう。これはまずい。法律的に言えば「依拠性」を自ら認めているから。「使った」とまでは言い切っていないものの、コンテキストを考えると非常に微妙なことを佐野氏は言ってしまっている。

ベルギーもアメリカのデザイナーも、すぐに弁護士に相談している。佐野氏には弁護士は付いていないのか。こんなことを言ったら不利だよって誰も言ってくれなかったのか。博報堂ではそういう教育もなく、顧問弁護士もいないのか。

佐野氏および大会組織委員会がここ数日沈黙していたのは、損害賠償問題を含め、裁判の行方、法律上の問題を検討しているからだと思っていた。それすらしていない可能性が出てきたわけで、これはいよいよ全面敗北になりそうな予感がしてきた。

デザイナーが著作権侵害で訴えられないための簡単な方法

あらかじめ断っておく。私はデザインの世界は知らない。しかし自分が行った研究でしっかり特許をとって、権利を守るための方法は知っている。そしてそれに照らし合わせると、オリンピックエンブレムの問題に対するデザイナーの反発が非常に幼稚に見える。

簡単に言うとこういう反発だ。

  1. 中村勇吾: 「すごく基本的な形態の組み合わせのシステムなので世界中探したらどっかに似たアウトプットは必ずあるだろう。これでパクリだと揚げ足取られると今後シンプルな提案は何も出来なくなる」 リンク
  2. 水野祐弁護士: 「著作権法は偶然似たものを侵害とはしない」「『パクり』という言葉を使って煽ってるとしか思えない。発言を拾った報道側のリテラシーの問題では」 リンク
  3. ナガオカ ケンメイ: 「シンプルで力強いデザインはグラフィックに限らず、似てきます。」 リンク
  4. 中村勇吾: 「これでパクリだと挙足取られると今後シンプルな提案は何も出来なくなる。」 リンク

他にもこちらにいろいろある。

研究の世界では

理研の小保方晴子氏のときに話題になったのはノートである。別に3年間で2冊しかノートがなかったこと自体が問題ではない。もし他の研究者が実験を再現し、STAP細胞の存在が明確に確認されれば、ノートがどんなに少ないかは問題にならない。正直な研究者だって過去の実験を再現できないということはある。しかし正しく実験を行ったかどうかは、詳細なノートがあれば証明できる。問題はノートがなかったために自分の身を守れなかったことである。

実験ノートには日々の着想と実験計画、そして得られた細々とした結果を記す。そして理想的には共同研究者に毎日見てもらい、確認のサインをもらう。仮に実験結果を捏造するにしたって、このノートのすべてを捏造することは難しいので、だからこそ証拠として価値がある。

デザインの世界では

今回のオリンピックエンブレムで問題になっているのは著作権である。そして著作権を侵害したかどうかは、結果として似ているかどうかではなく、根源的には元の著作物を許可なく使用したかどうかである。したがって最終的な成果物ではなく、デザイン過程の問題である。だから佐野研二郎が示さなければならない証拠は最終成果物のに関するものではなく、製作途中に関するものである。

これについては私も言及しているが、やはり大阪芸術大学の純丘曜彰 教授が書いたものが詳しく書いてある。

では具体的にどのようなものをデザイナーは証拠として提示するべきなのか。純丘曜彰教授は以下の例を示している。

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ここでは最終的なデザインに至るまでの多数の試行錯誤が示されており、これがあれば最初の着想から最終的なデザインに至る道筋が説明できる。そして問題になっているベルギーの劇場のロゴがこの中にあれば問題外だが、ないのであればたまたま独立に似たデザインになったことを主張できる。

実際、ベルギーの劇場のロゴをデザインしたOlivier Debie氏はこう語っている

“Sano gave no explanation showing the artistic progression and development of his logo. He only explained how, according to him, the philosophy behind his design was different,”
“Sano’s explanations do not appear to me to be convincing,”

つまり佐野研二郎氏の説明では、ロゴがどのように発展し作られて行ったかの説明がなく、それでは著作権侵害がなかったという証明にならないというのである。裏を返せば、純丘曜彰教授が例示したようなものがあれば、著作権侵害がなかったことを証明できたことになる。

デザイナーはどうすれば良いか

答えはすごく簡単で、日本のデザイナーがそうしていないとは正直信じられない。

例えばデザインした電子ファイルは上書きせずに、日付などをつけた別のバージョンを毎日保存すれば良い。あるいはMacのTime Machineなどでバックアップしていれば、かなり過去にさかのぼってファイルを復元することが可能である。最近ではDropBoxでも過去のバージョンを復元できるし、プロバージョンであれば無制限に履歴を保存できる。理想的にはSubversionやGitなどのようなバージョン管理ソフトを使えば完璧である。

紙に書いたものであれば、毎日日付をつけてファイリングすれば良い。理想的には同僚にサインをしてもらえればよいし、研究でも使われているようなページを差し替えたり挿入したりできないようなノートを使えばよい。

こういったことも考えずに「これでパクリだと挙足取られると今後シンプルな提案は何も出来なくなる。」などというのは、研究者出身の身としては甘えにしか聞こえない。そろそろデザイナーも自分たちの身を守る方法を真面目に考えたらよいのではないかと思う。

そしてもうひとつ大切なことは、特許紛争では当然のように実験ノートの提出が求められるが、デザインに関する裁判でもこのようなノートの提出(もちろんSubversionやGitのリポジトリでもよい)が義務になればよいのではないかと思う。

東京オリンピック2020エンブレム 盗用疑惑のポイント

誤解している人が多いようなので、私自身も専門家ではないが、とりあえずメモ。

  1. まずベルギーのリエージュ劇場のエンブレムは商標登録されていないので、裁判は著作権に絞って争われるだろう。
  2. 著作権上は似ているか否かは問題にならない。結果としてたまたま似ているものを作ってしまったも著作権侵害には当たらない。Wikipediaによれば、「著作権は相対的独占権あるいは排他権である。特許権や意匠権のような絶対的独占権ではない。すなわち、既存の著作物Aと同一の著作物Bが作成された場合であっても、著作物Bが既存の著作物Aに依拠することなく独立して創作されたものであれば、両著作物の創作や公表の先後にかかわらず、著作物Aの著作権の効力は著作物Bの利用行為に及ばない」。したがって裁判ではリエージュ劇場のエンブレムと東京オリンピックエンブレムの類似性そのものは問題にならない。問題になるのは東京オリンピックエンブレムが二次著作物 (derivative work)かどうかである。もし二次著作物であれば、リエージュ劇場は東京オリンピックエンブレムの使用差し止めなどの権利を持つ。

サントリーのキャンペーンで”BEACH”と書かれた標識を、標識の細かい傷を含めてそっくりコピーしたのは、元のものをそっくり利用したことが明白であり、偶然の一致はあり得ない。したがって著作権を侵害したことを否認することは現実的に不可能である。訴訟を起こされれば、あとは賠償額がいくらになるかだけである。

東京オリンピックエンブレムの場合は偶然似たのか、それともリエージュ劇場エンブレムを参考に、これを改変するように作られたのかが焦点になる。これを証明するためには結果として類似性ではなく、制作過程が問われる。リエージュ劇場側は制作過程でデザインが無断で使用されたことを証明する論拠が必要だし、逆に東京オリンピック側はリエージュ劇場のエンブレムを改変したのではないことを示さないといけない。繰り返すが、結果としての類似性の程度は問題ではない。

さてリエージュ劇場側の弁護士、Alain Berenboom氏はかなりの大物弁護士のようである。彼が登場しているからには著作権侵害の何らかの証拠、つまり制作過程でリエージュ劇場のエンブレムが無断使用された証拠を持っている可能性が高い。その証拠が何かがかなり興味深いが、Pinterestを見ていたか否かのレベルではないだろう。

なお専門家も類似性に基づいた著作権侵害の証明は困難という意見で一致しているようで、私も確かにそうだろうと思う。問題はあくまでも制作過程について、リエージュ劇場側が何らかの情報を持っているのではないかということだ。これについては以前にここで議論した。

東京オリンピック2020ロゴ訴訟、全面敗訴になる可能性について

佐野研二郎氏がデザインした東京オリンピック2020の公式エンブレムが自分が作ったリエージュ劇場のエンブレムと極めて似ているとして、ベルギーのオリビエ・ドビ氏がエンブレムの使用の差し止め訴訟をベルギーの裁判所に起こしている。これはもうすでに報道されている

これに対して大会組織委員会はこのデザイナーを激しく非難する声明を発表した。恐らくはやましい点は一切ないことを世間に知らしめるためにあえて強い口調の声明を出したと思われるが、このままだととりあえずは裁判が行われるのではないかという感じになります。

さて、訴訟対策として本当にこれで良いのでしょうか?この点をちょっと考えてみたいと思う。なお私はこのような訴訟には特に詳しくありませんが、アップルとサムスンの特許訴訟はフォローしていたので、その時の状況を思い起こしながら考えたいと思う。

何を証明する訴訟なのか

以下に東京オリンピック2020の公式エンブレムとリエージュ劇場のエンブレムを並べてみた。一見して似ているものの、完全に一致しているわけではなく、異なる点も多い。とはいえ、リエージュ劇場のエンブレムを題材にこれを加工したものだということになれば、日本の著作権法でいう二次的著作物に該当するだろうと思われる。これはヨーロッパや米国ではderivative workと呼ばれるものである。

二次著作物は元の著作物を利用するので、元の著作物を使用する権利が当然ながら必要になる。今回は当然ながら元の著作物を使用する権利は譲り受けていないので、焦点は東京オリンピック2020のエンブレムが二次著作物に相当するのかどうか、つまり元の著作物を利用したのかどうかにかかっていると私は理解している。逆に佐野研二郎氏がリエージュ劇場のエンブレムとは全く独立にデザインをしたということであれば、全く問題はない。

つまり裁判の争点は、佐野研二郎氏がリエージュ劇場のエンブレムを利用したかにかかっていると思われる。当然ながら裁判の過程で、これに関する証拠集めが行われることになる。

そして証拠集め活動そのものが、佐野研二郎氏、審査員を務めたデザイナー、広告代理店、そして大会組織委員会に不利になる可能性を考えないといけない。

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アップル対サムスンの裁判では社内機密情報の公開までも要求された

アップル対サムスンの訴訟では、意図的な特許侵害があったのかどうかを確認する目的で、サムスン社の社内メールが弁護士によってくまなく調べられ、裁判に関係するものは法定資料として公開された。またアップル社の社内メールも一部公開された。メールだけでなく、機密性の高い社内会議資料なども公開された。このように証拠として重要な資料であれば、本来は隠しておきたい内容であっても公開させられてしまうのが裁判である。

今回のケースでは、佐野研二郎氏が果たしてPinterestなどのサイトから画像をダウンロードしていないかを確認したり、公式エンブレムを作り上げるまでの様々なバージョンを見たりしないと、リエージュ劇場エンブレムを利用しているかどうかが確認できない。したがって予想ではあるが、裁判所がMR-design社に資料の公開(メールを含む)を要求するだろう。

もしもその中に審査員の癒着とかを示す内容が含まれていたら…。それは最悪のシナリオだ。

敗訴するのか、和解するのか

勝訴にこだわればこだわるほどMR-design社は社内の証拠を出していかないといけないのかもしれない。そんなことよりもとっとと負けたり、あるいは和解した方が得かもしれない。裁判で勝つよりも、裁判の過程で機密情報がバレることの方がダメージが大きいかもしれない。今回の件はそんな可能性を感じさせる。

個人的にはどんどん争って、広告代理店との癒着関係が公開されていくことを期待はする。しかしエンブレムを取り下げ、和解してしまえばおそらくベルギー側からの訴訟は終わってしまい、すべてが闇に葬られてしまうかもしれない。それはそれで非常に残念である。

以上、著作権裁判、特にヨーロッパのそれの仕組みを一切知らずに想像で書いたが、今回の件は色々と裏がありそうなだけに裁判を戦い抜くのはかなりマイナスではないかと感じざるを得ない。大会組織委員会が勇ましくベルギー人デザイナーを非難したのは、本当にそれでよかったのかどうか。早期和解の可能性を遠ざけて、機密情報がバラされる最悪のシナリオに近づいてしまっていないか。私としてはそれが気になる。

Update

今回の私の議論について、より専門的な見地から解説しているのが大阪芸術大学の純丘曜彰 教授。こちらの書き込みでは、構想スケッチがあれば盗作の疑いを晴らせること、そして現状では裁判に不利であることなど具体的にを述べている。

以下引用

 商標がどうであれ、著作権は、ベルヌ条約によって無方式主義、つまりなんの登録も無しに、ただ創作しただけで、その時点に発生している。ただ、著作権に基づいて権利侵害を主張するには、類似性だけでなく、依拠性(パクったやつが自分の作品を知っていたということ)を立証しなければならない。その立証責任は、原告側にある。たとえネットで知りえた、としても、相手が知っていたという事実を証明するのは、なにぶんにも相手の側に経緯の資料がある以上、かなり困難だ。(へたに自分の構想スケッチを出すと、その画像から、知っていたということを証明してしまう(知っていたということにされてしまう)危険性があるので、記者会見で、それがあるにもかかわらず、それを出すのを弁護士に止められたのだろうか。)
 ただし、この依拠性は、間接事実からの推認でも十分とされている。すなわち、①知りえた可能性、②類似性以上の酷似性、③オリジナルの周知性、の3点が証明できれば、依拠した、ということになる。逆に、弁護側は、①絶対に知りえなかった、②それほど似ていない、③それほど有名じゃない、と抗弁することで、独立創作としての別個の著作権の存在を証明する。

サントリーのトートバッグの一件で、このデザイナーがpinterest、その他、ネットのかなり奥深いところから巧妙に素材を拾ってきていることが完全に明らかになってしまった。これまた、①知りえた可能性、というだけでなく、実際にネットで知った事実性がかなり高い、ということを自分で立証してしまったようなもの。おまけに、②酷似どころかまんまコピペの常習犯、となると、当該エンブレムに関してのみ、似ていない、関係が無い、などと主張する方がもはや難しい。

Update 2

本日、8月26日に朝日新聞に掲載された永井一正氏のインタービューだが、現時点では状況を変えるほどのインパクトはないと私は考える。その根拠については新たに書いたが、要は永井一正氏の言葉を信じる根拠が弱すぎるのである。

現象を最もエレガントに説明する説:東京オリンピック2020 ロゴに何があったか

サイエンスにしても何にしても同じだと思うが、観測されている現象を最も矛盾なく、エレガントに説明している説や理論が最も信憑性が高いと考えるのが自然であると私は思う。それが仮に2ちゃんねるのような怪しいところに現れた説であっても、その出処が重要ではなく、その説明能力こそが重要である。

その意味ではここに投稿された内容が非常に気になる。

五輪エンブレム 取り下げるべき と広がる波紋  問題ない と組織委★17

関係者から聞いた話をマジレスすると オリンピックパクリエンブレム決定の際博報堂社員からリエージュエンブレムと類似しているからと指摘があったらしい
本来はこの時点で失格になるはずなんだが 博報堂幹部がリエージュ側に了解をとるから大丈夫としたが、予想に反していくらお金を積もうともリエージュ側は了解しなかった
仕方なくデザインをギリギリの線まで変更したらしい
それで発表したのだが リエージュ側からクレームが出た
もともとは円の輪郭も大きくそっくりそのままでLの三角のところに日の丸があるだけで明らかなパクリデザインだった
審査員にはここまで大幅に変更したことは口止めしている

参考までに下に各ロゴを示した。

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佐野研二郎氏にまつわる今回の事件では不思議な点が多く、もっと裏があるはずだと多くの人が感じている。この投稿された内容を信じると、その不審点の幾つかが見事に説明できる。

  1. どうして事前に似ていることに気づかなかったか?: オリンピンクほどの大イベントであるから、エンブレムが他のものに類似してしまっていないか、事前に十分に確認が行われているだろうとは誰もが想像する。今回の投稿では実際に博報堂の社員から類似性の指摘があったということなので、この疑問点が解消される。
  2. リエージュ側がどうして大物弁護士を雇って訴訟を起こすのか?: 盗作されたと訴えているデザイナーはそれほど有名な人ではないのに、どうして費用が相当にかさむであろう大物弁護士を雇うことができたのか。また類似性はあるとしても、偶然の類似の可能性が否定できない程度なので、どうしてそこまで確信を持って訴訟を起こせるのか。私にはこの2点は疑問だった。しかし事前にリエージュ側と博報堂が水面下で交渉をしていて、その交渉が決裂していたということであれば納得がいく。リエージュ側としては絶対に勝訴できる盗作の証拠を握っていることになるので、勝訴を確信していることになる。

今回は私が確実におかしいと思っていたことに限定して解説を試みた。不審点はまだ他にもあるので、今後も今回投稿された情報の視点から考えてみようと思う。

それにしても、現象を最もよく説明する説であるとはいえ、この話はあまりにも汚すぎる。最も信じたくない説の一つであるのは間違いない。

アップデート

不思議に思っていることをもう少し追加する。

  1. どうしてそもそも佐野氏の作品が採用されたのか?: 私はデザインの優劣を評価する立場にはないが、このエンブレムは一般人の間では必ずしも評価が高くない。むしろはっきり言ってかなり低い。そのような作品がどうして採用されたのかが謎であった。今回の投稿によれば、どうやら博報堂の影響力が相当に強いようである。選考過程において博報堂の利益誘導があったとしても全く不思議ではない状況といえる。

なお確認はできていないが、これについては以下のツイートも気になる。本当であれば佐野研二郎のデザインが採用されるのは最初から出来レースであったということになり、なおかつそのことを利用しビジネスを有利に展開していた広告代理店の姿が見える。

多摩川 慰安婦問題さんはTwitterを使っています 東京五輪エンブレム発表会は7月24日 高崎卓馬は五輪エンブレムの選考委員 電通の高橋が佐野研二郎を前面に打ち出した 夏は昼からトート キャンペーン を 東京五輪エンブレムで佐野デザインがブレイクします ってサントリーにプレゼンしたのが5月のGW前後w FX Kuririn

アップデートその2

まだ一つ、私には理解できない大きなポイントが残っている。今回の投稿を含めて考えても理解できないでいる。それは、どうして大会組織委員会がベルギーのオリビエ・ドビ氏をかくも強く非難したかである。

我々の詳細な説明に耳を傾けようともせず、自らの主張を対外発信し続けたうえ、提訴する道を選んだ態度は公共団体としての振る舞いとしては受け入れがたい

これは真っ向から裁判で対決しようという姿勢であり、早期の和解の可能性を遠ざけるものである。よほどの勝算がない限り、それも早期に決着がつけられる自信がない限り、このような発言はしないと考えるのが普通であろう。なぜならばオリンピック関連のグッズ制作などは始まっており、スポンサーの広告などでもエンブレムが使用されるはずだからである。万一敗訴した場合にはその時点からすべてを作り直さないといけないわけで、故意が判明した場合には賠償責任を負うからである。裁判は数年かかるのが普通であるから、決着がつくまで戦うとオリンピック直前になる可能性があり、傷口が浅いうちに早期に和解するのが得策だろうと私などは思う。もちろん和解を有利に進めるための作戦もあるだろうが、ベルギー側を強く非難することはさすがにリスクが大きいと感じる。

今回の投稿と矛盾しない説明をするためには、エンブレムの類似性に気づき、秘密裏にベルギー側と交渉していたのは博報堂までで、大会組織委員会には知らせていなかったと考えないといけない。大会組織委員会に対して、博報堂などが「絶対大丈夫」と委員会に伝え、ナイーブにも委員会がそれを信じたと考えないといけない。そんなことがありうるのかどうかは業界の体質を知っている人間でないと何とも言えないと思うが、もしそうだとするならばあまりにも博報堂が傲慢だったと考えざるを得ない。また大会組織委員会もあまりに楽天的だと考えないといけない(ただし競技場の予算見積もりの報道を見る限り、組織委員会がそれぐらいに楽天的である可能性は否定できない)。

アップデートその3

日刊サイゾーに『佐野研二郎氏の五輪エンブレム“盗作問題”「損害賠償」を恐れる利権構造の闇』と題された記事が8月19日に掲載され、今回の問題の裏で動いている広告代理店について解説している。特に新しい情報はないが、今回取り上げた2チャンネルの投稿を裏付ける内容となっている。

お金持ちの国はExplorerを使い、貧乏な国はChrome, Firefoxを使う

ちょっと極端な題名ですが、50の国を比較してみた結果、一人あたりGDPが高い国はInternet Explorerを使う傾向にあり、一人あたりGDPが低い国はChromeもしくはFirefoxを使う傾向にあることがわかりました。

各国の一人あたりGDPはIMFの2010-2012年の数字、それぞれの国の使用OSと使用ブラウザはStatCounterの2013年7月のデータを使いました。また使用した国は、CIAの各国インターネット人口統計の上位から50国としました。

仮説はこうです。

  1. 一人あたりGDPが低い国は古いパソコンを使い続ける傾向が強く、未だにWindows XPの使用率が高いでしょう。
  2. Windows XPではInternet Explorer 8までしか使えません。Internet Explorer 8は性能が悪いので、ChromeやFireFoxを使っている人が多いでしょう。グラフは別のポストに掲載していますのでここでは掲載しませんが、Windows XPの使用率とChromeやFireFoxを使っている人の割合は相関します。
  3. 逆に一人あたりGDPが高い国は新しいパソコンに買い換えている傾向が強く、Windows 7の使用率が高いでしょう。
  4. WindowsではInternet Explorer 9もしくは10が使えます。特にInternet Explorer 10はChromeよりも高速だという結果も出ており、高性能です。敢えて標準ブラウザを使わずに、FireFoxやChromeに移るインセンティブが低いため、Internet Explorerを使っている人が多いでしょう。

以下はデータです。

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仮説通りになっていることがわかります。

そして表題の通り「お金持ちの国はExplorerを使い、貧乏な国はChrome, Firefoxを使う」という傾向が鮮明に出ていることがわかります。

なおFireFoxを選ぶかChromeを選ぶかは一人あたりGDPとは相関はなく、別の要因で決まるようです。そのため一人あたりGDPとChrome使用率だけの相関は弱くなります。

緑で記したデータ点は中国と韓国です。韓国は政治的な理由で異常にIE使用率が高いので除外しています。中国はUser Agent Stringを書き換えているブラウザが多く使われている可能性が高く、StatCounterのデータの信頼性が低いと考えています。

考察

Chromeの使用シェアが拡大しているというデータもありますが、Googleにとっては喜ぶことばかりではないでしょう。確かに一人あたりGDPが少ない国でも快適にウェブブラウジングができるのはChromeやFirefoxのおかげです。しかしGoogleとしては広告収入が多く期待できる先進国でのシェア拡大が一番欲しいのではないでしょうか。

先進国ではWindows XPの使用率はかなり減ってきていて、Windows 7がメジャーになっています。Chromeは一時高性能でならしましたが、徐々にIE 10やIE 11に追いつき、測定結果によっては追い越されてきています。この傾向が続けば一般の人のChrome, FireFox離れが起こる可能性があります。

なおChromeがシェアを拡大しているのか、それとも縮小させているのかはStatCounterのデータNetMarketShareのデータで互いに反対の結果になっており、よくわからないのが現状です。今回の分析の結果に単純にしたがえば、ChromeやFirefoxの使用率は減っていくと予想されます。

Galaxy S4の標準ブラウザが1年前のChromiumをforkしているかも知れない件

先日、Galaxy S4の標準ブラウザのUser Agent Stringに“Chrome”の文字列が入っているのを知りました。

情報源はたかおファン氏のブログです。

Galaxy S4 (SC-04E)のChromeのUser Agent Stringは

Mozilla/5.0 (Linux; Android 4.2.2; SC-04E Build/JDQ39) AppleWebkit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/27.0.1453.90 Mobile Safari/537.36

そしてGalaxy S4 (SC-04E)の標準ブラウザのUser Agent Stringが

Mozilla/5.0 (Linux; Android 4.2.2; ja-jp; SC-04E Build/JDQ39) AppleWebkit/535.19 (KHTML,like Gecko) Version/1.0 Chrome/18.0.1025.308 Mobile Safari/535.19

参考にGalaxy S3 (SC-06D)の標準ブラウザのUser Agent Stringは

Mozilla 5.0 (Linux; U; Android 4.0.4; ja-jp; SC-06D Build/IMM76D) AppleWebkit/534.30 (KHTML,like Gecko) Version/4.0 Mobile Safari/534.030

さらに標準ブラウザのアドレスバーに“chrome://version/”と入力すると、Chromeに似たバージョン表皮がされるということなので、たかおファン氏はSamsungが独自にChromiumをforkしたのではないかとしています。そうなるとforkしたのはChrome 18 (2012-03-28リリース)。結構古いバージョンで、Chrome for Androidがβ版から抜ける以前のバージョンです。

ことの背景

このあたりの背景については、2013年5月にブログを書きました(英語)。それに補足する形で、背景をまとめました。

  1. “Jelly Bean” (Android 4.1)以降、GoogleはAndroidの標準ブラウザ(いわゆるAndroid stock browser)を外し、Chromeを標準ブラウザとしました。
  2. GoogleはJelly Beanのリリース以降は、Chromeを標準ブラウザとしたとされています。しかし実際にはJelly Bean搭載デバイスであっても、依然としてAndroid stock browserを標準ブラウザとしているものが大半です。Jelly BeanでもOSにはAndroid stock browserのエンジンが搭載されており、web viewを使ったときはChromeではなくAndroid stock browserのエンジンが使用されます。
  3. Android stock browserはオープンソースですが、Chromeはオープンソースではありません。ChromeはAndroid OSには含まれていませんし、Chromeをプレインストールするためには別途Googleとライセンス契約を結ぶ必要があります。Chromeのオープンソース版としてChromiumプロジェクトがあり、Chromeはこれをforkしたものです。

Samsungの判断の背景

SamsungがChromiumをforkしたのならば、それは完全に納得のいくことです。

  1. Samsungとしては単にChromeを搭載するのでは差別化ができません。Samsungは独自の機能をもったブラウザを作りたいと思っています。
  2. 独自のブラウザのベースとしては、a) Android stock browserベースのものを作る、b) Chromiumプロジェクトをベースに作り、c) 独自にWebKitベースのものを作る、が考えられます。Chromeはオープンソースではないので、これをベースにはできません。
  3. 2013年5月時点では、私はSamsungがc)を選択すると予想していました。なぜならTizen OS用ブラウザがHTML5テストで好成績を収めていたからです。TizenブラウザをベースにAndroidに移植するのではないかと予想していました。
  4. 結果的にはSamsungはb)を選択した模様です。

それでこれは良いことなのか困ったことなのか

Android stock browserはバグが多かったり、サポートしていないHTML5, CSS3の機能が多かったりしたので、Androidをサポートする場合にはもともとかなり神経を使いました。Androidは古いバージョンが依然として使われていることも多いので、Androidをサポートする限りは新しい機能があまり使えないと覚悟していました。使うにしても、実機で十分にテストする必要がありました。

今回のSamsung Galaxy S4の標準ブラウザはChromeに似ているとはいえ、バージョンが古いものです。これほど古いバージョンについては、web上で情報を見つけることができません(例えばCan I useにも古いChrome Androidの情報はありません)。しかもテストするには実際にGalaxy S4を使うしかなく、他のデバイスで代用することができません。

Chromeに似ているので、Android stock browserよりはバグが少なく、HTML5やCSS3の機能が使えるだろうと期待はできます。しかしテストが面倒になった分、開発者にしてみればSamsung Galaxy S4の標準ブラウザは迷惑です。

やはり開発者の立場でいえば、総合的にはマイナスと言えるでしょう。

今後

今後もAndroid stock browserの開発が進まなければ、Samsung同様にChromiumをforkするメーカーは出てくるでしょう。どのバージョンをforkするかはそれぞれバラバラになる可能性があり、いろいろなバージョンのChromiumが混在する事態になりかねません。来年ぐらいになれば、ちゃんとwebに情報があるChrome version 27ベースのforkになるので、安定してくると思います。しかし現状では実機でテストしなければわからない状態と言えます。

Chrome version 27以降をベースとしたforkが増えれば、AndroidのHTML5, CSS3は大きく改善します。AndroidのChromeがAndroid 4.0以降でインストール可能とはいえ、実際に使われているケースは圧倒的に少数派です。大部分のユーザはAndroid 4.0以降でも標準ブラウザを使っています。それがChromiumベースになるのはありがたいことです。

まとめると、今後はAndroid stock browserが使われなくなり、Androidのブラウザ フラグメンテーションがますますひどくなります。しかしChromiumの高いバージョンがベースとなっていけば、web開発者としては実用上、負担は軽減されます。

AppleのIntentionとiOS7のデザインについて考える

iOS 7のデザインについて、以前にもこのブログに書きました。デザイナーの多くがiOS 7のデザインを酷評しているにもかかわらず、ユーザの多くは高い評価をしているという乖離が私にとってはとても興味深いと感じています。

これを考える上で、AppleがWWDCで公開したIntentionと呼ばれているCMの言葉が非常に気になっています。

the first thing we ask is
what do we want people to feel?
 
delight
 
surprise
 
love
 
connection

Appleが製品を作るとき(Designするとき)、一番最初に考えるのが“what do we want people to feel?”だとしたら、iOS7のデザインではどういう感情を持って欲しかったのだろうか?

iOS7のデザインの議論をしている人の中で、この点を述べている人はほとんどいません。デザインとしての統一性、バランスについて議論している人は多いのですが、そのデザインが人にどういう感情を持たせるかについては議論がないのです。

使い勝手について議論している人はいます。ボタンを立体的にすることによって、「これはボタンだよ」というのを強調しているのがiOS 6でしたが、iOS 7ではそれが無くなってすべて平面的になっています。そのため、どこがボタンかがわかりにくくなったという議論です。これは使い勝手の議論としては確かにそうなのですが、やはり感情の議論がありません。

私が知る限り、感情の点を挙げているのはMatt Gemmell氏だけです。彼はブログの中でこう述べています

iOS 7 is much, much lighter – in the colour sense, and consequently also in visual weight. Breathable whitespace is everywhere, and is used to unify and homogenise previously disparate interface styles.
 
The overall impression is of brightness and openness.

Where there were previously gloomy cubbyholes and low ceilings, there are now floor-to-ceiling windows, skylights, and clean surfaces.

昔からAppleを見てきている人は、Appleが一貫してUIの使いやすさにこだわってきた会社だと知っています。MacOS 1 – 9までは、コンピュータグラフィックスの能力が十分ではなかったこともあり、UIは必然的に平面的でした。アイコンもボタンも非常にシンプルでした。その分、デザインの一貫性を徹底させて、わかりやすいUIを実現していました。ただその一方でひどく地味で、Windows 95が出てきた頃には古くさくなっていました。

Steve JobsがNeXTで作っていたUIは、コンピュータグラフィックスの進化に合わせて徐々に写実的になってきました。写真的なアイコンを使い、立体的なUIになってきました。そしてそれはMacOS Xにも引き継がれました。

iOS6までは、NeXT以来の流れでUIがデザインされていた感じです。

iOS7はNeXT UIとの決別です。NeXT以来の写実的なアイコンとの決別です。そして古いMacOS以来の使いやすさへのこだわりとの決別でもあります。もちろん使いやすさを捨てているわけではないし、それは別の方法で確保すると思いますが、使いやすさよりもまずは感情を優先させているのではないかと思います。

かなり大きな違いです。