誰も見ていないインターネット広告

先日、叔父とバイオの買物.comの話をしていたら、いつものあれが飛び出しました。

「ネット広告は全然見ないよね!」と、とても純粋な声で言われてしまいました。

実際、ネット広告はよく見ているという人に僕はおおよそ会ったことがありません。妻に聞いてもそうですし、僕自身もネット広告をクリックした記憶は数えるほどしかありません。GoogleのAdwordsなら割とクリックしますが。

でも僕はインターネットでウェブサイトを立ち上げ、広告収入で食べていこうとしているわけです。ですから、この問題に正面からあたらなければなりません。

みんながネット広告と言うときには、ほとんど間違いなくバナー広告のことを指しています。そこで参考になるのは視線追跡調査の記事です。
バナーは目に入らないのか?
ビデオクリップ(僕のマックでは見られませんでしたが)もあるので、参考にするといいと思います。何をやっているかというと、ユーザにウェブサイトを見てもらいながら、その視線の動きを追跡して分析しています。そこからわかることは;

  • ネット広告部分に視線がいくことはゼロに近かった。ユーザがざっと拾い読みをする場合でも、また全文にしっかりと目を通す場合でも。
  • 検索結果が表示されるページに掲載されるテキスト広告、つまりGoogleのAdwordsのような広告は、そこそこユーザの目に入っている。(参考

MarketingSherpaのレポートでは;

  • スクロールしなくても良い位置にある広告であっても、見るのは60%のユーザのみ。
  • スクロールしなければならない位置の場合は、見るのは25%のみ。

Nielsenの調査では;

  • インターネット広告は新聞やテレビ、雑誌と比べると、顧客からの信頼が薄い。
  • 信頼度の低さはかなり深刻で、調査した媒体のうち、携帯電話へのメールに次いで下から2番目に信頼が薄かった。

また、Starcom, ComscoreとTacodaがスポンサーした調査によると;

  • 広告をよくクリックするユーザは全ユーザの6%であるが、総クリック数の50%を占めている。
  • 広告をよくクリックするユーザは25-44歳、$40,000ドル以下の収入の人が多い。
  • 広告をよくクリックするユーザはその他のユーザに比べて4倍もの時間をインターネットに費やすものの、ネットでの購入金額はこれと対応しない。またオークション、ギャンブル、就職斡旋サイトを好んで訪問する。

バナー広告に効果があるのかないのか。
僕は叔父と意見が同じです。バナー広告は見ませんし、僕らが対象としている顧客もまたバナー広告は見ないと思います。無理に見せようと思えば、何が起こるかというとバイオの買物.comの利用者が離れていくだけでしょう。

でも、メーカーは良い広告媒体が欲しくてたまりません。ブランド力はなくても優れている製品を、広く告知したいとみんな思っています。使い道に困っている広告宣伝費というのはかなりの金額存在しているのです。

ネット広告が思いの他に効果が上がらないという事実を直視して、新しい形態を真剣に模索しないといけません。もちろんアイデアはありませすが。

チラシと郵便物によるマーケティング(時代遅れ?)

何か新しい情報を顧客に伝えたいとき、バイオ研究用製品のマーケティングでは、未だにチラシと郵便物が主流です。

雑誌広告やインターネット広告というやり方もありますし、例えばNatureのメールアドレスなどを利用した電子メールによる告知というやり方も行われていますが、主流という訳ではありません。これらはどちらかというと時と場合によって使われるもので、主流は未だにチラシと郵送物です。

メーカーとして体感する効果が違うのです。チラシとか郵便物の場合は、それを見たと言ってくれる顧客からの問い合わせが入ってきます。今まで認知度が低い製品であれば、売り上げも確実に伸びます。それに対して、雑誌広告を見たという顧客が問い合わせてきた記憶というのはほとんどありません。インターネット広告に至っては皆無です。ですからチラシと郵送物を使うのです。

チラシを配布するときのコストというのは、単独でそれだけを配布するのであれば40-50万円あたりでしょうか。だいたい2万部から3万部を刷りますが、カラーで印刷であれば30万円程度、そして郵送代も馬鹿にならないのでだいたい上述の金額になります。印刷物の場合は印刷会社と校正を重ねないといけないので、だいたい1月のリードタイムが必要になります。結構馬鹿にならない金額ですが、雑誌広告も1月で掲載料が20-30万円とられます。効果を考えるとチラシの方がずいぶんとよく見えます。

ただチラシを誰が配布するかという問題があります。ある程度確立したメーカーであれば、代理店との付き合いがある程度固まっているので、代理店にチラシを配ればだいたい配ってくれます(とメーカーは信じています)。代理店は日本中の研究室に網を張っているので、だいたいの研究者にチラシが配られてくれているかなとメーカーは期待しています。現実はもう少しややこしくて、代理店だって特定のメーカーに肩を入れることがありますので、場合によっては自分が作ったチラシは積極的に配ってくれないかもしれません。

郵便物はダイレクトに顧客に届きます。大きいメーカーはだいたい季刊誌というのがあって、これは代理店から配布するかダイレクトに郵送します。この季刊誌は通常フルカラーで、やはり2万から3万部を刷ります。印刷のお金とこれを郵送するお金をあわせると、一回つくって配布するのに200万円から300万円はかかっていると思います。でも結構学術的なことも書いてあって、顧客が喜ぶ内容なので、メーカー側は効果は大きいと信じています。ブランドイメージの維持にも重要と位置づけられています。ちなみに製品カタログもだいたい3万部を用意していることが多いと思いますが、フルカラーの会社が多いこと、さらに週百ページになることがあるので、これは1回出すのに2000-3000万円かかっています。

もう一つ参考として、分子生物学会などのランチョンセミナー。あれは会場のむちゃくちゃ高い弁当を買わされるということもあって、全体で200万円弱になると思います。自分で会場を借りてセミナーをするとずいぶんとこれよりは安くなります。最近はやってくれるメーカーが少なくなってきているようで、学会企画側が苦労しているとか。

さて本題に戻ります。

チラシと季刊誌にかなり多くのお金が使われていることを紹介しました。でも、そんなにお金をかけた時代遅れのことをしないと顧客である研究者に情報が伝わらないのでしょうか。しかも先ほどもお話ししたように、チラシというのだ代理店経由での配布であり、代理店の思惑が入ってしまいます。もっとストレートなやり方は無いのでしょうか。

他の業界であれば、新聞の折り込み広告、リクルートのようなところが作っている雑誌、価格.com。。。

正直、メーカーでマーケティングを担当していたものとして言えば、いい媒体が無いんですよね。誰か作ってほしいーーー、って思って、いま、自分でそういうのを作ろうとしています。

Innovator’s Dilemmaとバイオの製品

Charlie Woodのブログに、iPhoneがなぜ ‘The Innovator’s Dilemma’に陥らないかを分析しています。

‘The Innovator’s Dilemma’(イノベーションのジレンマ-技術革新が巨大企業を滅ぼすとき)というのはClayton Christensenが著した本で、イノベーションを続ける優良企業が、それにも関わらずどうして新興企業に市場を乗っ取られ、しまいには独占されるかを分析しています。僕もこの著者の本を2冊ほど読んでいますが、非常に論理的な議論をしつつ、直感とは全く異なる結論を証明していっているところに感動しました。またこの本は単なる分析に終わらず、将来を予測するためのフレームワークも提供しているところも特徴です。

簡単にChristensenの数冊の本の主張を紹介しますと

  • イノベーションを繰り返していくと、’Good Enough’(十分な性能)に到達します。’Good Enough’に到達すると、それ以上いくら性能を上げても、顧客にとっては役に立たなくなってきます。これがコモディティーとよく言われる状態です。
  • ‘Good Enough’の状態に達すると、安値販売で勢力を伸ばそうとする企業が参入してきます。
  • 安値販売する企業が参入しても、優良企業は安売り合戦には参加しないことがあります。そうではなくてイノベーションを繰り返し、よりハイエンドの顧客をターゲットに絞って製品開発を進めていきます。安売り市場は捨てて、ハイエンドに向かっていきます。
  • ただし優良企業が安売り合戦への参入を見送るかはケースバイケースで、その産業構造に依存します。安売り合戦をすれば既存の企業は必ず収益を悪化させますので、なるべくならハイエンドに逃れます。ただ産業構造的に直接対決が避けられない場合は全面対決をし、収益は悪化させますが最終的に生き残ることが出来ます。
  • 安値販売する企業は次第に力をつけて、次第にハイエンド製品を製造する能力を身につけます。そうすると既存の優良企業はさらにイノベーションをエスカレートさせ、ますますハイエンドに絞り込んでいきます。でもこれは必ず限界があるので、最後には安値販売する企業に市場を乗っ取られてしまいます。この安値販売する企業の参入を可能にするイノベーション、これをChristensenは’Distruptive Innovation’(破壊的イノベーション)と呼んでいます。
  • ハイエンドに逃れるのでもなく、そして安売り競争に入るのでもなく、高収益を持続させていく方法はあります。それは’non-consumer’(いままで対象にならなかった顧客)を顧客にするようなイノベーションをすることです。

iPhoneに関してのCharlie Woodの分析では、Appleがデザインを重視していているために、Innovator’s Dilemmaが当てはまらないとしています。つまり、’Good Enough’なデザインというものは無いとしています。

それに対して数多くのコメントが寄せられています。例えば、単純に今のデザインの水準が’Good Enough’とはほど遠いのではないかというもの。つまり今までの製品のデザインは、特に使いやすさという意味ではひどかったと。ただ、消費者はそれにまだ気づいていなかったという論点です。

また別のコメントの中で、AppleがDisruptive Innovationを仕掛けていると論じているものもあります。

iPhoneについてはCharlie Woodのブログに任せるとして、僕はバイオの話をします。

バイオで’Good Enough’状態に達している研究用製品

山ほどあります。

制限酵素、PCR酵素、バッファー、フェノールなどん単純試薬、チューブ、プレート、培養フラスコなんていうのはわりと当たり前に思いつきます。

その他、安売り競争が起きてしまっているものも’Good Enough’なコモディティーになっていると考えていいでしょう。リアルタイムPCRの試薬と機器、受託合成DNA、DNAシークエンス。siRNAなんかもこれに近くなっているように思います。

面白いことにその技術が新しいかどうか、あるいはその技術が革新的だったかは全く関係ありません。’Good Enough’なものが、他社でもどれだけ簡単に作れるかがコモディティーになるかならないかを決定しています。

バイオの業界で面白いのは、安売り企業が参入してきても、既存企業が割と応戦していることだと思います。ハイエンドに逃れようというメーカーはほとんどないと思います。例えばリアルタイムPCRでは、ABIはちゃんとローエンド機器を売り出しました。PCR酵素に関して言えば、Invitrogenも特許に引っかからない激安Taqを発売しています。そしてほとんどのメーカーはがんばって割引をしてくれますし、安売りキャンペーンを盛んにやってくれます。

唯一ハイエンドに逃れる気配を見せるのは、バイオをサイドビジネス的に考えてしまっている複合的な巨大企業ではないでしょうか。ちなみにこのような会社の社内事情は、重力が反対向きに働くような異次元空間に入ったかのようで、本当に面白いです。

‘Non-consumer’にアプローチしてDilemmaを逃れる方法

パソコンやスマートフォンを必要としていなかった、もしくは使いたかったけどハードルを感じていた人に対して、それを使わせてしまうだけのデザイン性と使いやすさのある製品を提供する。これが一貫したAppleのやり方のように思います。これは初代のMacに始まり、iPhone, iMac, iTunes, iPod, iPhoto, iMovieなどにも引き継がれている考え方です。

バイオの世界でよく似た例がABIのStepOneだと思います。

  • オールインワン:パソコンをつなげなくてよい。LCDタッチスクリーンとUSBドライブでセットアップと解析が行える。
  • 専用ホームページとソフトウェアでセットアップをサポート。試薬の注文も可能(アメリカ)
  • 初心者が使うことを想定したシステム

このコンセプトはすごくいいと思います。他社が安売りしても、このような使いやすさで’non-consumer’を相手に出来るのであれば、心配することは無いように思います。

自分が研究しているときは、新しい機械の操作方法を覚えるのがおっくうでした。ほとんどの機械は操作がわかりにくいし、壊してしまったらまずいと思って心配だし。サンプルも無駄になっちゃうし。だから、結局は新しい機械を使わずに、今までの方法ですませてしまったりするんですよね。面倒な方法でも。

Appleと同じだことだと思います。機械とソフトウェアの使いやすく、ウェブサイトが充実、カスタマーサポートによる対応も迅速で適切というメーカーがあれば、今までそういう実験を避けていた顧客も使ってくれるようになるはずです。

それが出来ないメーカーはInnovator’s Dilemmaにはまって、安売り競争と開発競争に深く深く沈んでいくだけでしょう。

オンライン広告が好調

Google, YahooそしてMicrosoftのオンライン広告収入が好調で、アメリカの景気が悪いにも関わらず30%程度の成長を見せていることについて、Adage.comに記事が掲載されていました。詳しいことはこの記事に譲るとして、いくつか気になったポイントを紹介したいと思います。

英国のオンライン広告の好調ぶりを以前にもこのブログに紹介していますが、今回のAdage.comの記事は、アメリカにおいても同様にオンライン広告が好調であることを紹介しています。その理由について、1) インターネット広告の方が一般に安いこと、2) インターネット広告の方がターゲットされていること、3) インターネット広告の方がよりトラッキングしやすいことを挙げており、これも以前取り上げた記事と同じです。38%のマーケターはオンライン広告への投資を増やし、一方で36%のマーケターは伝統的なメディアの広告を減らす予定であることが今回の記事で紹介されています。

景気が悪くなっている結果、マーケターは無駄を省き、既に購入を検討している顧客(in-market customers)に重点を移していることも紹介されています。このことはセールスファネルの一番下に位置する顧客層に体する広告の機会を提供する、市場を狭くターゲットしたバーティカルなサイトに有利だとしています。Vanity Fairなどのニュースサイトよりも、例えば新車・中古車の価格比較サイトであるedmonds.comに広告を掲載する方が、既に購入を検討しているin-market顧客を捉えやすいと解説しています。

その一方でバーティカルなサイトであっても、例えば医学情報サイトのWebMDの広告収入の40%は医学と直接関係のない業界からの広告なので、この40%の分の広告収入は2008年には減少していくことが予想されるとも紹介しています。

さて、バイオの業界ではどうでしょうか。

少なくとも日本のバイオの業界が不況と呼べる状態にあることは間違いないと思います。したがって同じようにインターネット広告に力点が置かれていく土壌はあります。しかし以前にも話していますが、バイオ業界では製品情報のインターネットサイトが十分ではなく、広告を掲載するべきサイトがほとんどないという状態です。したがって、本来ならばインターネット広告に収入が偏っていくべきなのに、古いメディアに相変わらず広告費が使われています。またより短期的な効果を得るために、そもそも広告にお金を使うのではなく、営業にお金を使っていく方向に偏っていってしまっています。

これは別に日本だけでなく、アメリカでも同じだと思います。製品比較サイトが実質Biocompare.comだけになってしまっているのは、1.5兆円強の市場規模を考えれば寂しい限りです。

マーケティングにおける製品のカニバリゼーション

マーケティングではカニバリゼーションという用語があります。マーケティングという職業をやっている人に中には、自社製品間のカニバリゼーションはなるべく避けるべきだと考える人がいるようです。

例えばGoogleするとこんな感じ;

  1. http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_262.html
  2. http://mbasolution.com/onepointmba/lesson60.htm

詳細はお話しできませんが、前職でも新製品発売時にカニバリゼーションが話題になりました。その新製品が旧製品の売上を奪ってしまうのは問題だというのです。だから新製品の用途をマーケティング的に制限して(いわゆるセグメント分けとか差別化とかいうやつです)、旧製品の売上を守ろうという議論がありました。

もっとひどいのは、それができないのならば、今までのお客様には新製品のことはなるべく黙っていようという話がまことしなやかに行われていたことです。

でも誰が見ても、大部分の人にとってあらゆる用途で新製品の方がいいのです。なのにどうして新製品のことを黙っていようというのか。マーケティングを中途半端にしか勉強していない人の理屈というのは、ときとして摩訶不思議な結論を導いてしまうようです。

マーケティングをもっとしっかり勉強すると、別の見方ができるようになります。ということで、Apple社のSteve Jobsはどう考えているかを紹介します。USA Todayとのインタビューでの言葉です。

 Q: The iPod Touch is very similar to the iPhone — all that’s missing is the phone and built-in camera. Are you concerned about cannibalization?

A: If anybody is going to cannibalize us, I want it to be us. I don’t want it to be a competitor.

和訳すると;

Q(記者): iPod TouchはiPhoneと非常に似ているように思います。電話機能とカメラが無いだけです。自社製品間のカニバリゼーションは気になりませんか?

A(Jobs): もしどこかの製品がiPhoneとカニバリゼーションするのなら、それはうちであった方がいい。競合他社にカニバリゼーションされて欲しくはない。

 

ちなみに上記の前職での新製品ですが、日本だけはカニバリゼーションを気にしないという戦略をたててやったこともあってか、他国と比べてもすごく良く売れました。

もう一つ、カニバリゼーションを防ぐ戦略をとると、マーケティングと営業の意思疎通が難しくなります。カニバリゼーション防止戦略のもとでは、回りくどい差別化ポイントを説明しないといけないし、訪問する顧客もうまく選ばないといけません。それに対してカニバリゼーションを無視すれば、「とにかく多くのお客様が望むものを提供しよう」という単純な戦略を採ることができますし、単純なメッセージをなるべく多くの人に伝えればいいだけになります。戦略が単純になるので、マーケティングと営業が一体となって活動しやすくなります。

これを何回説明しても、わかってくれない人はわかってくれないんですけどね。中途半端なマーケティングの知識がいかに有害か、その良い例だと思います。

Invitrogenの2008 第1四半期業績 

Invitrogen社の2008年第1四半期(1月から3月)までの業績が報告されましたのでポイントを紹介します。詳しくはPress Releaseを参照してください。

  • 売上は2008年Q1 $350 million (362億円)。これは2007年Q1の$309 millionと比較して13.5%の成長。ドル安になったことを差し引いて考えても7%の成長。これは価格と売上量が共に上昇したことが原因。製品群や地域を問わず、成長が見られました。
  • 粗利率は67.8%となりました。これは利益の高い製品が売れたこと、血清の利益率が改善したこと、それと為替の影響です。営業利益率は過去最大の28.7%に達しました。R&Dは売上対比で8.4%、営業マーケティングは19.6%。
  • 地域ごとで見ますと、アメリカ大陸で6%成長、ヨーロッパで21%成長、アジアパシフィックで19%の成長が見られました。インド、中国と韓国は共に二桁の成長を示し、それに対して日本はわずかに成長しました。
  • 電子商取引による売上はアメリカ大陸の売上の61%に達し、世界で見ても48%となりました。ちなみに2007年度の業績発表ではIT投資が年間で$83 million(85億円)と発表されていて、売上の6.5%をITに投じている計算になります。

感想

日本での売上のデータはありませんが、これだけドルに対して円高になっている訳ですから、「日本はわずかに成長」というのは円建てではフラットもしくは微減かもしれません。

それにしてもすべての製品が成長しているというのは世界市場全体の力強い成長を顕著に示しています。特にヨーロッパの成長は驚異的ですね。日本だけが取り残されてしまっている感じがあります。なお、Invitrogenは2007年業績も好調で、売上は11%成長させています。いま日本は世界に対して毎年10%弱ずつ取り残されています。これはInvitrogenだけでなく、バイオ全体の話です。

そして電子商取引がアメリカで61%にも達していることも驚異的です。ブログでも以前に話しているように、代理店そのものはうまくやると価値はあると思いますが、日本で何かが起こらないと、世界の流れに単純に飲み込まれてしまいそうな勢いです。単純に飲み込まれるというのは、代理店を無くして、研究施設がダイレクトにメーカーと取引をする形を強制されるということです。

用語解説

売上数字を見慣れていない人のための解説です。

粗利益
売上から製造原価を差し引いたもの。製造原価というのは、原材料や工場で働いている人間、工場維持費などの費用です。おおざっぱな考え方としては、原価は製造数量に比例するとします。ですから売れれば売れるほど儲かる部分です。

 

営業利益
最終的な利益に近い数字です。粗利益は製造原価だけを差し引いていますが、営業利益を計算するときはR&Dの費用、営業やマーケティングの費用、IT費用や総務的な費用も差し引きます。
粗利益、営業利益の水準
業界によって違いますが、例えば武田薬品の2007年3月期は粗利率が78.8%、営業利益率は35.1%、トヨタの平成15年度は粗利率が18.5%、営業利益率が9.6%、ソニーは2007年度はエレクトロニクスで営業利益が8.0%、ゲームで2.2%、映画で5.9%となっています。例えば国内製薬業界上位13社の平成18年3月期で見ると、粗利は平均で68.6%、営業利益は平均で28.8%となります。

イギリスのインターネット広告は’09にテレビ広告を抜く

Advertising Ageの記事、”U.K. Online Spending to Surpass TV in ’09“。

Pricewaterhouse CoopersWorld Advertising Research Centreと合同で作成されたInternet Advertising Bureauのレポートによると、景気悪化の影響でインターネット広告にお金が流れているとのことです。

2007にインターネット広告売上は38%上昇して5.6兆ドルに達し、2008, 9年と引き続き伸びて、テレビ広告売上の8兆ドルを超える見通しであるとのことです。

このようにインターネット広告が伸びているというレポートは決して珍しいことではないのですが、面白いのはInternet Advertising Bureau CEOのGuy Phillipsonの以下のコメント;

“Online budgets are pretty much ring-fenced. Marketers can see exactly where their money is going, and it’s the last medium to have budgets cut. Given a choice between traditional and online media, you’d maintain your online spend.”

「オンライン広告の予算はかなりリスクフリーです。広告主はオンライン広告のお金がどこに使われているかが正確に把握できるので、予算削減の対象とはなりにくいのです。従来の広告媒体とインターネットのどちらの予算を削減するかを判断するとしたら、インターネット広告予算は維持して従来のものを削減するでしょう。」

教訓: 景気が悪化している局面において、広告予算をどこに投じるかの判断は「宣伝効果」の大小によって決まるのではなく、「リスク」の大小によって決まります。透明性が高く、「リスク」が少ないのがインターネット広告です。

 

さてバイオ業界に話を転じます。

日本でのバイオ業界は景気が悪化しています。したがって広告宣伝などの予算は、より効果が見えやすいものに流れようとしています。しかし、インターネット広告には流れていません。どちらかというと、今までの広告宣伝費は営業人員の増加に使われています。どうしてそうなってしまっているか、自分なりの意見をあげます。

  1. 透明性の高いインターネット広告をやってくれるインターネット媒体が未発達: ネイチャーや羊土社などはインターネット広告を募集していますが、クリック数すら教えてくれません。これではインターネット広告の良さが活かされません。
  2. インターネット上で製品のディスカッションがない: 例えば家電製品やパソコンであれば、各製品の善し悪しがインターネット上で盛んに議論されています。価格コムの口コミやアマゾンのレビュー、さらに個人のブログなどで使用体験などが多く掲載されています。その一方でバイオ研究用の製品のディスカッションはほとんど行われていません。したがって広告を貼るべきウェブサイトそのものが少ないです。
バイオ業界のインターネット広告が広まっていかないというのは結構重大な問題で、儲かるか儲からないかですむ話ではありません。例えば民放のテレビは主に広告で収入を得ていますし、多くの雑誌と新聞も広告収入なしでは成り立ちません。Google, mixi, Yahoo, Gmailなどのインターネットサービスも収入のほとんどは広告です。インターネット広告が盛んになってくれないと、ネット上の民間のバイオ関連サービスが立ち上がりません。
もちろん国家予算や大学の研究の成果として、NCBIのような学術的なウェブは出来上がりますし、いいものができてくるでしょう。
しかし、国家主導の研究だけでは先端的な研究は進まないのです。一番身近な例はヒトゲノムプロジェクト。ABI無しでヒトゲノムプロジェクトはあり得なかったのと同じように、民間のインターネットサイトが広がっていかないとバイオでのインターネット活用は尻すぼみになってしまうと思います。
今の状態をなんとか変えて、バイオ業界でのインターネット広告を盛んにしていきたいですね。

AISAS理論の近未来

ネットレイティングス株式会社社長の萩原雅之氏のCGMに関する記事を先日読んで、AIDMAに変わるAISASモデルについて始めて知りました。僕自身は欧米のマーケティング情報を勉強していることが多いので、日本発のAISASという言葉は始めて知りました。AIDMAやAISASがどういうことかはその記事に任せて、僕はAISASの真ん中のS (Search)について話したいと思います。

AISASモデルそのものついて詳しく紹介しているページとしてはNBonlineのネットマーケティング用語集のAISASのページが参考になるかと思います。その記事を引用すると、

新しく加わった「Search」は、Yahoo!やGoogleなどの検索サービスの利用が一般化し、商品やサービスに関心を持った消費者が、「まずはネットで調べてみる」行動パターンを指す。最後の「Share」は、ブログやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、クチコミ・サイトなどを介して、消費者同士による商品の使用感や感想などの情報交換・共有が日常化してきた状況を表す。どちらも2002年ころから顕在化してきた消費者の行動パターンである。

さて、この紹介については全くその通りだと思いますし、消費者がネットで調べてみるという行為は非常に一般化していると思います。しかし、消費者がネットで調べる行為を「Search」とうい言葉で表していることには多いに疑問を持ちます。

確かにYahoo!とGoogleが「Search」を中心とした広告ビジネスモデルを構築し、これが非常に注目されていることが「Search」という言葉を使った大きな理由だと思います。「Search」で自社の立場を有利にすることを目的とした、SEOという大きな産業も現れました。その意味でネットでの検索を「Search」というひとことでまとめてみたくなる気持ちはわかります。

しかし消費者の目的は「Search」ではなく、「情報を調べる」ということを忘れてはいけません。そして情報を調べる方法がYahoo!やGoogleに代表される「Search」に限らないことを理解しないといけません。

例えば、僕が’SEO’という言葉について調べたいとします。そのときにGoogleで’SEO’と検索してもいいのですが、そうすると’SEO’サービスを提供している会社のウェブサイトへのリンクばかり出てきて、肝心の’SEOとは何か’を中立的に教えてくれそうなサイトが見つかりません。そこで最近ではGoogleで’SEO’と入力せずに’SEO Wikipedia’と入力するようにしています。なぜならWikipediaであれば’SEO’について基礎から詳しく解説している比較的中立的な記事があると期待できるからです。

Page Rank技術などによって飛躍的に性能が向上したとはいえ、GoogleやYahoo!の「Search」はまだまだ利用者が目的としている情報を短時間で的確に提供するサービスにはなっていません。それに対してWikipediaは、適切な記事さえあれば、目的とする情報を非常に短時間で提供してくれます。ですから、「情報を調べたい」と思ったときはまず最初にGoogleをするのではなく、まずWikipediaで調べるということが今後増えてくると思います。

Wikipediaは一般的な情報の記事が多いのですが、各メーカーの製品についてはあまり書いてありません。各メーカーの製品について同じように情報を集めたい場合に活躍するのがAmazonや価格.comのレビュー記事でしょう。

こう考えるとAISASの真ん中はSearchのSではなく、例えばInvestigateのI + CompareのCと考え、AIICASなどとした方がいいように思います。

また僕の考えてでは、SEOなどのSearch中心の技術はあくまでも過渡的な技術であって、最終的にはWikipedia, Amazonや価格.comのように情報が最初からある程度整理されたものが消費者に大きな影響を与えていくのではないかと思います。

実は同じようなことはバイオインフォマティックスの世界で10年ほど前に既に起こっています。コンピュータが全自動で情報をまとめたり優先順位をつけていくことには限界があること、人間が意味を理解しながら一つ一つ整理していかなければならないということが90年代後半にははっきりしてきました。そこで人間によるキュレーションやアノテーションのプロジェクトが進められ、成功しています。同じようにGoogleやYahoo!の全自動サーチ技術の重要性が相対的に減少し、人間が編集したWikipedia, Amazon, 価格.comのようなサイトが主流になっていくのではないでしょうか。

ライフサイエンス業界を元気にするヒント(前アップルCEO 原田泳幸インタビューから)

Macで知られるアップルコンピュータは1990年代の大スランプから見事に復活し、今ではアメリカでMacの売上が全パソコンの21%にまでシェアが回復したそうです。

その成功は決して平坦な道のりではなく、特に最初の頃は非常識とも自殺行為とも思えることをかなりやっていました。例えば販売店を大幅に減らして、大部分の販売店はMacを売ることができなくなりました。またApple Storeを作ったときも、当時はDELLの電話・インターネット販売が主流と考えられていたので、多くのアナリストに非難されました。

しかし、その一見非常識と思える行動が正しかったのです。間違っていたのはマーケティングの常識の方でした。前アップルのCEO 原田泳幸のインタービュー記事が会ったので、そこからいくつかピックアップします。

次の年にiMacを発表する。それまでに相当、販売店のインフラの改革をおこなったり、サプライチェーンのインフラを整えていたから、大成功した。

Steve JobsがAppleに復帰した直後にやったことの中に流通とサプライチェーンの大幅な見直しがありました。これは全世界規模で行われたことで、日本はその流れを踏襲したまでですが、日本の商慣行という大きな壁がありましたので、それを実施するのは大変なことだったと想像されます。でもそれを日本でもしっかり行い、原田氏がおっしゃる通り後の成功の基盤が築かれました。

教訓: 地味ですけど、サプライチェーンのインフラの整備は成功の土台となります

40社以上あった1次卸店を4社に減らして、3000店舗以上あった販売店を100店舗に減らしました。これはとんでもない改革ですよ。

 雑誌を増やしたこともそうですし、ソフトの数を増やしたこともそうですし、販売店インフラのリストラをやったのもそうですが、限りなく経営資源をお客さんのために使うということですね。販売店にお金をあげても、店が多過ぎれば、ディスカウント競争をやってそこで消えるわけです。従って、販売店のマージンを少なくして、その分、お客さんのためにフリーセールス、ポストセールスにお金を使う、そのようにシフトをしていった。

当時のパソコン業界はコンパック・ショックの影響がまだ強く残っており、量販店でどんどんディスカウントをさせていかないとパソコンは売れないと考えられていました。アップルに対しても自社でパソコンを製造することをやめて、クローンメーカーにライセンスさせるべきだという考えが主流で、そうやって安いパソコンを売らないと生き残れないと考えられました。その中で販売店のマージンを少なくして、ディスカウントを抑制して、高い価格でパソコンを販売させるという戦略は自殺行為にも見えました。

でもアップルがやったのは、ディスカウントするのではなく、良質のサービスを提供する環境を整備することでした。マックの販売権のある販売店にはマックの専門家集団を配置させ、きれいにマックを陳列することを義務づけ、マックを見にきたお客様が良いサービスを受けられるようにしたのです。その環境が用意できない販売店はマックが売れなくなったのです。そしてその環境を用意できた販売店はディスカウント競争に巻き込まれないですむために、投資した分の利益をきっちり回収できたのです。

この活動は後のApple Store(直営店)に引き継がれて、アップルのブランドイメージが世界一になることに最終的につながりました。

教訓: ディスカウントでお金を失うのではなく、お客様の役に立つことにお金を使いなさい

これをライフサイエンスに当てはめると、以下のようになるのではないかと思います(メーカーの立場で書いています);

  1. サプライチェーンを見直しましょう。土台が怪しいメーカーが多すぎます。代理店との関係も考え直すタイミングです。
  2. 製品が話題になる環境を作りましょう。パソコン雑誌みたいなものはライフサイエンスには無いけれども、お客さんとか第3者が製品を語り合える環境を作りましょう。Web 2.0をうまく使いこなしましょう。
  3. ディスカウントキャンペーンとか営業強化、代理店政策にばかりお金をかけるのではなく、ポストセールスサービスなどを充実させて末端顧客が喜ぶサービスを提供しなさい。そのためには少数の代理店に徹底して教育をしてあげるとか、自社の営業がちゃんと製品をサポートできるようにしてあげるとかです。
  4. お客様のトラブルシューティングができるぐらいの営業を増やしましょう。研究者は「営業」とは話したがらなくても「学術」とは話したがるという話はよく聞きます。でもそうじゃなくて、どの「営業」でも「学術」並にお客様をサポートできるようにしないと行けません。Apple Store(直営店)のGenius Barのように。
その中で「バイオの買物.com」は2.と将来的には4.あたりに貢献できればと思っています。

ミスを機会に顧客との信頼関係を作り出す

表題の「ミスを機会に顧客との信頼関係を作り出す」という考え方は別に新しいものではなく、これに関する著書は割とよく聞きます(僕自身は読んだことはありませんが)。どっちかというとミスに対してというよりは、その後に発生するクレームに関することが多く書かれているという印象はありますが。

今回は僕が購読しているブログにたまたまNetflix Says They’re Sorryという記事(英文)があったので、取り上げたいと思います。この記事で紹介しているのは、ブログの著者がウェーターをやっていたとき、クレームを上手に処理するといつも顧客が感心してくれてチップが弾んでいたそうです。そこで今度はさらに一歩先にいって、顧客が気づかないようなミスであってもわざわざ教えていたというのです。

さてライフサイエンスの業界では、顧客である研究者は一般にメーカーの技術サポートをあまり信用していなくて、「どうせわかっていない人が電話に出ているんでしょう」と考えている人が多数派ではないかと思います。メーカーに電話をするというのは最後の手段みたいなところがあって、簡単に別のロットと交換してくれそうなときとか、あまり技術的ではない質問のときに限って電話するという感じです。少なくとも僕を含め、何かうまくいかないときにメーカーに電話する人は僕の周りには一人もいませんでした。

このようにメーカーと研究者が離れてしまっている状態というのは、もちろんあるべき姿ではありません。製品で問題があったときには研究者がすぐにメーカーに連絡してくれるような、研究者がメーカーを信頼してくれるような関係が本来は理想的です。

そのような関係はもちろん簡単には築けるものではありません。でもバイオの業界ではこのブログに書いてあるような「ミス」というのは結構頻繁に起こります。社内システムがしっかりしていないことが多いので、納期遅れや小さな不良品、リコールというのは日常茶飯事です。ミスにうまく対応するにはもちろん人的リソースをしっかり割くことが重要ですが、それを優先課題と位置づけてきっちりやれば、「ミス」から逆に顧客との信頼関係を築く機会はいくらでもありそうです。

僕がメーカーの日本支店を経営していたら、研究者の技術サポートが十分にできる部隊をお金をかけて作り上げ、「ミス」を利用して研究者と会話する機会を作り出して、研究者の間で話題になるぐらいの対応をしていくのがいいと思いますけどね。僕がメーカーに勤務していたときは、ボスはそのリソースの必要性を全然理解してくれなく、結局は何もできずじまいでしたが。