ChromebookがNetbookと同じ道をたどるのは割と明白

AcerのChromebookのUSでの販売が好調だという記事が出てきました。

さて、関心事は果たしてMicrosoft Windowsが廃れて、代わりにGoogleのChrome OSが主流になるかどうかということです。

これに関しては数年前にNetbookの例がありますので、答えは割と簡単に出ます。

「仮にChromebookが成功しても、Netbook程度で終わる」というのはかなりの確度で言えます。

Microsoftが反撃するというのが予想されるシナリオ

今はChromebookが売れ始めたばかりなのでMicrosoftは静観しています。しかしもしも売れ続ければMicrosoftは反撃に出ます。おそらくはNetbookの時に低価格のOSを提供していたのと同じ戦略で、低価格PC用のOSを提供し始めるでしょう。

Netbookの時は、Linux搭載Netbookのシェアが増えるのを阻止するため、Netbook限定でWindows XPを提供したり、Windows 7 Starterを提供したりしました。Chromebookに対してもMicrosoftは同じ戦略をとるはずです。今話題になっているAcer C7 ChromebookはIntel Celeronが搭載されていて、RAMも2G載せています。ハードディスクも320Gあります。十分にWindows 7を動かすことができますし、Windows 8だって動きます。Windowsを搭載する上での技術的な障害はありません。ですから反撃は技術的に可能です。

残るのは価格戦略の問題です。Microsoftが反撃する上での価格戦略上の障害があるのかどうか。AcerはC7 Chromebookを$199-$229で販売するそうですが、品質的には決して十分なものではないようです。Amazon.comで見ると、例えばAcer Aspire Oneとほぼ同等の性能でこっちは定価が$330、Amazonでは$280で販売しています。価格差は大きくありません。Microsoftがより積極的な販売戦略をたて、なおかつSkyDriveの無料使用分を付ければ十分にChromebookと価格で競争できます。しかもWindows 8を搭載したまま。

したがって今回は、もしMicrosoftが反撃を開始するとすれば、Acerなどの低スペックモデルに割安でWindows 8を供給し、そしてSkyDriveの無料使用分を追加する形で反撃することが十分に予想されます。Google Docsの対抗製品であるWindows 365の無料使用分を付ける可能性もあります。

もしMicrosoftが反撃してきて、Chromebookが厳しいという状況になってくれば、Googleは最近お得意の赤字戦略に打って出るはずです。Nexus 7タブレットやNexus 4スマートフォンで見せている戦略です。特定のメーカーと組んで、赤字をかぶる価格でより積極的な低価格品を出してくるはずです。Netbookの頃との一番の違いはここです。Netbookの時は赤字をかぶる会社は通信会社でした。E-Mobileなどと契約すれば本体価格を無料にしてくれるものがありました。Googleが赤字をかぶる覚悟でいるというのはNetbookの時にはなかったものですが、この業界は常に赤字をかぶるつもりでいる会社はいますので、最終的にはNetbook時代とあまり変わらなくなる可能性があります。

結論としては、Microsoftが反撃することは十分に可能であり、Chromebookが売れ始めれば早めに反撃を開始すると予想されます。Googleは平気で赤字をかぶる会社ですが、MicrosoftもWindowsの市場を奪われるわけには行かないので積極的に最後まで戦うはずです。最終的にはChromebookを製造販売するメーカーが息切れをするだろうと予想されます。

どうしてiPadに対してMicrosoftは反撃しなかったか

iPadはかなりWindowsを脅かしていますが、Microsoftは十分な反撃ができていません。なぜならばハードウェアが全然違うし、操作性も全然違うからです。Microsoftはおそらく十分に脅威を認識していたと思います。しかし正面から反撃する手立てがなかったのです。技術的に反撃できませんでした。iPadの類似品が作れませんでした。またGoogleみたいにiPadをそっくり真似ることをしないのは、Windowsとの関係を考えなければならないからです。この面からも類似品を作るのは困難でした。

それに対してChromebookは技術的には容易に反撃できます。WindowsやOfficeなどの戦略との関係を考えても、反撃するのは整合性があります。問題は価格戦略だけですが、これは危機感の問題です。危機感を持っていれば利益を圧迫してでも反撃に出ます。

Microsoftの牙城はどうすると崩せるのか

Microsoftの牙城を崩す試みは今まで何回となく起こっています。古くはシンクライアントがありました。Netbookも当初はLinuxを搭載する動きがあるなど、Windowsに対抗する面がありました。

でもWindowsは少しも揺るぎませんでした。なぜか。

実は1984年に若かりしBill Gates自身が語っています。

To create a new standard, it takes something that is not just a little bit different. It takes something that is really new, and really captures people’s imagination.

Chrome OSはそのレベルには遠く及びませんが、iPadは届いていたということです。

MS-OfficeがLotus 1-2-3に勝ったのはなぜか?

昔はオフィスソフトウェアといえば、Lotus 1-2-3やWordPerfectが圧倒的なスタンダードでした。MicrosoftはMS-Officeでそれをひっくり返しました。したがって市場をひっくり返すことは決して不可能ではありません。

しかしそのためにはパラダイムシフトが伴う必要があります。MS-Officeがスタンダードを奪った時のパラダイムシフトはWindows 95です。GUIが一気に普及しました。それまでのDOSとは全く違う、画期的に違うUIが生まれ、そしてMacintoshでGUI開発の経験を積んでいたMicrosoftは一気にPCの世界でもオフィスソフトウェアのトップメーカーになりました。

Bill Gatesが自ら語ったように、10年後の画期的なGUIの変化にともなってMS-Officeが一躍スタンダードになったのです。

このようなパラダイムシフトは今、PCの世界では起こっていません。Chrome OSがそれを起こす力もありません。