Facebookの実名主義がとても大切な理由

斉藤 徹さんがブログ”In the looop”でFacebookの実名主義の効果を解説していました。

なぜ、Facebookだけが、キャズムを楽々と超えるのだろうか?

私はほぼ完全に同じ意見です。

私の理解するところでは、要点は以下の通りです:

  1. Facebookがこれだけ普及する理由は実名制。実名制ソーシャル・ネットワークだからこそ可能となる「人物探索機能」と「メッセージング機能」にポイントがある。
  2. Facebookでは、実名制だからこそ、旧知の友人などをすばやく探し出すことができる。これはmixiやTwitter、さらにはGoogleでも非常に難しい、つまり今までのWebサービスでは困難だった。
  3. 「メッセージング機能」は友人に限定されているのではないので、インターネット「住所録」「電話帳」のように使える。これが充実することによって知人を探しやすくなり、連絡を取れるようになる。

ただしもう少しキャズム越えの戦略について、顧客セグメントを掘り下げた議論さあっても良かったと思います。

Facebook mask

顧客セグメントから考えた解釈

このブログでも紹介されているキャズム思考は、キャズムを越えるために採るべき戦略は顧客層を限定した選択と集中です。狙うべきマーケット(顧客層)をしっかりと定め、これに“whole product”(顧客のニーズを満足させるまとまったパッケージ)を提供することです。

したがってFacebookの実名主義と関連機能が、どの顧客層のニーズを満たし、かつどのようにしてwhole productになり得ているかを見る必要があります。

ほとんど斉藤氏の意見の焼き直しですが、こうまとめられると思います。

  1. ターゲット顧客層:旧知の友人を含めた、リアルな友人とのつながりを深めたい人。年賀状しかやり取りしないぐらいの友人と、実はもっとこまめに連絡をしたい人。
  2. ターゲットじゃない顧客層(匿名性):ネット上のバーチャルな友人関係を広げたい人。ネット上で自分の意見を公開してぶちまけたい人。これらの人は匿名性が維持でき、誰でもフォローできるTwitterなどを使うのが良い。
  3. Facebookが提供するwhole product:旧知の友人を探し出す機能。つながりを意識できるようにする機能(「いいね」とか)。連絡が取れるようにする機能(メッセージ)。

ただこのターゲット顧客層をターゲットする場合、デフォルトのFacebookのアプリケーション以外はあまり重要ではない気がします。例えば写真とかTwitter連携のアプリは大切ですが、ゲームなどのアプリは関係ない気がします。

斉藤氏も述べている通り、Facebookには他にもいろいろな機能があり、例えば企業やアーティストがFacebookページが作れることも大きな特徴です。ただ、Facebookに企業ページがあり、それが見たいという理由でFacebookに参加する顧客はほぼ皆無ではないでしょうか。Facebookにそもそも参加する理由はやはりリアルな友人とつながりたいからで、これらの顧客に対してマーケティングを行いたいから企業ページがあるのです。これが順番です。

日本のインターネットは本当に匿名性が重要なの?

これもマーケティングで行われる顧客セグメントで考えることができます。今までの日本のインターネットでは匿名性が重視されていたのは、これは事実です。問題なのは、「今まで日本のソーシャルインターネット」を利用していた顧客層と「これからの日本のソーシャルインターネット」を利用する顧客が同じかどうかです。

「今まで日本のソーシャルインターネット」を引っ張ってきた人は、情報を発信するように人たちであったと思います。キャズム理論で言えば「イノベーター」や「アーリーマジョリティー」に属する人たちです。これらの人は、インターネットやそこで行われてきたやり取りに興味を持っている人たちで、「インターネット」がやりたい人たちです。これらの人がリアルな社会とインターネットを別の空間と考え、インターネット上では匿名でやりたいと思うのはごく当たり前のことです。

それに対して「これからの日本のソーシャルインターネット」を考えるとき、「インターネット」そのものには興味がない人を対象にしなければなりません。例えば2chをただの怪しい存在としか思っていない人、SNSを時間の無駄としか思っていない人、自分のことをネットで公開すると危ないと思っている人(匿名であろうが実名であろうが)。このような人が「アーリーマジョリティー」を形成しているのです。

「アーリーマジョリティー」はリアルな生活に関心があるのであって、ネット上の生活には多少は興味はあるものの、はまり込む理由がありません。そうなるとインターネットのソーシャルサービスが成功するか否かは、リアルな生活にとってどれだけ有益かということになります。そのためにはリアルな生活とつながる必要があります。これは日本でも欧米でも同じはずです。

実名主義が可能にするのは、インターネットとリアルな生活をつなげることです。日本で匿名性が大事だとされていたのは、いままでのソーシャルインターネットの利用者たちがインターネットとリアルな生活を分けていたからでしょう。インターネットがリアルな生活に役立つと考えている人が少なかったからでしょう。単純にそれだけだと思います。

匿名性を重視していた日本のソーシャルインターネット利用者と、これから利用するであろう「アーリーマジョリティー」は同じではありません。インターネットに対する考え方および使い方、リアルな生活との関係、そして年齢にしても、相当に違う人たちの集団です。これを無視して「日本人は匿名性を重視する」というのはナンセンスです。

Facebookが日本で普及していけば、旧知の友人とつながるという大きな価値がインターネットでますます実現していきます。そうしてインターネットがリアルな生活に役立っていきます。こうなれば、日本人であっても匿名性をことさらに重視することはなくなるでしょう。

それだけです。