GALAPGOSがガラパゴスにもなれない理由:追記

前に書いたブログに対していくつか捕捉したい点があります。 やはり「進化」の視点で。 GALAPAGOSの独自機能は強みにならないか? GALAPAGOSにはいくつか優れた特徴があります。例えば画面の解像度がiPadよりも高いとか、あるいはXMDF規格が日本語の扱いに優れている点です。 しかし、優れた機能を持っているということと強みがあるというのは全く別の話です。なぜならばGALAPAGOSはAndroidなどの標準規格を多用しているからです。 少なくともGALAPAGOS程度の特徴であれば、標準的なAndroidタブレット(まだ販売されていませんが、近いうちに登場するでしょう)やiPadに搭載することが簡単です。XMDFについてはビューアソフトを作ればいいだけです。画面解像度の問題についてはAppleはiPhone 4で大幅に改善していますので、iPadの次期バージョンでも解像度が良くなるのはかなり確度が高いです。 つまりGALAPAGOSは「隔絶」の度合いが極端に少ないため、独自機能を進化させても、すぐに真似られます。ですから独自の進化を積み重ねることが出来ず、ガラパゴス的進化はできません。 機能を限定することにより、独自のセグメントが築けるか? 大西宏さんが言っているのが恐らくこの議論です。 大西さんも言っていますが、価格をぐっと抑えられればこの可能性はあります。価格を大きく開けることにより「隔絶」したマーケットセグメントが狙えるからです。しかし既に発表されているAndroidタブレットを見ると、価格はiPadより安いどころか、むしろ高くなりそうです。新しい抱き合わせ(例えばオンライン新聞購読とのセット販売)をしない限り、GALAPAGOSの値段も抑えられないでしょう。 そうなるとこの議論は無理になってしまいます。 僕の意見 GALAPAGOSという名前、「社員レベルでは反対の声が多かったのは確か。しかし、上層部に行くほど、このブランドに対する賛成の声が増えていった」そうです(ソース)。 マーケティングと生物の進化は共通するところは多いと思います。ガラパゴス進化なんてまさに生物学的に言うニッチですし、マーケティングのニッチ市場も言葉が同じだけでなく考え方も同じだと思います。その意味で技術のガラパゴス進化は非常に興味深い話題です。 でもシャープ上層部はガラパゴス進化を理解していないのでしょうね。

GALAPGOSがガラパゴスにもなれない理由

GALAPAGOSという名前のメディアタブレット端末がシャープから発表されました。その発表会の中で、GALAPAGOSという奇抜なネーミングの理由をこう説明したそうです。 当日行なわれた発表会でシャープ オンリーワン商品・デザイン本部長の岡田圭子氏は、「GALAPAGOS(ガラパゴス)」は、世界基準とかけ離れた日本の特異な進化と揶揄される言葉として否定的にとらえるのではなく、世界のデファクト技術をベースに日本ならではのきめ細やかなモノづくりのノウハウと高いテクノロジーを融合させ世界に通用するオンリーワンの体験を創出したいとした。 しかしどう考えても、この製品はガラパゴスにもなれないでしょう。 世界基準とかけ離れた日本の特異な進化も果たせずに、瞬く間に絶滅するだけでしょう。なぜならガラパゴス的進化をするための条件が整っていないからです。 ガラパゴス的進化をするための条件 ガラパゴス的進化をするには、世界基準とかけ離れたスタンダードを作れば良いというものではありません。例えば独自のスタンダードを作ったものとして、ソニーがiPodに対抗しようとしたときのATRAC規格が記憶に新しいです。ATRAC規格はすぐさまに絶滅しました。日本国内だけを見てもすぐに絶滅しました。日本だけで生き残るガラパゴス進化もできなかったのです。 それではガラパゴス的進化をするための条件とはいったいなんでしょうか?僕は以下の2つが重要ではないかと考えています。 外部から隔絶されていること:ガラパゴス諸島の島々は海によって大陸から隔てられているため、独自の進化をすることができました。同様にテクノロジーがガラパゴス的進化をするためには、世界基準から隔絶される必要があります。 生き残ること:進化というのは、子孫が徐々に変化していって環境に適応していく過程です。子孫が生き延びないといけないのです。いきなり死んではガラパゴス的進化は起こりません。でもそのためには強力な外敵や競争相手がいないことが大切です。 独自に進化(変化)すること:ガラパゴス進化をするためには変化をするあります。生物学的には、他種と交配しても子孫が育たないレベルまで進化することです。こうすることによって外部との隔絶をより強固にできます。テクノロジーで言えば、世界規格ではもはや代替が不可能というレベルまでに独自規格が新機能を発展させなければなりません。 例えばガラパゴス携帯電話の場合、外部からの隔絶は強固でした。通信規格が違うことがまず最初のハードルでした。世界で広く使われているGSMではなくPDC方式が採用されていました。そして各社が3Gに移行するまで、これが主流の通信規格でした。世界標準規格を用いた3Gへの移行は2006年ごろまでかかりました。しかしこの頃までにはiMode等、これまた日本独自の規格が普及しており、この機に海外メーカーが入り込むことは困難でした。つまり1.の要件によってガラパゴス進化が始まり、2.の生存をしているうちに、3.の進化(変化)が行われ、隔絶が強力になったのです。 まだこの隔絶は残っていますが、iPhoneなどの出現によって携帯電話のガラパゴス的進化が終焉を迎えそうです。ただ逆に言うと、iPhoneぐらいに強力なイノベーションがない限り、ガラパゴス携帯の強固な隔絶は続いたでしょう。 ところがシャープのGALAPAGOSは、全然この要件を満たすことができていません。 GALAPAGOSは世界基準にどっぷり浸かっている 通信はWiFi(IEEE802.11b/g)、OSはAndroidと完全な世界基準です。独自なのはXMDFという電子書籍のフォーマットだけのようです。 XMDFの利用は有償ということですが、どこかがXMDFを読めるビューアをAndroidやiOS用に開発することだって十分考えられます。 コンテンツにしても、出版社はXMDFだけを使う必要がありません。シャープはPDF、Word、Excelなどの世界基準をXMDF形式に変換するツールを提供するということなので、XMDFは「隔絶」をほとんど提供することができません。 この点を考えると、GALAPAGOSは世界基準にどっぷり浸かりすぎていて、隔絶の要件を満たしてないことがわかります。 またXMDFコンテンツを作る際に利用されるのは、恐らくはAdobe InDesignなど世界基準の出版ソフトでしょう。まずこれで作っておいて、最後に変換ソフトを使ってXMDFを作ることになりそうです。こうなるとXMDFを変化させることが難しくなります。仮にXMDFに独自の機能をつけても、Adobe InDesignなどが対応してくれないとその機能が活かされません。ですから「独自の進化(変化)」の要件も満たせません。 なお、これはAppleがFlashで作ったソフトを禁止しようとしたときに使った理屈の一つです。AppleはFlashでオーサリングされると、iOSの進化が阻害されると言ったのです。 GALAPAGOSは生き延びれるか GALAPAGOSの取り囲む環境は競争相手だらけです。日本での活動は遅れていますが、AmazonのKindle、AppleのiPad/iBooksなど強力なライバルがすでに日本にも浸透し始めています。 機能にしても価格にしてもGALAPAGOSがこれらのライバルに勝つのは至難の業です。何より販売スケールが違いますので、部品の調達コストが違うはずです。アセンブリにしても米国メーカーは中国等安い国で製造しますので、最終製品の価格競争力は相当なものです。 隔絶の要件が満たされず、競争相手がうようよいる環境に放り込まれたGALAPAGOSは恐らくはあった言う間に絶滅してしまうでしょう。 そして生き延びることが出来なければ、進化(変化)することもできません。 iTunesとガラパゴス 昔からのAppleユーザでなければ知らないと思いますが、iTunes Music Storeは(意図的な)ガラパゴス進化から生まれました。 iTunes Music Storeが生まれたのは2003年4月28日。このときはまだMac版のiTunesしかありませんでした。 iTunes Music Storeを実現するためには、音楽レーベルが楽曲を提供する必要がありましたが、Napsterなどで痛い目にあっていた音楽レーベルはインターネット配信に消極的でした。最終的にAppleは音楽レーベルを口説き落とす訳ですが、そのときにMacユーザが全パソコンユーザの5%に満たなかったことが有利だったと言われました。つまり音楽レーベルは実験ができたのです。仮にiTunes Music Storeが失敗で、おかげで音楽レーベルが違法コピー等で被害を受けることになったとしても、被害は全パソコンユーザの5%以内に限定されるという理屈です。 つまりMacユーザ限定というガラパゴス的に隔絶された実験環境の中からiTunes Music Storeが生まれることができたのです。 幸いにもiTunes Music Storeは成功し、Windows版のiTunesもまもなく発売されました。そうやってガラパゴスがメジャーになったのです。 GALAPAGOSの進化の(少ない)可能性 シャープのGALAPAGOSは果たして同じように発展することができるでしょうか。まぁ出版社が実験的なものとしてGALAPAGOSを見てくれる可能性はそれなりにあるとは思います。しかし全PCユーザの5%以下とはいえMacユーザは膨大に存在していて、iTunesを利用する人も多かったため、iTunesはすでに準備万端な実験環境でした。しかしシャープはこれから実験環境を構築するので難しいです。 さらにシャープはそのあとが続きません。AppleがWindows版のiTunesを作ったときは、Windows対応のiPodがすでに好調に売れていました。したがってWindows版のiTunesを作るだけですぐにiTunes Music Storeのユーザ層を急拡大できたのです。しかもWindows対応のiPodで資金回収ができるという仕掛けがありました。 その上シャープの場合、実験が成功したときに何が起こるでしょうか。ボリュームアップを狙うにはシャープはXMDFをライセンスし、AndroidやiPhoneにも対応したビューアを売るしかありません。GALAPAGOSだけだと販売台数が稼げないからです。ユーザ層を拡大できない限り出版社は離れて、AmazonやAppleにもコンテンツを配信するようになってしまうので、XMDF規格を生き残らせるには選択肢はありません。 シャープのようなハードのメーカーとしては、いずれにしてもつらいと思います。 リンク 外観とUIを速攻チェック――写真で見る「GALAPAGOS」端末 シャープ、電子ブックリーダー「ガラパゴス」を発表 アップデート ネットでいろいろ見ていると、「売れるか売れないか」関連の話題ばかりが多く、”GALAPAGOS”という名前が持つ「進化」という意味合いに言及するものを見かけませんでした。 「売れるか売れないか」についてはまぁ売れないとは思うのですが、仮にそこそこ売れたとしてもそれは「ガラパゴス進化」の要件を一つ満たした(2.の項)に過ぎず、それ以外の要件は満たしていないというのが僕の言いたいことです。ネットで「進化」が話題にならないのもうなずけます。 ただ、漫画については日本はコンテンツ制作に相当に強みを持っていますので、コンテンツ制作ツールにおける「隔絶」の要件がそろい易く、「ガラパゴス進化」の可能性は残っていると思います。 アップデート2 追加したいことがいくつかあったので、追加のブログを書きました。

AppleのApp Storeとバイオの買物.com

バイオの買物.comって、一見すると価格.comと同じように思われてしまって、メーカーの価格競争を促すだけに見えてしまいがちです。 でもそれは正しくないと思っています。まず第一に、バイオの業界では末端の小売価格(代理店の販売価格)が不透明なので、バイオの買物.comでは希望小売価格しか載せていません。ですからバイオの買物.comの掲載されている情報だけでは最安値は見つからないのです。 もっと重要な違いは、価格.comを見る人の最大の興味は価格であるのに対して、バイオの買物.comに来る人の興味は製品の有り無しであるという点です。 バイオの世界は何百万と製品があります、非常な勢いで新製品が登場します。一昔前は無かったような製品がどんどん販売されています。この結果、せっかく秀逸な製品があっても、研究者がそれを見つけられないという事態が発生します。特にその製品がトップブランドから発売されたものではなく、中堅以下の会社から売られているものの場合は困難です。あまりにも製品が多く、会社も多いので、研究者はなかなかトップブランド以外、もしくは参考にしている論文に記載されているブランド以外を探すことはできないのです。 バイオの買物.comはこの問題を解決したいと考えています。こうすることによって「“Dwarfs standing on the shoulders of giants”を手伝う仕事」を実現したいと思っています。 そのときに参考になるのがAppleのApp Storeです。iPhoneやiPadを持っている人には馴染みのサービスですが、ひとことで言えばiPhone, iPad用のソフトをすべて取り揃えているオンラインストアです。すべてのソフトはここで発売されていて、逆にここ以外では発売されていません。 エンドユーザにとっての利便性は、ソフトを買うときはApp Storeに行きさえすれば良いということです。Googleで検索し、あっちこっちのウェブサイトを見比べつつ、何かを見落としているのではないかと心配すること無く、簡単に目的の製品を探すことができます。しかもアップデートがあれば一括してApp Store経由でアップデートが行われますので、非常に便利です。 まさにバイオの買物.comが目指している形に似ています。 そしてソフト開発者にとってのメリットとして言われているのは、小企業であってもマーケティングや代金請求のことに頭を悩ます必要がなく、とにかくソフト開発とサポートに集中できることです。小企業・大企業の区別なく、App Storeに表示されるときは平等です。魅力的な製品であり、適正な価格を付けてあれば、ブランド力のある大企業の製品に勝つことができます。 魅力的な製品を作って、サポートもしっかりやっていれば、大企業にとってもApp Storeは魅力的なシステムです。しかしブランド力やマーケティング力だけで劣悪な製品を売っている場合は、痛い目に遭うでしょう。 これもバイオの買物.comの目指しているところです。 App Storeの成功もあって、Android, Palm, Microsoftのプラットフォームなども同じようなシステムを準備しました。よく考えてみると、Amazonもこれに良く似た面があります。レコメンド等のPRはAmazonが勝手にやってくれるのですから。 まだまだそこまでは全然行っていませんが、App Storeを目指してがんばります。

HPがタブレットPCをプリンタにバンドルするという、嘘のような本当の話

Businessweekのこの記事(“HP’s New Tablet Could Be an iPad Spoiler: Hewlett-Packard is bundling a tablet with a $399 printer”)から。 簡単にいうと、HPはプリンタのインクで儲けているので、顧客がそれなりに印刷をしてくれれば、$399のプリンタにタブレットPCをバンドルしてもペイするという話。Samsungなどから出てくる予定のAndroidタブレットは、キャリアとの契約付きでも$400、無い場合は$700を越えそうなので、これは相当の激安になります。ちなみにHPはプリンタ事業での営業利益が17%であるのに対して、PC事業はたったの5%だそうです。 この記事の中で特に面白いのは、調査会社のIDCのRichard Shim氏のコメント; 各社はこのような(タブレット)デバイスの市場機会を把握しようとしている。他のビジネスをカニバライズしないようなメディアタブレットのポジショニングはいったいどうすれば良いのか、その答えを探そうとしている。 対照的なのはAppleのiPadに対するスタンス。 Steve Jobs氏はD8のインタビューでiPadがPCを代替するかという質問をされたとき、PCをトラックに例えて答えました。 PCはトラックみたいになるだろう。今後もずっと残るだろうし、相当に重要であり続けるだろう。しかしX人のうちの1人に利用される感じになるだろう。….次のステップがiPadかどうかは分からない….でも我々はこの方向に進んでいると思う。 つまりAppleがiPadで狙っているのは、一般的なコンシューマにとってのPCの代替です。まさに自社のPCビジネスをカニバライズしても良いと考えているのです。それはiPadを発表した2010/1/28のイベントでもはっきりしていました。プレゼンテーションの中では、iPadで見るインターネットは、PCで見るよりもずっと良いと繰り返していました。 自社のビジネスをカニバライズすることは全くいとわない。むしろ最高の製品を顧客に送り続け、常に製品を進化させようと思えば、自社製品をカニバライズするのは当たり前だとAppleは思っているようです。 IDCのRichard Shim氏が言う通り、他社は既存のPCビジネスがカニバライズされるのが怖いのでしょう。でもこれがまさにAppleとの違いであり、Appleに勝てない理由ではないかと思います。

テレビってこのままでいいのかな… Apple TVなどに期待すること

我が家ではApple TVをそれなりに使っているのは以前にこのブログで紹介しました。ライフスタイルによりますが、結構良い製品だと思っています。 さて、Apple TVもしくはGoogle TVなどのようなデバイスは果たしてヒットするのだろうか?インターネットを観ていると多くの人がこの点を議論しています。 ほとんどの議論は細かい機能の各論です。でも多分それは意味がありません。非常に当たり前のことですが、顧客が買うのは機能ではなく、ニーズを満たすものです。どんなに優れたマーケティング活動をしても、どんなにたくさんの広告宣伝費をつぎ込んでも、どんなに優秀なセールスマンを雇っても、顧客のニーズを満たさない製品は売れません。ですからある製品がヒットするかどうかを議論するのに一つ一つの機能を比較したりするのはあまり価値がなく、ニーズがあるのかないのかを調べることが重要です。 とうことで、現在の日本のテレビシステムの問題点と満たされていないニーズを考えたいと思います。 番組がつまらない 日本のテレビは下らないコンテンツが多すぎます。もう敢えて解説するまでもないと思います。 面白いコンテンツがあれば、もっと番組を観てもらえるはずです。 東京のサラリーマンは通勤で毎日2〜4時間を過ごしている その分、家でゆっくりテレビを見る時間がありません。ならば通勤中でも番組が観られるようになれば便利です。ワンセグはその方向に向かっていますが、完全な解答ではありません。 レンタルはネットでできるのが便利じゃない? 普通に考えれば、映画コンテンツ等のレンタルはネットでできるのが便利に決まっています。プロバイダによっては光インターネット接続を使って観られるものはあります。でも限定的です。またネット配信ではありませんが、いろいろな方法でDVDを物理的に届けてくれたりするサービスもあります。 それぞれ無いよりはマシですが、もうちょっと何とかならないのという気もします。限界の中で無理矢理やりくりをしているという感じが残ります。 今どき、なんでテレビだけオンデマンドじゃないの? オンデマンドじゃないサービス、つまりあらかじめ決まった時間にだけ放送されるというサービスは基本的に消費者にとって不便です。ニュース番組やスポーツ生中継の場合はリアルタイムであることが重要なので、オンデマンドというわけにはいきません。しかしそれ以外のコンテンツがオンデマンドで放送されていない理由は、少なくとも消費者のニーズからはありません。 確かに20世紀は一斉に放送をする技術以外は現実的ではなく、ビデオをオンデマンドで配信することは困難でした。しかし21世紀の今、ブロードバンドインターネットがあればオンデマンドが簡単に実現できます。なのにそれがテレビで普通にできないのは明らかに問題です。 なんで録画しないといけないの? 確かに録画をすれば、見過ごした番組を後で見ることはできます。しかし録画を忘れるともう後の祭りです。なんで? クラウドの時代なのに、そもそもなんでローカルで録画しないといけないのでしょう。どこかのサーバに保存されていれば、それを観ればいいんですよね。そんな感じでなんでできないんですか? iPhone/iPadでなんで観られないの? 20世紀までは、動画が見られる画面はテレビしかありませんでした。パソコンでは動画の画質も悪く、観るのが大変でした。それが今では手元の100グラム強のスマートフォンで映画が見られます。しかも高画質です。 10年前の高画質テレビをしのぐ解像度のビデオが、今は手のひらの画面で鑑賞できるのです。なのにビデオコンテンツをそこに移してくるシステムが確立されていません。せっかくの高画質画面なのに、日本の場合は映像コンテンツがうまく観られないのです。 もちろんサードパーティーのソフトを使って、若干法律的にグレーな方法でDVDソフトを持ってくることはできます。でも面倒でしょう?それでは広く普及するはずがありません。 まとめ 現在のテレビシステムへの不満はまだまだあります。上に挙げたのはまだ一部ですが、それだけ見ても満たされていないニーズが多そうなのは分かります。 それにも関わらずApple TVなどがなかなか成功せず、未だにビデオコンテンツの消費の仕方が20年前から根本的に変わっていません。ですからヒットするのがApple TVなのかGoogle TVなのか、あるいは今後出てくる新しいものかどうかは分かりませんが、確実に何か根本的に新しいものが出てくるはずです。 Apple社は音楽について言えばiTunes Music Storeで音楽配信システムにかなり大きな変化を起こしました。ビデオについても何かやってくれることを期待しています。最後まで諦めなければ、いつかはヒットが生まれるでしょう。

GoogleのHugo Barra氏:Android 2.2はタブレット用には最適化されていない

Techradarの記事 “Google: ‘Android not optimised for tablets”より。 あれ?って感じです。だって昨日書いたようにAndroidを搭載したTabletがたくさん発売予定になっていますよ。 どうやらこれらのTabletはAndroid Market (AndroidのApp Storeみたいなもの)のアプリが使えなくなりそうです。Android 2.2はTabletサイズに最適化されていないし、そういうアプリはAndroid Marketからダウンロードできないかも知れないとのことです。 いたたたっ!ですね。 Googleは次のバージョンのAndroid (Gingerbread)でタブレットへの対応を強化してくるでしょう。噂によるとQ4 2010に発表されるみたいですが、2010年9月になってもまだ情報は無い状況です。 いずれにしても、足並みは揃わないですね。 同じように水平分業をしているマイクロソフトWindowsの場合、マイクロソフトが完全にしきっていますので、ここまでのハチャメチャ感は無いですね。 AndroidにしてもiOSにしても、ハードもOSもアプリの供給システムも大変なスピードで進化し、変化していっています。この状況では水平分業はつらいよねって思います。垂直統合の方がよっぽど楽そうです。 そういえばGoogleはChrome OSというのも作っていましたね。こちらは基本的にはNetbookをターゲットしたOSです。Touch UIも視野には入っているということですが、Webアプリを作っているデベロッパーはTouch UI対応をやってくれるでしょうか。少なくともiOSの傾向を見ると、WebアプリをTouch UI用に作り直すよりは、iOSアプリをつくってApple App Storeに無料で載せることの方が多いようです。Touch UIに対応したWebアプリはあまり増えなさそうに思えます。 こうなるとChrome OSをタブレットに載せても、まともに動くアプリ(Webアプリ)が無いということになります。Netbookの売上げがiPadを筆頭としたタブレットに相当に食われると予想されていますので、Netbookでしか使えないChrome OSだと将来が暗いのではないでしょうか。

Androidのタブレットは成功するか?

iPadと対抗すべく、多くのAndroidタブレットがまもなく発売されるそうです(“Ipad, a Wave of Android Tablets Are Gunning for You”)。 しかしAndroid携帯のマーケットシェアが拡大しているとはいえ、タブレットの世界でも成功する保証はどこにもありません。 Android携帯がシェアを拡大できているのは、Apple社がキャリアを制限していることが一番大きな理由だと考えられます。日本だったらiPhoneを売っているのはソフトバンクですが、ドコモだったらもっとたくさん売れたと考えるのは自然です。同様に米国ではAT&Tが独占的にiPhoneを売っていますが、Verizonが売ればもっともっと売れただろうと大部分の人が考えています。iPhoneがVerizonから出ていれば、Androidが入り込むスキすらなかっただろうという考えもあります。 いずれにしてもApple社はキャリアを制限することで、Androidに走り込むスペースを開けてしまったのは間違いありません。別な戦略的意図があったとは思いますが、シェア獲得という点だけ考えると、キャリアを制限したのは間違いなく不利でした。 タブレットの世界では、このキャリア問題の影響は小さくなります。WiFiだけのモデルがあることからも分かるように、携帯電話キャリアのネットワークに依存しない使い方が多いからです。 つまりAndroid携帯の最大の強みが、タブレットの場合は少ない、あるいは全く無いのです。 どっちかというと、タブレットの市場はスマートフォンのように展開するのではなく、MP3プレイヤーのように展開するだろうと僕は予想します。そう、iPodに支配されているMP3プレイヤー市場のようになるでしょう。ただ今回は最初からApp Storeが整備されているので、差はより圧倒的になるとも考えられます。

iTunesのロゴからCDがなくなった件

iTunes 10 でロゴからCDがなくなりました。最初のiTunesのバージョンからiTunes 9まではずっとCDと音符を重ねた同じデザインで、時々音符の色が変わるぐらいの変化しかありませんでした。 それがiTunes Music Storeで販売している音楽の数がCDの売上げを上回ったらしく(KeynoteでSteve Jobs氏が言及)、もうCDはいらないだろうという話でした。 今となってはずいぶん昔の話になってしまいましたが、2001年1月にiTunesの最初のバージョンが発表された頃に思いを馳せてしまいました。 iTunesを発表するまでは、Apple社はパソコンにCD-RW(読み書き)ドライブを搭載することをかたくなに拒んでいて、横込みだけができるCD-ROM、もしくはDVDの再生ができるDVD-ROM(読み込みのみ)を全パソコンのモデルに搭載していました。それに対してWindowsの世界ではCD-RWが一般的になっていて、音楽CDを多くの場合不法にコピーすることが多くなっていました。Apple社は常々クリエイターやアーティストの側に立ってきたメーカーなので、CD-RWを搭載しなかったのは彼らに対する遠慮もあったのでしょう。批評家やユーザからはCD-RWを標準搭載するように要望されても、Appleは決して搭載しませんでした。 それがiTunesを発表したときにがらりと戦略を変えました。アーティストに遠慮していてはだめだと。新しい音楽消費の形態を世の中に提案していかないと、パソコンそのものの進歩の可能性が失われると思ったのでしょう。CD-RWの標準搭載を始めたばかりではなく、“Rip, mix, burn”というプロモーションまで行いました。単純にCDの違法コピーがしやすくなったというのではあまりにもまずいし、何の価値も提供していません。そこでそうではなく、CDの音楽を選んでカスタムのCDを作ることに価値があるとプロモーションしたのです。ただ”Rip”は誤解されやすい言葉だったので、わざわざAppleのホームページに解説もありました。 このiTunesの発表をきっかけに、Appleは“Digital Hub”戦略を打ち出し、そしてまもなくiPodを発売します。そのiPodからiPhoneに行って、iPadに行ったのはもう皆さんも知っていることです。アーティストやレーベルに音楽消費の新しい形態を提案するのはiTunes Music Storeにもつながりました。 いろいろ考えさせられます。

マーケットリサーチについて思うこと

アップル社のスティーブジョブズはアップルではマーケットリサーチはやらないと断言しています(“Steve Jobs speaks out” Fortune 2008)。 自動車のフォード社を設立したヘンリーフォードは「顧客に何が欲しいかって聞いたら、きっと『もっと速い馬』って答えただろう」と語ったと言われています。 顧客が欲しがっているものを調査してもイノベーションは生まれません。普通にマーケットリサーチをしても生まれません。こんなことをしても、顧客の表面的なニーズが分かるだけというのがほとんどです。イノベーションのために大切なのは、顧客が抱えている問題点、ニーズ(顕在化しているものも、顕在化していないものも)を深いレベルで理解することです。 先日ライフサイエンス研究試薬メーカーの方とお話をして、このことを思い出しました。 そのメーカーの方が言うには、自社で研究者のウェブ利用調査をしたそうです。そしてその結論の一つとして、バイオの買物.comを含めた製品ポータルサイトは利用しないし利用する気もないということだったらしいです。Googleを使って製品を検索する場合でも、検索結果のURLを見て、メーカーの純正サイトを選ぶとのことでした。私がバイオの買物.comを運営していることはもちろんご存知でしたので、とても申し訳なさそうな言い方をしていました。 しかし申し訳ないことは何もないのです。そのメーカーが行ったウェブ利用調査の結果は全く予想通りですし、私も同じように感じています。私の目指していることはこの状況を変えることであって、すでに多くの研究者が製品ポータルを利用しているのであれば、私がいまさら新たにやることはないとも言えます。 少なくとも私が4月に公開した「まとめてカタログ」以外の既存の製品ポータルサイトはハッキリ言って全く不十分です。このことについて私はこのブログで何回か言及しています。a) 網羅的ではない(重要なメーカーが抜けている) b) カテゴリー分けがされていない c) ほとんど価格が掲載されていない など、どれも重大な欠点を抱えていて、研究者が信頼して使うには至っていないのです。そんな状況ですので、マーケットリサーチをやったときに「ポータルサイトは使わない」という結果になるのは当然なのです。願わくば「まとめてカタログ」が研究者にとっては有用で、いままでの考え方を変えさせるものであればうれしく思います。 イノベーション、少なくとも破壊的なイノベーションというのは技術力云々の問題ではなく、顕在化していなかったニーズを如何に満たすかということです。顧客が夢の中でこそ想像はしていても、現実になることを期待していなかった製品を世に出すことです。マーケットリサーチというのは顕在化しているニーズを知るには有効な方法ですが、顕在化していないニーズを拾うことはなかなかできません。だからイノベーションはマーケットリサーチからは生まれないのです。 「まとめてカタログ」が目指しているものは理想の形としてほとんどの研究者の頭にあると思います。研究にマッチした製品を、メーカーを問わず簡単に探せるウェブサイトがあれば、それは便利に決まっています。しかしライフサイエンスという製品数がめちゃくちゃに多く、市場規模も決して大きくない市場で、そこまでの労力を投じる会社なんてあるはずがない。そう思ってしまうとそのニーズは諦められ、顕在化しなくなります。だから「ポータルサイトは使わない」という調査結果になるのです。 iPadが市場に投入される前にも「タブレットPC」は発売されていて、マイクロソフト社などは10年前から売り続けています。でもビルゲイツの期待に反して、大して売れていません。もしiPad発表以前に「タブレット型PCは欲しいですか?」というマーケットリサーチをしたとしたら、ほとんどの人は「いらない」と答えたでしょう。でも実際にiPadが発売されると、バカ売れしました。iPadは既存の「タブレットPC」の概念を書き換えたからです。 同様に「まとめてカタログ」では、ライフサイエンス研究製品ポータルサイトの概念を書き換えたいと思っています。だからマーケットリサーチの結果はあまり気になりません。研究者を長く経験した自分の感覚を信じ、自分の問題解決能力をフル回転させ、多くの人が諦めてしまったようなサイトを現実化するのが私の目標です。 そんな気持ちを強く持ち、がんばり続けたいと思っています。

iPhone4 vs. Android の話

AppleInsiderにiPhone 4 and iOS vs. Android: hardware featuresという記事が投稿されました。 ちまたにあるような薄っぺらな評論や比較の記事ではなく、ハイテク業界の本質に踏み込んだ議論をしていますのでとてもお勧めです。 以下、僕が面白いと感じた視点を紹介します。 Overall however, this idea that “platform openness” automatically results in better hardware features has only been proven to give Android a temporary advantage that is now lost with the introduction of iPhone 4, which significantly outpaces top Android phones not only in interface polish and usability, but also in hardware specifications, the very thing the Android ecosystem is supposed to excel at. 「オープン」にした方がハードウェアのイノベーションが起こりやすい、というのは幻想だと結論しています。iPhone4のハードウェアを見ていると、それは確かに間違い無さそうです。 The idea that an open platform should drive hardware innovation was not borne out in the PC arena. Specific PC models have often offered better graphics options and sometimes introduced faster processors quicker than Apple’s Macs, for … Continue reading iPhone4 vs. Android の話