特定用途のパーソナルコンピュータ

このブログでも取り上げていますが、先日NPDが“U.S. commercial channels”の売り上げデータを発表しました。ネット上で話題になったのは、このデータで見る限りChromebookがよく売れているというデータでした。それに対して、私は「Chromebookが売れているという記事があるので、それを検証する」というポストの中でNPDのデータの問題点を取り上げ、以下のようにまとめました;

“U.S. commercial channels”でChromebookが売れるようになったといっても、全体としてChromebookが売れているわけではなさそうだし、どうして“U.S. commercial channels”だけが強いのかがまだわかりません。

Twitterで業界アナリストのBen Bajarin氏に尋ねてみると、以下のように教えてくれました。

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さらに有料購読しないと読めないのですが、Ben Bajarin氏は“Understanding the Market for Chromebooks”という記事も書いてくれ、解説してくれました。この記事のポイントをまとめます。

  1. Chromebookの大半は教育市場に向けて販売されています。
  2. 教育市場ではそれなりに多くのChromebookが導入されています。
  3. U.S.の教育市場ではウェブベースのプログラムが多く使用されています。
  4. 使い方としてはChromebookはオンライン教育ソフトウェア専用ポータルになっています。
  5. 「教科書」と同じような使い方になっています。
  6. Chromebookは“specific purpose device”(特定用途デバイス)として使われています。

Ben Bajarin氏のこの情報を考慮すると、NPDデータの謎が解けます。

  1. “U.S. commercial channels”というのはおそらくは日本でいう大塚商会などのように、ハードウェアとソフトウェアとセットアップと管理などをすべてまとめて納入するValue Added Reseller(付加価値再販業者)を指します。教育市場に製品を納入する業者もおそらくこれが多いのでしょう。またNPDはAmazonやDELL直販、Apple直販などのデータは収集していません。したがって今回のNPDのデータがパソコン市場全体を反映しないのは当然のことです。
  2. Chrome OSがウェブ使用統計に出てこないという謎は私もブログで取り上げています。2013年11月現在のデータを見ても、Chrome OSの使用は極めて少ないものにとどまっています。そこで「いったいChromebookは何に使われているんだ?」という疑問が湧きます。Ben Bajarin氏の情報から考えると、Chromebookは学校専用ですので、学校で使うサイト以外を閲覧するのには使われていないと考えられます。ウェブ使用統計を集計しているStatCounterは、学校で使うサイトの統計は収集できていないのかもしれません。もしそうであれば、Chrome OSがウェブ使用統計で極めて少ない謎が解けます。
  3. まだ解けていない謎は残っています。AmazonのランキングでChromebookが上位に出ている点です。教育市場に大量に納入されるChromebookがAmazonから購入されているとは考えにくいです。またAmazon購入者は一般的な用途にChromebookを使うでしょうから、もっとウェブ使用統計に反映されると期待されますが、実際にはそうなっていません。この謎はまだ解けていませんが、予想としてはAmazonのランキングが市場全体を反映していないのだろうと思います。

特定用途のパーソナルコンピュータ

Ben Bajarin氏の情報の中で凄く面白いと思ったのは「特定用途のパーソナルコンピュータ」です。

家で使用するパソコン、あるいは仕事で使うパソコンを想像するとき、パソコンというのは多用途のデバイスです。メールを書いたり、インターネットをしたり、エクセルファイルで集計をしたり、ワードで文章を書いたり、パワーポイントでプレゼンテーションを書いたり、ゲームをしたりと、パソコンは非常に多様とのデバイスです。

しかし近所の薬局やレストランに行くと、タイムカード専用や売り上げ集計専用のパソコンがレジの横に置いてあったりします。このパソコンはもちろんゲームに使われませんし、プレゼンを書くのにも使用されません。インターネットに接続するにしても、イントラネットや仕事で使うSaaSに接続するだけでしょう。単一用途ではないにせよ、極めて限定的な用途で使われているパソコンです。ただしこれらのパソコンは今までは店舗に1, 2台あるだけで、数はそれほど多くありませんでした。

米国の教育現場では、生徒全員に1台のパソコンを支給するという流れがあります。これは非常に高価なプロジェクトですので、近年パソコンの値段が下がったことで初めて現実的になったものです。これも限定的な用途で使われるパソコンです。

近年Androidのタブレットの躍進が著しいのですが、大半のAndroidタブレットはビデオ専用に使われているという話があります。これもまた限定的な用途で使われているパソコンと言えます。

我が家にはiPadが2台あります。ほぼ子供専用です。ウェブサイトを見たり、メールを書いたりするのにはほとんど使用しません。これも特定用途のパソコンです。

どうやら「特定用途のパーソナルコンピュータ」が急速に増えている感じです。理由は価格が下がったこと、それから場所を取らないからでしょう。そしてパソコンの売り上げ統計だとかマーケットシェア分析の時には「特定用途」のものと「多用途」のものがすべてまとめて集計されてしまいますので、訳がわからなくなります。業界のトレンドが正確に読めなくなってるのです。

  • こんにちは、いつも楽しく拝見してます。

    Googleは、Google Apps for Education などのAPPやストレージサービスを、教育現場向けに無償でを供給していますね。
    APPや共有ストレージやその管理にお金がまわらない学校は助かっていると思います。
    https://support.google.com/a/answer/139019?hl=en

    そして、Chromebook ですが、Google は2012/12/10まで$99で販売したり、学校やクラスを選んで Chromebookを大量に寄付したり、下記のリンク先にあるように、様々な教育用のチャンネルで各企業と協賛して寄付をしているようです。
    https://docs.google.com/document/d/14oiA4oG-DgWvXHyqTXWrp47L-Ah14bIDBVlElgUIOVY/edit?pli=1#heading=h.bz0yj1et0jlo

    Appとストレージの無償提供とハードのドネーションで、ある程度の数のChromebook が使われ始めると、追加で必要になった際には購入するでしょうから、トータルの販売数量が増えるのはうなずけますね。
    無償提供やドネーションを梃に、学校市場に着々とGoogle のインフラを普及させ(攻略し)、そこで作られた(Googleのサービスに親和性のある)コンテンツや教育用のアプリを財産にして、google のサービス全体を教育市場にひろめていく戦略なんでしょうね。ハードで利益をあげている会社にはまねできないうまいやり方ですね。

    サービスをどのように使っているかというユーザの情報もgoogle に集まるので、まさにGoogle らしいやりかたのようにも思います。
    しかし、一起業が、こんなに人々の情報を自分で囲ってしまって企業の判断で使われていく事に心配をしてます。( Facebook も心配です)

  • 貴重な情報、ありがとうございます。

    そこまでは私は知りませんでしたが、なるほどと思います。

  • Pingback: iPads vs. Chromebooks Illustrates how Apple and Google are Different | Naofumi Kagami()