iTunes Storeの国際展開の強さ

AppleのFY13 2Qのカンファレンスコールを聞いて、一番興味深かったのはiTunes Store (App Storeも含む)の強さでした。

iTunes StoreについてはAsymcoのHorace Dediu氏が深く分析していて、成長のスピードおよび規模の大きさで非常に注目に値するとしています。誕生した当初は”break-even”で運営しているとしていたiTunes Storeですが、その後大きく成長しています。カンファレンスコールでは売り上げが2Qだけで4.1 billion USD(おおよそ4千億円)になったと紹介していました。売り上げの仕組みが違うので単純な比較はできませんが、楽天の2012年12月期の年間売り上げが単体で1,637億円ですので、iTunes Storeがどれだけ大きいかがわかります。

Horace Dediu氏はiTunes StoreとAmazonの比較もしています。ただしアマゾンは全体の売り上げは公開するものの、デジタル配信の売り上げは公開していませんので、単純比較はできません。

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なおGoogle Playはデータが全く公開されていませんので、情報がありません。

AppleのカンファレンスコールではiTunes Storeが多数の国で展開していることも紹介されました。音楽:119国、映画:109国、書籍:155国、アプリ:155国。このあたりはWikipediaに既に詳細に記載されていました。うち、有料の音楽が購入できるのは60強の国です。アプリは190の国で購入できます。Google Playもまた多数の国(134)で展開していますが、アプリしか買えない国がほとんどで、その他のデジタルコンテンツが買える国は極めて少数(14国)です。

Amazonについては詳しく調べていないので断言できませんが、Wikipediaを見る限り、Amazonのウェブサイトがある国がそもそも10程度しか無いようです。デジタルコンテンツの配信もこれらの国に限られているのだろうと私は想像しています。

なお比較のためにPlayStation Storeも確認しましたが、おおよそ50の国で展開しているようです。

デジタルコンテンツ配信におけるAppleのイノベーション

これだけAppleが強い背景には地道な努力がもちろん大きいのでしょうが、Appleがかなりイノベーションをしてきたことも忘れてはいけません。

違法音楽ダウンロードに各レーベルが戦々恐々としている時代に、世界でいち早く有料の音楽配信サービスを展開したのがiTunesです。アプリを配信するApp Storeのコンセプトを大きく成長させて、メインストリームにしたのもAppleです。

こういうイノベーションを先駆けたおかげでこれだけデジタルコンテンツ配信に強いのでしょう。

iTunesのロゴからCDがなくなった件

iTunes 10 でロゴからCDがなくなりました。最初のiTunesのバージョンからiTunes 9まではずっとCDと音符を重ねた同じデザインで、時々音符の色が変わるぐらいの変化しかありませんでした。

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それがiTunes Music Storeで販売している音楽の数がCDの売上げを上回ったらしく(KeynoteでSteve Jobs氏が言及)、もうCDはいらないだろうという話でした。

今となってはずいぶん昔の話になってしまいましたが、2001年1月にiTunesの最初のバージョンが発表された頃に思いを馳せてしまいました。

iTunesを発表するまでは、Apple社はパソコンにCD-RW(読み書き)ドライブを搭載することをかたくなに拒んでいて、横込みだけができるCD-ROM、もしくはDVDの再生ができるDVD-ROM(読み込みのみ)を全パソコンのモデルに搭載していました。それに対してWindowsの世界ではCD-RWが一般的になっていて、音楽CDを多くの場合不法にコピーすることが多くなっていました。Apple社は常々クリエイターやアーティストの側に立ってきたメーカーなので、CD-RWを搭載しなかったのは彼らに対する遠慮もあったのでしょう。批評家やユーザからはCD-RWを標準搭載するように要望されても、Appleは決して搭載しませんでした。

それがiTunesを発表したときにがらりと戦略を変えました。アーティストに遠慮していてはだめだと。新しい音楽消費の形態を世の中に提案していかないと、パソコンそのものの進歩の可能性が失われると思ったのでしょう。CD-RWの標準搭載を始めたばかりではなく、“Rip, mix, burn”というプロモーションまで行いました。単純にCDの違法コピーがしやすくなったというのではあまりにもまずいし、何の価値も提供していません。そこでそうではなく、CDの音楽を選んでカスタムのCDを作ることに価値があるとプロモーションしたのです。ただ”Rip”は誤解されやすい言葉だったので、わざわざAppleのホームページに解説もありました。
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このiTunesの発表をきっかけに、Appleは“Digital Hub”戦略を打ち出し、そしてまもなくiPodを発売します。そのiPodからiPhoneに行って、iPadに行ったのはもう皆さんも知っていることです。アーティストやレーベルに音楽消費の新しい形態を提案するのはiTunes Music Storeにもつながりました。

いろいろ考えさせられます。