2013年10月22日のアップルイベントを見て

2013年10月22日のアップルイベントで新しいMacbookやiPadが発表されました。新しいMac OS XのMavericksやiWork, iLifeも発表されました。

今日は余りブログを書く時間が無いので、特に気になったことを簡単にコメントします。

Mavericksが無料になった

これは結構大きい話です。今までもMacOS Xの価格は非常に安く、Microsoft Windowsよりもずっと手頃でした。例えばMountain LionはUS$19.99でした。初代MacOS X 10.0のCheetahはUS$129で、これも当時のWindowsと比較して廉価でしたが、手頃ではありませんでした。MacOS X 10.4 TigerはUS$129.95。この価格設定はMacOS X 10.5 Leopardまで続き、MacOS X 10.6 Snow Leopardで一気にUS$29になりました。MacOS X LionではいったんUS$69に上がりますが、MacOS X Mountain Lionでは再び下がってUS$19.99になります。

それがMavericksではいよいよ無料になりました。

どうしてそうしたかは簡単です。もともとAppleはハードウェアによる売り上げの方がOSによる売り上げよりずっと多いので、OSを無料にしても売り上げ上は大きな痛手はありません。それよりも、なるべく多くの人がOSをアップグレードしてくれることの方がビジネス上重要だとAppleは判断したのでしょう。

短期的な収益を犠牲にしてでも多くの人にOSをアップグレードして欲しい理由は、iPhoneで非常にはっきり出ています。

  1. ユーザは最新の機能を利用することができ、満足度が上がる。
  2. 新しいOSには開発者にとって便利な機能(API)がたくさん用意されており、より簡単により高度なアプリケーションが開発できる。
  3. 古いOSを使用する人が減れば、開発者は古いOSをサポートする必要が無く、負担が大きく減る。その上、積極的に新しいOSの機能が活用できる。

ただし、上記のメリットが大きな意味を持つためには条件があります。それはOSが進化し続けることです。OSが進化するからこそ開発者は新しいOSの機能を使いたいと考えます。逆に新しい機能が無ければ、開発者は古いOSのサポートの方を優先し、新しいOSの機能を使いません。

まとめると、短期的な収益を犠牲にしてでもOSを無料にする理由は、今後も積極的にMacOS Xに新しい機能をつけていくからです。逆にもしiPadを優先し、MacOS Xを収束させていこうと考えているのであれば、OSを無料にすることは戦略的には矛盾します。むしろMacOS Xユーザから最大限に利益を絞りだそうとするはずです(milking)。

なおGoogleの場合はビジネスモデルが違うので、GoogleがOSを無料化する理由は全く違います。GoogleがOSを無料にすることと、GoogleがOSのイノベーションにコミットするのは全く独立の話です。Googleの場合は、OSを有償にする選択肢がありません。Chrome OSは無料にしないと誰も使ってくれないのです。

iWork, iLifeが無料になった

基本的にはiPadを単にエンターテインメントのツールとしてではなく、クリエイティビティーや生産性を高めるツールとして多くの人に利用してもらいたいのが狙いだと思います。

ただこれは同時にGoogle Docsにとって、ちょっとやっかいな話です。

Google Docsの戦略は基本的にはこうです。

  1. パソコンのユーザはMicrosoft Officeを使っていることが非常に多い。
  2. Microsoft Officeを使う代わりにウェブで同じ作業をしてくれれば、そこにGoogleの広告を掲載することが可能になる。これがGoogle Docs。
  3. Google広告を掲載することにより、Google Docsは無料にできる。
  4. 非常に機能が多いMicrosoft Officeに完全に対応するのは無理なので、Google DocsはMicrosoft Officeの簡略版にとどめる。つまり機能は落ちるけど、無料だからいいやというローエンド製品。

GoogleはAndroidにしてもGoogle Docsにしても、Google Driveにしても、あるいは古くはGoogle Readerでもそうでしたが、普通だと有料なものを無料で提供することによって利用者を増やすと戦略をとります。

一般顧客に有料なものを売るビジネスはGoogleは一回も成功させたことがありません。完全なローエンド戦略です。

そして今回のiWork, iLifeが無料になったというのがなぜ衝撃かというと、Googleよりも安価なコンペティターが出現したからです。しかも品質的にも高級ブランドイメージ的にもGoogleを圧倒しています。

iWork, iLifeにはうっとうしい広告もありません。

Googleとしては、iWorkやiLifeと対抗するのは困難です。でもローエンドで、そしてモバイルで競合するので、放っておけません。

どうするのか、ちょっと読めません。

Appleはすべてが本気だ

企業の戦略を練るとき、しばしばプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントというのをやって、重点製品と非重点製品を分けます。Appleで言えば、iOSが重点製品(花形製品)でMacが非重点製品(金のなる気)ではないかという結論になります。そしてCloudは問題児となります。

しかしAppleはこんな分析を全くしていなさそうです。すべての製品に全力を注いでいるように感じられます。そのおかげでちょっと驚異的な相乗効果が生まれている。そんな様子です。